ASML

ASML日: エーエスエムエル: ASML Holding N.V.)は、オランダ南部・フェルトホーフェンに本部を置く半導体製造装置メーカーである。半導体露光装置(ステッパーフォトリソグラフィ装置)を販売する世界最大の会社で、16ヶ国に60以上の拠点を有し、世界中の主な半導体メーカーの80%以上がASMLの顧客である。日本法人はエーエスエムエル・ジャパン株式会社ユーロネクスト・アムステルダムNASDAQ上場企業(Euronext: ASML NASDAQ: ASML)。

ASMLホールディング
ASML Holding N.V.
フェルトホーフェンの本社
種類 公開会社
市場情報 Euronext: ASML
NASDAQ: ASML
本社所在地 オランダ
5504
De Run 6501, フェルトホーフェン
設立 1984年 1984
業種 半導体産業
事業内容 半導体露光装置の製造・販売
売上高 56億5103万ユーロ(2011年)[1]
純利益 14億6696万ユーロ(2011年)[1]
総資産 72億6081万ユーロ(2011年)[1]
従業員数 19,216人(2017年)
外部リンク 公式ウェブサイト

概要

IDMファウンドリなどの半導体メーカーは、ムーアの法則に従い、製造するIC(集積回路)を年々微細化する。ICの製造工程では、30から40回シリコンウェハーに露光するため、露光機の性能がICの性能を左右すると言っても過言ではない。その為、ASMLは継続的に研究開発を行っている[2]

ASMLは液浸の採用によって2003年以降、躍進した[3]。一方で、現代の液浸露光技術に関する基本特許はニコンが保有していて両社の間には最近の2019年まで様々な法的紛争が起きていた。2006年に出荷された「XT:1700i」は45nm世代の量産に向けたArF液浸スキャナーで、光学系の開口数(N.A.)が1.20と、初めてこれまでの限界とされてきた1.00を超えた[3]

近年の露光機には、光源に紫外線を発するArFエキシマレーザーが使用されており、さらに液浸露光技術が用いられる。2019年には液浸露光装置の解像度が13ナノメートルに達した[4]

また、ASMLは2020年(令和2年)現在、世界唯一の極端紫外線リソグラフィ(EUVL)装置メーカーである。同装置は7nmノード以下の露光が可能である。同装置の価格は1台当240億円に達する[5]

光学系は前からカール・ツァイスが供給し、蛍石石英レンズに使用されている。近年では反射鏡を組み合わせた光学系もある。技術をアウトソーシングする戦略は、国内外からオープンイノベーションの成功例とも評価された。

ただし、躍進を始めてからは違う局面になっている。ツァイスの半導体事業は、2000年代初頭に子会社であるSMT社に分社化されていて、近年ASMLが資本参加している[6]。前からの光源サプライヤーであるアメリカのサイマーは2012年に買収している[7]。2020年には他の光学メーカーを買収し、光学技術まで内製化している[8]

ASMLは本来オランダの政策金融で破綻を免れた後、日本勢の独走に危機感を感じていたアメリカ官民の理解を得て、技術導入と買収によって成長した企業という背景をもつ。

世界シェア・ランキング

売上高ベースで2019年のASML露光装置の世界シェアは81.2%である[9]。1996年は日本のニコンが約50%弱、キヤノンが約25%のシェアを獲得していた。ASMLは同ベースで2002年に初めて1位となり、2005年以降ニコンを完全に抜いた。

露光装置の内訳を見ると、EUVで世界シェア100%、ArF液浸で97%、Krfで65%(2018年、売上高ベース[10])と高分解能の露光装置では圧倒的なシェアを獲得している。

2008年の半導体製造装置メーカーランキング(VLSI Researchによる)では、東京エレクトロンを抜き2位に浮上し[11]、2011年の同ランキングではアプライド・マテリアルズを抜き、初めて1位となった[12]

大学との産学連携によって始めたIMECは、今はリソグラフィだけではなく、先端工程開発全般をリードしている。

沿革

  • 1984年 フィリップス社とASMインターナショナル社がそれぞれ50%ずつ出資する合弁会社ASM Lithographyとして設立[4]
  • 1988年 スピンオフし独立した企業となり、旧社名の省略形のASMLを社名とする
  • 1995年 アムステルダム証券取引所およびナスダックに上場[4]
  • 2000年 アメリカの同業SVGを買収した事によって、それまでにアジア新興勢を取引先としていたASMLが最大の半導体メーカー米インテルへのアクセスを確保、一気にシェアを拡大
  • 2001年 エーエスエムエル・ジャパン株式会社を設立。同年12月ニコンが特許侵害でASMLを提訴(2004年に和解)[13]
  • 2004年8月にArF液浸露光装置の第1世代機(試作機)「AT:1150i」出荷
  • 2004年 第2世代機(先行量産機)「XT:1250i」出荷
  • 2004年 第3世代機(量産機)「XT:1400i」出荷
  • 2006年 第4世代機(量産機)「XT:1700i」出荷
  • 2012年 次世代露光技術の一つである極端紫外線の開発の加速化のため、世界半導体大手の3社インテル、サムスン、TSMCから約50億ドルの投資を受け入れる。ニコンと長いパートナー関係のインテルが6割の30億ドルを担う事になる[14]。ニコンは同技術の普及が起こる可能性が低いと判断し、2010年代初頭に開発から撤退した
  • 同年 アメリカのサイマーを買収[7]
  • 2016年 台湾の漢民微速科技を買収[15]
  • 2017年 ニコンがASMLを再び特許侵害で提訴[16]
  • 2018年 極端紫外線初の量産機「NXE:3400B」の本格的な出荷と使用の開始
  • 2019年 ニコンとの和解成立[17]
  • 2020年 ドイツのベルライナー・グラス・グループを買収[8]

日本法人

日本法人は「エーエスエムエル・ジャパン株式会社」(ASMLジャパン)で、2001年に設立、東京(御殿山トラストタワー)に本社オフィスを持つほか、北上市鶴岡市四日市市東広島市熊本長崎にオフィスを持つ[18]

出典

  1. Five-Year Financial Summary in Annual Report 2011”. 2012年7月19日閲覧。
  2. ASMLの半導体技術、「ムーアの法則」維持できるか”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2016年10月3日). 2017年1月2日閲覧。
  3. F2スキャナーからArF「液浸」スキャナーへの大逆転
  4. ASMLの歴史”. 2012年7月20日閲覧。
  5. Sterling, Toby (2020年4月15日). “ASML first quarter net profit misses estimates, 2020 targets still achievable” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/article/asml-results-idINKCN21X0VJ 2020年10月15日閲覧。
  6. ASML、独光学機器大手系に1100億円出資 (日本語). 日本経済新聞 電子版 (2016年11月4日). 2020年9月18日閲覧。
  7. ASML、半導体向けEUVリソグラフィの開発を促進に向けCymerを買収”. マイナビニュース (2012年10月17日). 2017年1月2日閲覧。
  8. 半導体製造装置のASMLが独光学部品メーカーを買収 (日本語). FBC (2020年7月16日). 2021年2月10日閲覧。
  9. 世界半導体製造装置・試験/検査装置市場年鑑2019. グローバルネット株式会社. (2019)
  10. 能夫, 今中. 特集:EUV露光装置が織り成す半導体革命(レーザーテック、東京エレクトロン、アドバンテスト) (日本語). トウシル 楽天証券の投資情報メディア. 2020年11月25日閲覧。
  11. 2008 Top Ten IC and Related Equipment Suppliers (PDF) VLSIresearch
  12. 2011 Top Semiconductor Equipment Suppliers (PDF) VLSIresearch
  13. ニコン、ステッパー特許訴訟でASMLと和解”. ITmedia News (2004年9月29日). 2020年9月15日閲覧。
  14. Samsung、ASML株の3%を6億3000万ドルで取得へ”. EE Times Japan. 2020年12月1日閲覧。
  15. 蘭ASMLが台湾の漢民微測科技を買収へ-約3260億円で”. ブルームバーグ (2016年6月16日). 2017年1月2日閲覧。
  16. ASMLおよびCarl Zeissに対する半導体露光装置に関する特許侵害訴訟の提起について”. www.nikon.co.jp (2017年4月24日). 2020年9月15日閲覧。
  17. Nikon | ニュース | 報道資料:ニコン、ASML、Carl Zeiss間における全ての訴訟手続の和解合意について”. www.nikon.co.jp. 2020年9月9日閲覧。
  18. Contact information (英語). ASML Holding N.V.. 2020年7月25日閲覧。

関連項目

外部リンク

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