難病の患者に対する医療等に関する法律

難病の患者に対する医療等に関する法律(なんびょうのかんじゃにたいするいりょうとうにかんするほうりつ、平成26年5月30日法律第50号)は、日本において2014年平成26年)5月23日に成立した、難病対策の新しい法制度を律する法律である。法案審議の際に附帯決議が採択された[1]難病法(なんびょうほう)とも称される。

難病の患者に対する医療等に関する法律

日本の法令
通称・略称 難病法
法令番号 平成26年5月30日法律第50号
種類 医事法
効力 現行法
主な内容 難病の患者に対する医療費助成に関する制度の確立や基本方針の策定など
関連法令 障害者総合支援法
持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律
条文リンク e-Gov法令検索

2015年(平成27年)1月1日より施行された。本法による制度は、難病医療費助成制度[2]、また、特定医療費助成制度[3]と称される。

概説

趣旨として、以下のように述べられる[4]

持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、難病の患者に対する医療費助成に関して、法定化によりその費用に消費税の収入を充てることができるようにするなど、公平かつ安定的な制度を確立するほか、基本方針の策定、調査及び研究の推進、療養生活環境整備事業の実施等の措置を講ずる。

医療費助成の対象疾病の拡大として、対象疾病を従来の56疾病から、306疾病へと増やす。これにともない、受給者数は、約78万人(平成23年度)から、約150万人(平成27年度)(試算)へと増える。医療費助成の予算規模は、平成23年度(実績)1190億円から、平成27年度(予算)2221億円へと増大する。[5]その一方で従来からの特定疾患(特定疾患治療研究事業対象)であった患者(難病療養継続者)にとっては概ね助成の減額となるため、3年間の経過措置により影響を緩和しようとしている[6]

新たな医療費助成における月額自己負担上限額(単位: 円)
階層区分階層区分の基準
()内は、夫婦2人世帯の
場合における年収の目安
患者負担割合: 2割自己負担上限額(外来+入院)
自己負担上限額(外来+入院)
原則既認定者(経過措置3年間)
一般高額かつ
長期[1]
一般特定疾病
治療研究事業の
重症患者
人工呼吸器等
装着者
人工呼吸器等
装着者
生活保護-000000
低所得I市町村民税
非課税(世帯)
本人年収
〜80万円
2,5002,5001,0002,5002,5001,000
低所得II本人年収
80万円超〜
5,0005,0005,000
一般所得I市町村民税
課税以上7.1万円未満
(約160万円〜約370万円)
10,0005,0005,0005,000
一般所得II市町村民税
7.1万円以上25.1万円未満
(約370万円〜約810万円)
20,00010,00010,000
上位所得市町村民税
25.1万円以上
(約810万円〜)
30,00020,00020,000
入院時の食費全額自己負担1/2自己負担
  1. ^ 「高額かつ長期」とは、月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上ある者
    (例えば医療保険の2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が年間6回以上)。

自己負担上限額と、患者負担割合2割のどちらが優先かについては、小さい方が窓口での負担額となる[7]。難病法による医療費助成のことを特定医療費と称する。特定医療費の支給に当たっては医療保険制度、介護保険制度による給付を優先する(保険優先制度)[7]

特定医療費の支給について(自己負担の考え方)

指定医の制度が開始された。新規に難病法のための診断書を作成できるのは難病指定医のみとなった。更新のための診断書を作成できるのは難病指定医と協力難病指定医である。ともに研修を必要とし、5年ごとの更新制である。[8]指定医療機関の制度が開始された。病院、診療所、薬局などの申請に基いて、都道府県知事が、難病法による医療を受けられる医療機関の指定を行う方式となった。[9]

難病法のための診断書を、申請書とともに都道府県の窓口に提出することによって、医療受給者証が発行され、受給が開始される[2]。ただし、注意すべき点として、軽症者については原則として対象外であり[10]、軽症の定義は各疾患により異なる[11]。これに対して、高額な医療を継続することが必要な軽症者の取扱いが定められている[12]

医療費助成制度の見直しで、約15万人の軽症患者が受給対象から外れたことにより[13]、対象外になった患者の半年の平均通院回数が5.3回から3.6回に減ったことが厚生労働省研究班の調査で判明した[14]

障害福祉サービスについては、本法ではなく障害者総合支援法が適用される。対象となる難病が151疾患へと拡大された[15]

小児に対しては、本法ではなく児童福祉法が適用される[16]。その制度は、小児慢性特定疾病医療費助成制度[17][3]と称される。自己負担上限額として成人の半分とし、入院時の食費が原則として半分助成される。また、小児期に亡くなるため成人例がこれまで存在しなかった疾患が多く、704疾患が対象である。このため小児慢性特定疾病医療費助成制度で助成を受けられた者が18歳になった際に、難病医療費助成制度で補助が受けられない問題が発生することから「小慢のトランジション」と呼ばれている[18]

また、各疾患の基準を満たし、審査が通れば、障害年金が受給される。

指定難病

難病法の対象疾患として指定を受けた難病のことを指定難病と呼んで、従来の特定疾患56疾病と区別されている。

第1次実施分は平成27年1月1日より、第2次実施分は平成27年7月1日より、第3次実施分は平成29年4月1日より、第4次実施分は平成30年4月1日より各々実施された。 これにより、従来の特定疾患を含めて331疾患となった。

第1次実施分

各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[19]

第1次実施分 指定難病[20]
番号病名備考
1球脊髄性筋萎縮症特定疾患
2筋萎縮性側索硬化症特定疾患
3脊髄性筋萎縮症特定疾患
4原発性側索硬化症
5進行性核上性麻痺特定疾患
6パーキンソン病特定疾患
7大脳皮質基底核変性症特定疾患
8ハンチントン病特定疾患
9神経有棘赤血球症
10シャルコー・マリー・トゥース病
11重症筋無力症特定疾患
12先天性筋無力症候群
13多発性硬化症視神経脊髄炎特定疾患
14慢性炎症性脱髄性多発神経炎多巣性運動ニューロパチー特定疾患
15封入体筋炎
16クロウ・深瀬症候群
17多系統萎縮症特定疾患
18脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)特定疾患
19ライソゾーム病特定疾患
20副腎白質ジストロフィー特定疾患
21ミトコンドリア病特定疾患
22もやもや病特定疾患
23プリオン病特定疾患
24亜急性硬化性全脳炎特定疾患
25進行性多巣性白質脳症
26HTLV-1関連脊髄症
27特発性基底核石灰化症
28全身性アミロイドーシス特定疾患
29ウルリッヒ病
30遠位型ミオパチー
31ベスレムミオパチー
32自己貪食空胞性ミオパチー
33シュワルツ・ヤンペル症候群
34神経線維腫症特定疾患
35天疱瘡特定疾患
36表皮水疱症特定疾患
37膿疱性乾癬(汎発型)特定疾患
38スティーヴンス・ジョンソン症候群特定疾患
39中毒性表皮壊死症特定疾患
40高安動脈炎特定疾患
41巨細胞性動脈炎
42結節性多発動脈炎特定疾患
43顕微鏡的多発血管炎特定疾患
44多発血管炎性肉芽腫症特定疾患
45好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
46悪性関節リウマチ特定疾患
47バージャー病特定疾患
48原発性抗リン脂質抗体症候群
49全身性エリテマトーデス特定疾患
50皮膚筋炎多発性筋炎特定疾患
51全身性強皮症特定疾患
52混合性結合組織病特定疾患
53シェーグレン症候群
54成人スチル病
55再発性多発軟骨炎
56ベーチェット病特定疾患
57特発性拡張型心筋症特定疾患
58肥大型心筋症特定疾患
59拘束型心筋症特定疾患
60再生不良性貧血特定疾患
61自己免疫性溶血性貧血
62発作性夜間ヘモグロビン尿症
63特発性血小板減少性紫斑病特定疾患
64血栓性血小板減少性紫斑病
65原発性免疫不全症候群特定疾患
66IgA腎症
67多発性嚢胞腎
68黄色靱帯骨化症特定疾患
69後縦靱帯骨化症特定疾患
70広範脊柱管狭窄症特定疾患
71特発性大腿骨頭壊死症特定疾患
72下垂体性ADH分泌異常症特定疾患
73下垂体性TSH分泌亢進症特定疾患
74下垂体性PRL分泌亢進症特定疾患
75クッシング病特定疾患
76下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症特定疾患
77下垂体性成長ホルモン分泌亢進症特定疾患
78下垂体前葉機能低下症特定疾患
79家族性高コレステロール血症 (ホモ接合体)特定疾患
80甲状腺ホルモン不応症
81先天性副腎皮質酵素欠損症
82先天性副腎低形成症
83アジソン病
84サルコイドーシス特定疾患
85特発性間質性肺炎特定疾患
86肺動脈性肺高血圧症特定疾患
87肺静脈閉塞症肺毛細血管腫症特定疾患
88慢性血栓塞栓性肺高血圧症特定疾患
89リンパ脈管筋腫症特定疾患
90網膜色素変性症特定疾患
91バッド・キアリ症候群特定疾患
92特発性門脈圧亢進症
93原発性胆汁性胆管炎特定疾患
94原発性硬化性胆管炎
95自己免疫性肝炎
96クローン病特定疾患
97潰瘍性大腸炎特定疾患
98好酸球性消化管疾患
99慢性特発性偽性腸閉塞症
100巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症
101腸管神経節細胞僅少症
102ルビンシュタイン・テイビ症候群
103CFC症候群
104コステロ症候群
105チャージ症候群
106クリオピリン関連周期熱症候群
107全身型若年性特発性関節炎
108TNF受容体関連周期性症候群
109非典型溶血性尿毒症症候群
110ブラウ症候群

第2次実施分

各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[21]

第2次実施分 指定難病[22][23]
番号病名
111先天性ミオパチー
112マリネスコ・シェーグレン症候群
113筋ジストロフィー
114非ジストロフィー性ミオトニー症候群
115遺伝性周期性四肢麻痺
116アトピー性脊髄炎
117脊髄空洞症
118脊髄髄膜瘤
119アイザックス症候群
120遺伝性ジストニア
121神経フェリチン症
122脳表ヘモジデリン沈着症
123禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症
124皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症
125神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症
126ペリー症候群
127前頭側頭葉変性症
128ビッカースタッフ脳幹脳炎
129けいれん重積型(二相性)急性脳症
130先天性無痛無汗症
131アレキサンダー病
132先天性核上性球麻痺
133メビウス症候群
134中隔視神経形成異常症/ドモルシア症候群
135アイカルディ症候群
136片側巨脳症
137限局性皮質異形成
138神経細胞移動異常症
139先天性大脳白質形成不全症
140ドラベ症候群
141海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん
142ミオクロニー欠神てんかん
143ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん
144レノックス・ガストー症候群
145ウエスト症候群
146大田原症候群
147早期ミオクロニー脳症
148遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん
149片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群
150環状20番染色体症候群
151ラスムッセン脳炎
152PCDH19関連症候群
153難治頻回部分発作重積型急性脳炎
154徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症
155ランドウ・クレフナー症候群
156レット症候群
157スタージ・ウェーバー症候群
158結節性硬化症
159色素性乾皮症
160先天性魚鱗癬
161家族性良性慢性天疱瘡
162類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)
163特発性後天性全身性無汗症
164眼皮膚白皮症
165肥厚性皮膚骨膜症
166弾性線維性仮性黄色腫
167マルファン症候群
168エーラス・ダンロス症候群
169メンケス病
170オクシピタル・ホーン症候群
171ウィルソン病
172低ホスファターゼ症
173VATER症候群
174那須・ハコラ病
175ウィーバー症候群
176コフィン・ローリー症候群
177ジュベール症候群関連疾患
178モワット・ウィルソン症候群
179ウィリアムズ症候群
180ATR-X症候群
181クルーゾン症候群
182アペール症候群
183ファイファー症候群
184アントレー・ビクスラー症候群
185コフィン・シリス症候群
186ロスムンド・トムソン症候群
187歌舞伎症候群
188多脾症候群
189無脾症候群
190鰓耳腎症候群
191ウェルナー症候群
192コケイン症候群
193プラダー・ウィリ症候群
194ソトス症候群
195ヌーナン症候群
196ヤング・シンプソン症候群
1971p36欠失症候群
1984p欠失症候群
1995p欠失症候群
200第14番染色体父親性ダイソミー症候群
201アンジェルマン症候群
202スミス・マギニス症候群
20322q11.2欠失症候群
204エマヌエル症候群
205脆弱X症候群関連疾患
206脆弱X症候群
207総動脈幹遺残症
208修正大血管転位症
209完全大血管転位症
210単心室症
211左心低形成症候群
212三尖弁閉鎖症
213心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症
214心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症
215ファロー四徴症
216両大血管右室起始症
217エプスタイン病
218アルポート症候群
219ギャロウェイ・モワト症候群
220急速進行性糸球体腎炎
221抗糸球体基底膜腎炎
222一次性ネフローゼ症候群
223一次性膜性増殖性糸球体腎炎
224紫斑病性腎炎
225先天性腎性尿崩症
226間質性膀胱炎(ハンナ型)
227オスラー病
228閉塞性細気管支炎
229肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)
230肺胞低換気症候群
231α1-アンチトリプシン欠乏症
232カーニー複合
233ウォルフラム症候群
234ペルオキシソーム病副腎白質ジストロフィーを除く)
235副甲状腺機能低下症
236偽性副甲状腺機能低下症
237副腎皮質刺激ホルモン不応症
238ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症
239ビタミンD依存性くる病/骨軟化症
240フェニルケトン尿症
241高チロシン血症1型
242高チロシン血症2型
243高チロシン血症3型
244メープルシロップ尿症
245プロピオン酸血症
246メチルマロン酸血症
247イソ吉草酸血症
248グルコーストランスポーター1欠損症
249グルタル酸血症1型
250グルタル酸血症2型
251尿素サイクル異常症
252リジン尿性蛋白不耐症
253先天性葉酸吸収不全
254ポルフィリン症
255複合カルボキシラーゼ欠損症
256筋型糖原病
257肝型糖原病
258ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症
259レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症
260シトステロール血症
261タンジール病
262原発性高カイロミクロン血症
263脳腱黄色腫症
264無βリポタンパク血症
265脂肪萎縮症
266家族性地中海熱
267高IgD症候群
268中條・西村症候群
269化膿性無菌性関節炎壊疽性膿皮症アクネ症候群
270慢性再発性多発性骨髄炎
271強直性脊椎炎
272進行性骨化性線維異形成症
273肋骨異常を伴う先天性側弯症
274骨形成不全症
275タナトフォリック骨異形成症
276軟骨無形成症
277リンパ管腫症/ゴーハム病
278巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)
279巨大静脈奇形(頚部口腔咽頭びまん性病変)
280巨大動静脈奇形(頚部顔面又は四肢病変)
281クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
282先天性赤血球形成異常性貧血
283後天性赤芽球癆
284ダイアモンド・ブラックファン貧血
285ファンコーニ貧血
286遺伝性鉄芽球性貧血
287エプスタイン症候群
288自己免疫性後天性凝固因子欠乏症(第3次実施分の時に自己免疫性出血病XIIIから名称変更)
289クロンカイト・カナダ症候群
290非特異性多発性小腸潰瘍症
291ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)
292総排泄腔外反症
293総排泄腔遺残
294先天性横隔膜ヘルニア
295乳幼児肝巨大血管腫
296胆道閉鎖症
297アラジール症候群
298遺伝性膵炎
299嚢胞性線維症
300IgG4関連疾患
301黄斑ジストロフィー
302レーベル遺伝性視神経症
303アッシャー症候群
304若年発症型両側性感音難聴
305遅発性内リンパ水腫
306好酸球性副鼻腔炎

第3次実施分

各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[24]

第3次実施分 指定難病[25][26]
番号病名
307カナバン病
308進行性白質脳症
309進行性ミオクローヌスてんかん
310先天異常症候群
311先天性三尖弁狭窄症
312先天性僧帽弁狭窄症
313先天性肺静脈狭窄症
314左肺動脈右肺動脈起始症
315アイザックス症候群
316ネイルパテラ症候群爪膝蓋骨症候群)/LMX1B関連腎症
317カルニチン回路異常症
318三頭酵素欠損症
319セピアプテリン還元酵素(SR)欠損症
320先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症
321非ケトーシス型高グリシン血症
322β―ケトチオラーゼ欠損症
323芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症
324メチルグルタコン酸尿症
325遺伝性自己炎症疾患
326大理石骨病
327特発性血栓症病(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)
328前眼部形成異常
329無虹彩症
330先天性気管狭窄症/先天性声門下狭窄症

第4次実施分

各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[27]

第4次実施分 指定難病[28][29]
番号病名
331突発性多中心性キャッスルマン病

第5次実施分

各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[30]

第5次実施分 指定難病[31][32]
番号病名
332膠様滴状角膜ジストロフィー
333ハッチンソン・ギルフォード症候群

選定方法と課題

難病の定義として、次の4項目が挙げられている。[33]

  1. 原因不明(発病の機構が明らかでない)
  2. 治療方法が確立していない
  3. 希少な疾病
  4. その病気によって、長い間療養を必要とすることとなるもの

このうち、さらに2項目で選定されて、指定難病となる。

  1. 患者数が日本国内で一定の人数(人口の0.1%)に達しないこと
  2. 客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること

患者数の条件については、潰瘍性大腸炎などを指定の範囲に留めるため、後に0.15%未満の疾患についても便宜上対象とすることが示された[34][35]

選定は第三者機関の形をとった、厚生科学審議会 (疾病対策部会指定難病検討委員会)により行われる。[36]

しかしながらこうした選定方法について、課題も指摘されている[37][38]。一つには、希少性の条件と、病名によって、助成の基準を区切ることが不適切ではないかという指摘である[39]

2015年度中に、もう一度指定難病検討委員会が開かれることがアナウンスされている[40]

目立った批判として日本弁護士連合会より、「難病者の人権保障の確立を求める意見書」が[41]、2015年7月28日付けで、内閣総理大臣文部科学大臣及び厚生労働大臣宛てに提出された[42]。 その中で「難病者」の概念について、障害者権利条約を受けた、改正障害者基本法に即した考え方を採用することなどが、強く要望された。

難病と希少疾患

本法における難病の定義とは、指定難病の条件を除けば、先述の4つの条件、原因不明(発病の機構が明らかでない)、治療方法が確立していない、希少な疾病、その病気によって長い間療養を必要とすることとなるもの、を満たす疾患である[33]。ここで希少な疾病とは、患者数の少ない疾患を意味し、具体的に条件を課すと、欧米で希少疾患と呼んでいる概念である。希少疾患は、人口比として約0.06%(米国[43])、0.05%(EU[44])未満の疾患である。希少疾患は、欧米の行政上は主として、人口比が小さく薬剤開発が進まない疾患への便宜、いわゆるオーファン・ドラッグの認定の際に関係している。日本で欧米の希少疾患に近い概念として、医薬品医療機器等法で定められる希少疾病用医薬品が挙げられ、人口比として約0.04%未満の疾患に対して便宜が図られている。

本法における指定難病の条件として原則0.1%未満が用いられていることで、指定難病の希少性の条件は、欧米の希少疾患、また、日本の薬事法で定められる希少疾病用医薬品の条件よりも広いが、希少性以外の条件を加味すると難病の範囲は狭くなる。したがって、本法における難病と希少疾患は、法的解釈として、厳密に言うと異なる概念である。しかし、実際問題として、広義に解釈すれば、日本では伝統的に難病と呼ばれてきたものが、欧米で伝統的に希少疾患と呼ばれてきたものに近い。

出典

  1. 衆議院厚生労働委員会、参議院厚生労働委員会 (2014年6月18日). 法案審議の際に付された附帯決議 (PDF)”. 厚生労働省. 2015年5月28日閲覧。
  2. 厚生労働省. 平成27年7月1日から、難病の方へ向けた 難病医療費助成制度の 対象疾病が拡大します (PDF)”. 2015年5月26日閲覧。
  3. JPA (2015年4月5日). 医療保険制度改革法案の患者負担の増大等への影響を危惧します (PDF)”. 2015年5月27日閲覧。
  4. 難病医療費助成制度概要, p. 4.
  5. 難病医療費助成制度概要, p. 5.
  6. 難病医療費助成制度概要, p. 6.
  7. 難病医療費助成制度概要, p. 10.
  8. 難病医療費助成制度概要, p. 42.
  9. 難病医療費助成制度概要, p. 43.
  10. NHK (2014年2月10日). シリーズ 難病と向き合う 第1回 どう支える 難病医療”. 2015年5月26日閲覧。
  11. 難病医療費助成制度概要, pp. 31-32.
  12. 難病医療費助成制度概要, p. 7.
  13. 社説:難病の医療費助成 軽症者の実情にも配慮を”. 毎日新聞. 毎日新聞 (2018年7月2日). 2019年1月23日閲覧。
  14. 難病「軽症」患者の通院回数減 助成外れ抑制か”. 毎日新聞. 毎日新聞 (2019年1月23日). 2019年1月23日閲覧。
  15. 厚生労働省. 障害者総合支援法の対象疾病(難病等)”. 2015年5月29日閲覧。
  16. 厚生労働省. 児童福祉法の一部を改正する法律案の概要 (PDF)”. 2015年5月26日閲覧。
  17. 小児慢性特定疾病情報センター. 小児慢性特定疾病の医療費助成について”. 2015年5月26日閲覧。
  18. JPA (2014年9月6日). 新しい難病対策・難病2法と 患者会の課題 (PDF)”. p. 36. 2015年5月28日閲覧。
  19. 厚生労働省 健康局疾病対策課. 平成27年1月1日施行の指定難病(新規)”. 2015年9月3日閲覧。
  20. 難病医療費助成制度概要, pp. 13-14.
  21. 厚生労働省 健康局疾病対策課. 平成27年7月1日施行の指定難病(新規)”. 2015年9月3日閲覧。
  22. 健康局疾病対策課. 平成27年7月1日施行の指定難病(新規)”. 厚生労働省. 2015年5月24日閲覧。
  23. 難病医療費助成制度概要, pp. 16-19.
  24. 厚生労働省 健康局疾病対策課. 平成29年4月1日施行の指定難病(新規)”. 2018年5月30日閲覧。
  25. 健康局疾病対策課. 平成29年4月1日施行の指定難病(新規)”. 厚生労働省. 2018年5月30日閲覧。
  26. 難病医療費助成制度のご案内 難病情報センター 2018年5月30日閲覧
  27. 厚生労働省 健康局疾病対策課. 平成30年4月1日施行の指定難病(新規)”. 2018年5月30日閲覧。
  28. 健康局疾病対策課. 平成30年4月1日施行の指定難病(新規)”. 厚生労働省. 2018年5月30日閲覧。
  29. 難病医療費助成制度のご案内 難病情報センター 2018年5月30日閲覧
  30. 厚生労働省 健康局疾病対策課. 令和元年7月1日施行の指定難病(新規)”. 2019年7月21日閲覧。
  31. 健康局疾病対策課. 令和元年7月1日施行の指定難病(新規)”. 厚生労働省. 2019年7月21日閲覧。
  32. 難病医療費助成制度のご案内 難病情報センター 2019年7月21日閲覧
  33. 難病医療費助成制度概要, p. 20.
  34. "「一定の人数」として示されている「人口の0.1%程度以下」について、以下のように整理してはど うか。" 厚生労働省 (2015年7月28日). 指定難病の要件について (PDF)”. p. 5. 2015年5月29日閲覧。
  35. 伊藤綾 (2014年8月1日). 医療費助成対象に113の難病 厚労省が案示す”. 朝日新聞デジタル. 2015年5月29日閲覧。
  36. 厚生労働省. 厚生科学審議会 (疾病対策部会指定難病検討委員会)”. 2015年5月24日閲覧。
  37. わたしのフクシ。編集部 (2013年12月23日). 難病患者の医療費負担案 〜 そして国会へ(前編)”. 2015年5月24日閲覧。
  38. わたしのフクシ。編集部 (2014年2月4日). 難病患者の医療費負担案 〜 そして国会へ(後編)”. 2015年5月24日閲覧。
  39. NPO法人線維筋痛症友の会 (2014年3月26日). 病名で、私たちを区切らないでください。―「難病法案」に対する最大の懸念について―”. 2015年5月25日閲覧。
  40. 厚生労働省 (2015年4月28日). 今後のスケジュール (PDF)”. 2015年5月25日閲覧。
  41. 難病者の人権保障の確立を求める意見書”. 日本弁護士連絡会 (2015年7月16日). 2019年1月23日閲覧。
  42. 厚生労働省 (2015年7月16日). 難病者の人権保障の確立を求める意見書”. 2015年8月3日閲覧。
  43. en:Rare Diseases Act of 2002
  44. About Rare Diseases”. en:EURORDIS. 2015年5月29日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.