社会保険労務士

社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)は、労働・社会保険の問題の専門家として、労働保険社会保険諸法令に基づいて、行政機関に提出する提出書類や申請書等を依頼者に代わって作成すること、個別労働関係紛争の解決手続(調停、あっせん等)の代理を行うこと、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険、国民年金、厚生年金保険についての相談・指導を行うこと[1][2][3]職業とする為の国家資格であり、弁護士弁理士司法書士税理士行政書士土地家屋調査士海事代理士と共に職務上請求権が認められている8士業の一つである。

社会保険労務士
英名 Labor and Social Security Attorney
略称 社労士
実施国 日本
資格種類 国家試験
分野 法律
認定団体 厚生労働省
等級・称号 社会保険労務士
根拠法令 社会保険労務士法
公式サイト shakaihokenroumushi.jp
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
社会保険労務士徽章

略称として「社労士」や「労務士」とも呼ばれる。ローマ字で社会保険(Syakaihoken)労務士(Roumushi)の各頭文字を取って「SR」とも置き換えられる。社会保険労務士の徽章は、菊の花弁の中央にSRの文字が付されている。素材は、純銀の台座に純金貼りが施されており、中央SR部はプラチナ製。主務官庁は厚生労働省で、もともと旧厚生省と旧労働省の共管とされていた。

  • 社会保険労務士法については、以下では条数のみ記す。

業務

概要

社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする[4](第2条1項、第2条の2第1項)。

  1. 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という)に基づき行政機関(主に労働基準監督署公共職業安定所年金事務所等)に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類を作成すること、またこれらの申請書等の提出に関する手続を代行すること(提出代行
  2. 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)[5]について、代理すること(事務代理
    • 事務代理と提出代行との相違は、提出代行が申請書、届出書、報告書その他の書類の提出手続に関して行政機関等に事実上の説明補正等を行い得るにとどまるのに対して、事務代理は社会保険労務士が本人に代わって申請等を行うものであるから、委任の範囲内で内容の変更等を行い得るのみならず、申請等について責任をもって処理できるよう当該申請等に係る行政機関等の調査又は処分に関する主張又は陳述を行い得るものであること。事務代理は、申請等について行われるものであり、行政機関等の行う当該申請等に係る許可、決定等の処分は本人に対して行われるものであること。また、金銭の受領については事務代理には含まれないこと。社会保険労務士は行政機関等に対して行う申請等につき事務代理するものであるから、事務代理には申請等に先立ち労使協定の締結が義務づけられている場合における当該労使協定の締結は含まれないこと(昭和61年10月1日庁保発第40号)。
  3. 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律6条1項の紛争調整委員会における同法5条1項のあっせんの手続及び男女雇用機会均等法18条1項、育児介護休業法52条の5第1項 及びパートタイム労働法22条1項、障害者雇用促進法第74条の7第1項、労働者派遣法第47条の7第1項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること
  4. 地方自治法180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律1条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律26条1項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。)に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること
  5. 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が120万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る[6])に関する民間紛争解決手続ADR法2条1号に規定する民間紛争解決手続をいう。)であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること
    • ここでいう「個別労働関係紛争」は、個別労働関係紛争解決促進法第1条に規定する個別労働関係紛争のうち、「労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争」「特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第26条1項に規定する紛争」「労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争」を除いたものであること。このうち、前二者を除外している趣旨は、もともとは個々の労働者と事業主の間の事項について発生した紛争であっても、それに労働組合等が関与して、現在は労働組合等が当事者となって事業主と争われている紛争は集団的紛争の解決のために定められている労働関係調整法等に基づいて解決されるべきものであり、紛争解決手続代理業務の対象となる個別労働関係紛争から除外されることを明記したものであること。なお、上記三者を除外することについては、第2条1項1号の4に規定する個別労働関係紛争解決促進法第5条1項のあっせんの対象となる個別労働関係紛争と同様であること。紛争解決手続代理業務の対象となる個別労働関係紛争は「労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争」であることから、労働者の家族、労働者が死亡した場合の相続人等が紛争当事者となる紛争も紛争解決手続代理業務の対象とはならないので留意すること(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。
  6. 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く)を作成すること(1.の書類を除く)
  7. 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述すること
    • この陳述は、原則として当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされる(第2条の2第2項)。またこの事務を受任しようとする場合の役務の提供については、特定商取引に関する法律が定める規制の対象外となる(平成27年3月30日基発0330第3号)。
  8. 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること
    • 平成18年の改正法施行前は、社会保険労務士が業として「労働争議に介入することとなるもの」について相談・指導の事務を行うことができない旨規定していたが、改正法施行により削除された[7]。これにによって、争議行為が発生し、又は発生するおそれがある状態において、社会保険労務士は業として当事者の一方の行う争議行為の対策の検討、決定等に参与することができることとなった。しかしながら、労働争議時の団体交渉において、一方の代理人になることは紛争解決手続代理業務には含まれず、社会保険労務士の業務としては引き続き行うことができないこと(平成18年3月1日厚生労働省基発第0301002号・庁文発第0301001号)。たとえ特定社会保険労務士であっても同様である。

ただし、これらの事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用(家族療養費等)についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務(レセプトの作成等)は含まれない(第2条4項)。

1.~7.の業務は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が原則として[8]他人の求めに応じて報酬を得て行ってはならない(第27条)。さらに、3.~5.の業務(紛争解決手続代理業務)については、特定社会保険労務士でなければ行うことができない(第2条2項)。なお8.の業務は業務制限の対象外であるので、社会保険労務士でない者であっても、他人の求めに応じ報酬を得て業として行うことができる。

  • 紛争解決手続代理業務には、「紛争解決手続についての相談に応ずること」、「紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと」及び「紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること」が含まれる(第2条3項)。ここでいう「相談」は、具体的な個別労働関係紛争について依頼者があっせん等によって解決する方針を固めた以降、紛争解決手続代理業務受任前の「相談」(受任後の相談は、紛争解決手続代理業務に含まれる。)であり、労働者等があっせん等によって紛争を解決する方針を固める以前にあっせん制度等を説明することは、8.の相談・指導として行うことができること。このため、特定社会保険労務士でない社会保険労務士は、個別労働関係紛争に関するあっせん手続等について相談を行うことができないことに留意すること(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。「紛争解決手続の開始」時とは、あっせん申請書等が都道府県労働局長等に受理されたときであること。なお、特定社会保険労務士は紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間、あっせん期日等に限定されず、相手方と直接に和解の交渉を行うことができるものであるが、紛争解決手続外で申請人等を代理して和解することは認められないこと(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。
詳細
  • 企業からの依頼による、従業員に対する上記概要範囲における事務処理
  • 個人からの依頼による、上記概要範囲における事務処理
    • 年金に伴う相談、申請代行(老齢、遺族、障害、離婚時分割等)
    • 医療保険各法、介護保険法等に基づく相談、申請代行(傷病手当金高額療養費要介護認定等)
    • 労働に伴う相談、労使交渉等の紛争代理(特定社会保険労務士としての付記が前提)
  • 行政協力という名目での下記 厚生労働省管轄下の公的機関での相談業務
    • 労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所、街角の年金相談センター他
業務形態

社会保険労務士の業務は、主として企業との顧問契約にある。企業の人事・労務諸問題に関する相談、社会保険・労働保険諸手続きの事務代理・提出代行、給与計算などが主軸となる。又、ファイナンシャル・プランナー資格やDCプランナーDCアドバイザー資格、モーゲージプランナー資格を併せ持ち、年金・資産運用に関するコンサルタント業を主とする実務家や税理士中小企業診断士行政書士といった他士業資格を保有した上で多角的な活動を行う実務家もいる。最近では、労働トラブルの増加に伴い「個別労働紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、当事者を代理して具体的な解決策を提案するなど労使双方の諍いの解決に尽力する社会保険労務士(裁判外紛争解決手続制度の代理業務を行う場合は、特定社会保険労務士としての付記が必要)も増えている。

  • 社会保険労務士は、常に品位を保持し、法令実務に精通し、公正な立場で誠実に業務を行わなければならない(第1条の2)。また、所属社会保険労務士会の会則を守らなければならない(第25条の30)。
  • 社会保険労務士は、社会保険労務士会及び全国社会保険労務士会連合会(連合会)が行う研修を受け、その資質の向上を図るよう努めなければならない(第16条の3)。なお法により努力義務が課せられている研修は「社会保険労務士会」及び「連合会」が行う研修のみであるので、行政機関その他各種団体が行う研修についてまで努力義務が課せられているのではない。
  • 社会保険労務士は、国又は地方公共団体公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない(第22条)。
  • 社会保険労務士又は社会保険労務士法人は、事務を受任しようとする場合には、あらかじめ依頼者に対し報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない(施行規則第12条の10)。報酬は、規制緩和の一環として他士業者と共に自由化され、社会保険労務士の事務所ごとに異なる。依頼の誘致に際し、業務内容・報酬その他重要事項について不実を告げ、又は故意に事実を告げない行為その他不正不当行為をしてはならない。
  • 国家資格者である社会保険労務士は、社会保険労務士証票、都道府県社会保険労務士会会員証及び徽章など身分を証明するものを所持している。
  • 社会保険労務士、又は社会保険労務士法人でないものは、これらの名称及び類似する名称を用いることを禁じられている(第26条)。しかし、個人事務所には、名称に関する規定がないため、社会保険労務士事務所、社労士事務所、労務管理事務所、経営相談所、オフィス、事務所、コンサルティングなど多彩である。
  • 社会保険労務士は、不正に労働社会保険諸法令に基づく保険給付を受けること、不正に労働社会保険諸法令に基づく保険料の賦課又は徴収を免れることその他労働社会保険諸法令に違反する行為について指示をし、相談に応じその他これらに類する行為をしてはならない(第15条)。

1980年(昭和55年)8月末日の時点で行政書士であった者は、社会保険労務士の独占業務に関わる書類の作成を行うことが認められるが、提出代行及び事務代理は認められておらず(昭和55年8月29日庁保発第23号)、使者(行政契約の場合は代理もあり)として提出できるのみに留まる。また、特定社会保険労務士に認められる裁判外紛争解決手続業務に伴うあっせん代理も認められていない。税理士の行う付随業務(租税債務の確定に必要な社会保険労務士事務)についても、提出代行、事務代理並びあっせん代理は認められていない。

法律違反となる行為
  • 有資格者従業員の社会保険労務士開業登録をもって上記職務を行う外部委託(アウトソーシング)会社も見受けられるが、実態として指揮命令関係等が存在する場合は、「非社労士との提携の禁止」として、当該社労士は社会保険労務士法違反となる(第23条の2)。
  • 外部委託(アウトソーシング)等を行う法人組織、経営コンサルティング会社等の社会保険労務士無資格者や、労務管理士などと称する社会保険労務士でない者が社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法違反となる(第27条)。

諸形態

社会保険労務士は、各人の状況に応じて下記の通り区分けされ、それに応じた登録を行う。

開業社会保険労務士(開業登録)

個人で事務所を開き(社会保険労務士法人所属者を含む)、多企業からの依頼に応え、人事・労務管理の専門家として、従業員の採用から退職に至るまでの労働社会保険に関する諸問題を処理し、更には個人的な年金等の相談に業として応じることができる。主に多くの中小企業零細企業を対象として多角的に人事・労務管理業務を行う。

開業社会保険労務士は、厚生労働大臣の許可を受けた場合でなければ、2以上の事務所を設けてはならない(第18条)。業務の性質上、社会保険労務士本人が事務処理を行わなければならないためである。また業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、依頼を受けた年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所及び氏名又は名称その他厚生労働大臣が定める事項を記載しなければならず、この帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない(第19条)。正当な理由がなければ依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く)を拒んではならない(第20条)。

勤務社会保険労務士(勤務登録)

企業や団体に属し、当該企業内に限定された社会保険労務士としての仕事を行う。大企業の管理部門に所属し、企業内での人事・労務管理に専業従事する者が多い。また、勤務社会保険労務士が、特定社会保険労務士として付記を受けた場合も、所属する企業に関連した裁判外紛争解決手続業務を行うに留まる。

一般企業への勤務士業登録が正式に資格として認められているのは、士業の中でも社会保険労務士だけであり、資格としての存在意義が企業経営と密接に関係していることの裏付けであるとも言うことができる。

その他社会保険労務士(その他登録)

企業に所属しているものの営業経理専門職等、社会保険労務士業務と直接関わらない職種に従事している者や、専業主婦、何れの企業・団体にも所属しないフリーランスを対象としたものが「その他登録」である。なお、全国社会保険労務士会連合会においては、「勤務」と「その他」を合わせて「勤務等」という表記方法を用いている。

社会保険労務士法人

業務を組織的に行うため、社会保険労務士が共同し、社会保険労務士法人を設立できる(第25条の6以下)。平成15年4月の改正法施行により新設された規定である。社会保険労務士法人は、その多くの規定を旧商法会社法合名会社を見本とし、社員出資者である無限責任社員のこと)たる社会保険労務士すべてが無限責任を負い定款に特段の定めがない限り全社員が代表権・業務執行権を有する。社員は、個人で別に社会保険労務士の事務所を開設できない。また社会保険労務士でない者は社員となることはできない。2016年(平成28年)1月1日より、社員一名のいわゆる一人法人の設立が可能となった[9][10]。社会保険労務士法人は、その名称中に「社会保険労務士法人」という文字を入れなければならない。

社会保険労務士であっても、以下のものは社会保険労務士法人の社員となることはできない(第25条の8)。

  • 業務停止処分期間中の者
  • 社会保険労務士法人が解散を命ぜられた場合において、その処分の日以前30日内にその社員であった者でその処分の日から3年を経過しないもの
  • 社会保険労務士法人が業務停止処分を受けた場合において、その処分の日以前30日内にその社員であった者で当該業務停止期間中のもの

社会保険労務士法人は、社会保険労務士としての職務に加え、定款で定めるところにより、以下の業務を行うことができる(第25条の9)。

  1. 事業所の労働者に係る賃金の計算に関する事務(その事務を行うことが他の法律において制限されているものを除く)を業として行う業務
  2. 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人を派遣先とする労働者派遣事業
  3. 紛争解決手続代理業務(社員のうちに特定社会保険労務士がある社会保険労務士法人に限り、行うことができる)

社会保険労務士法人を設立するには、その社員になろうとする社会保険労務士が、共同して定款を定めなければならず、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する(第25条の10~第25条の12)。成立したときは、成立の日から2週間以内にその旨を主たる事務所の所在地の社会保険労務士会を経由して全国社会保険労務士会連合会に届出なければならない。定款には、少なくとも以下に掲げる事項を記載しなければならない。

  1. 目的
  2. 名称
  3. 事務所の所在地
  4. 社員の氏名及び住所
  5. 社員の出資に関する事項
  6. 業務の執行に関する事項

社会保険労務士法人の事務所には、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会の会員である社員を常駐させなければならない(第25条の16)。

社会保険労務士試験

例年、8月の第4日曜日に実施される。試験の管轄は、かつて国直轄であったが、第32回(平成12年度)以降は厚生労働大臣の委託を受けて全国社会保険労務士会連合会(連合会)が管轄し(第10条の2)、社会保険労務士試験センターが試験事務(合格の決定に関する事務を除く)を行っている。

受験資格(第8条)
  • 大学卒業者、又は大学において62単位以上を修得済みの者
  • 短期大学高等専門学校を卒業した者
  • 修業年限が2年以上、かつ総授業時間数が1,700時間以上の専修学校の専門課程[11]を修了した者
  • 行政書士司法書士などの定められた資格を有する者
  • 労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の常勤役員または従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
  • 厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
平成22年度試験より、厚生労働大臣が受験資格を認める学校・他の国家資格が拡大されている。詳細は外部リンクを参照。
試験科目(第9条)
試験科目の免除
実務経験等により試験科目の一部免除を受けることができる。以下は主な免除資格[12]
  1. 国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる者
  2. 厚生労働大臣が指定する団体の役員若しくは従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる者又は社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる者で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了した者
  3. 日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(日本年金機構の設立当時の役員又は職員として採用された者にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる者
  4. 全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(全国健康保険協会設立当時の役員又は職員として採用された者にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる者
試験方法
完全マークシート方式 
  • 午前:選択式、設問が8題(1設問につき5問=合計40か所の穴埋め 合計40点)、制限時間80分(1時間20分)
原則、各設問のうち3問以上正解し、かつ総得点が28点以上でなければならない。以前の記述式に代わり2000年から実施されている。各設問ともに5問中3問以上得点できない場合は足切りとなり、どんなに総合得点(択一式+選択式)が高い場合であっても足切りとなった時点で即不合格となる。それ故選択式試験の1得点に対するウェイトは非常に重く、毎年大多数の受験者を苦しめることになる。
  • 午後:五肢択一式10問が7つ=70問(1問1点合計70点)、制限時間210分(3時間30分)
原則、各科目において10問中4問以上得点できない場合は足切りとなり、どんなに総合得点(択一式+選択式)が高い場合であっても足切りとなった時点で即不合格となる。
社会保険労務士試験合格率
試験日申込者数受験者数合格者数合格率
第1回 昭和44年11月9日23,705人18,611人2,045人11.0%
第2回 昭和45年8月1日12,709人8,144人1,027人12.6%
第3回 昭和46年8月6日13,699人8,641人1,015人11.7%
第4回 昭和47年8月2日13,097人8,530人1,081人12.7%
第5回 昭和48年8月2日12,089人7,486人842人11.2%
第6回 昭和49年8月2日13,440人8,297人961人11.6%
第7回 昭和50年8月2日14,866人9,143人1,328人14.5%
第8回 昭和51年8月3日13,956人8,973人1,012人11.3%
第9回 昭和52年8月2日14,092人8,810人1,235人14.0%
第10回 昭和53年8月1日14,515人9,251人1,189人12.9%
第11回 昭和54年8月2日14,708人9,348人1,012人10.8%
第12回 昭和55年7月31日14,074人9,406人888人9.4%
第13回 昭和56年7月28日13,923人9,692人1,380人14.2%
第14回 昭和57年7月27日13,918人9,818人1,040人10.6%
第15回 昭和58年7月26日13,302人9,309人1,354人14.4%
第16回 昭和59年7月24日13,581人9,646人992人10.3%
第17回 昭和60年7月30日13,580人9,450人1,078人11.4%
第18回 昭和61年7月29日13,391人9,474人875人9.2%
第19回 昭和62年7月28日13,157人9,173人1,022人11.1%
第20回 昭和63年7月26日13,232人9,354人870人9.3%
第21回 平成元年7月25日14,081人9,918人1,237人12.5%
第22回 平成2年7月31日15,758人11,063人1,176人10.6%
第23回 平成3年7月30日18,760人13,490人1,298人9.6%
第24回 平成4年7月28日21,587人15,984人1,567人9.8%
第25回 平成5年7月27日25,672人19,088人1,867人9.8%
第26回 平成6年7月26日29,817人22,693人1,532人6.8%
第27回 平成7年7月25日31,989人24,430人1,754人7.2%
第28回 平成8年7月30日34,687人26,513人1,941人7.3%
第29回 平成9年7月29日35,978人28,124人1,991人7.1%
第30回 平成10年7月28日39,415人30,816人2,327人7.6%
第31回 平成11年7月27日45,455人35,894人2,827人7.9%
第32回 平成12年8月27日50,689人40,703人3,483人8.6%
第33回 平成13年8月26日54,203人43,301人3,774人8.7%
第34回 平成14年8月25日58,322人46,713人4,337人9.3%
第35回 平成15年8月24日64,122人51,689人4,770人9.2%
第36回 平成16年8月22日65,215人51,493人4,850人9.4%
第37回 平成17年8月28日61,251人48,120人4,286人8.9%
第38回 平成18年8月27日59,839人46,016人3,925人8.5%
第39回 平成19年8月26日58,542人45,221人4,801人10.6%
第40回 平成20年8月24日61,910人47,568人3,574人7.5%
第41回 平成21年8月23日67,745人52,983人4,019人7.6%
第42回 平成22年8月22日70,648人55,445人4,790人8.6%
第43回 平成23年8月28日67,662人53,392人3,855人7.2%
第44回 平成24年8月26日66,782人51,960人3,650人7.0%
第45回 平成25年8月25日63,640人49,292人2,666人5.4%
第46回 平成26年8月24日57,199人44,546人4,156人9.3%
第47回 平成27年8月23日52,612人40,712人1,051人2.6%
第48回 平成28年8月28日51,953人39,972人1,770人4.4%
第49回 平成29年8月27日49,902人38,685人2,613人6.8%
第50回 平成30年8月26日49,582人38,427人2,413人6.3%
第51回 令和元年8月25日49,570人38,428人2,525人6.6%
第52回 令和2年8月23日49,250人34,845人2,237人6.4%

社会保険労務士としての登録

以下のいずれかに該当する者は、連合会への登録を経て、社会保険労務士と名乗ることが認められる(第3条1項、2項)。連合会が備える社会保険労務士名簿に社会保険労務士として登録しなければ、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いる事はできない(第14条の2、第14条の3、第26条)。

  • 社会保険労務士試験に合格した者
  • 社会保険労務士試験科目すべてが免除される者
    • 試験合格者・免除者が登録を受けるには、2年以上の実務経験を要する(第3条1項)。2年以上の実務経験を有する者は、「労働社会保険諸法令関係事務従事期間証明書」に事業主等の証明を受け、各都道府県の社会保険労務士会を経由して連合会に提出することにより、社会保険労務士登録される。2年以上の実務経験がない者は、連合会実施による4ヶ月間の通信教育(途中、原則として3回のレポート課題を提出)と試験後1年前後を経て開催される連続4日間の面接講習(講義形式の座学。東京愛知大阪福岡のいずれかに出席)を受講する事により、2年間の実務経験に代えることができる
  • 弁護士となる資格(司法試験に合格して司法修習を終えるなど)を有する者

登録を受けようとする者は、所定の事項を記載した登録申請書を、社会保険労務士となる資格を有することを証する書類を添付の上、都道府県社会保険労務士会を経由して、連合会に提出しなければならない(第14条の5)。連合会は登録の申請を受けた場合においては、当該申請者が社会保険労務士となる資格を有し、かつ、登録拒否事由に該当しない者であると認めたときは、遅滞なく、社会保険労務士名簿に登録し、当該申請者が社会保険労務士となる資格を有せず、又は登録拒否事由のいずれかに該当する者であると認めたときは登録を拒否しなければならない(第14条の6)。登録を受けた者は当然に当該都道府県社会保険労務士会の会員となる(第25条の29)。

連合会が登録を拒否しようとする場合・登録を取消そうとする場合においては、資格審査会の議決に基づいてしなければならない。連合会は、登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない(第14条の6)。登録を拒否された者・取消された者は、当該処分に不服があるときは、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる。また登録の申請を行った日から3月を経過してもなんらの処分がなされない場合には、当該登録を拒否されたものとして、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる。この場合においては、審査請求のあった日に、連合会が当該登録を拒否したものとみなす(第14条の8)。

社会保険労務士試験合格実績は、たとえ失格処分を受けたとしても終身有効である。ただし、社会保険労務士はあくまでライセンスを付与されている(つまり登録している)者に限るのであり、試験に合格しただけの者は社会保険労務士ではなく、また、試験にも合格していない者が社会保険労務士を名乗り法解釈することもあるので、(特定)社会保険労務士証票・都道府県社会保険労務士会会員証の提示を求めるなど、注意の喚起が必要である(いわゆる「ニセ社会保険労務士」問題)。

欠格事由

次のいずれかに該当する者は、当然に社会保険労務士となる資格を有しない(第5条)。

  1. 未成年者
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 懲戒処分により社会保険労務士の失格処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
  4. 社会保険労務士法又は労働社会保険諸法令の規定により罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
  5. 5.以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から3年を経過しないもの
  6. 社会保険労務士の登録の取消しの処分を受けた者で、その処分を受けた日から3年を経過しないもの
  7. 公務員懲戒免職の処分を受け、その処分を受けた日から3年を経過しない者
  8. 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、税理士の業務を禁止され又は行政書士の業務を禁止された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの

成年被後見人又は被保佐人欠格条項とする規定については、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって削除され、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、必要な能力の有無を判断することとなった。

登録の拒否・取消し

次の1~4に該当する者は、社会保険労務士の登録を受けることができない(第14条の7)。また、登録したものの次の4~6に該当するに至った場合は、連合会は当該登録を取消すことができる(第14条の9)。

  1. 懲戒処分により、弁護士、公認会計士、税理士又は行政書士の業務を停止された者で、現にその処分を受けているもの
  2. 労働保険・社会保険の保険料について、登録の申請をした日の前日までに滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく3月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した保険料のすべて(当該処分を受けた者が、その納付義務を負う保険料に限る。)を引き続き滞納している者
  3. 社会保険労務士の信用又は品位を害するおそれがある者その他社会保険労務士の職責に照らし社会保険労務士としての適格性を欠く者
  4. 心身の故障により社会保険労務士の業務を行うことができない者
  5. 登録を受ける資格に関する重要事項について、告知せず又は不実の告知を行って当該登録を受けたことが判明したとき
  6. 2年以上継続して所在が不明であるとき

懲戒処分

社会保険労務士に対する懲戒処分は、「戒告」「1年以内の業務停止」「失格処分」の3種類である(第25条)。

厚生労働大臣は、社会保険労務士が、故意、真正の事実に反して申請書等の作成、事務代理もしくは紛争解決手続代理業務を行ったとき、又は不正行為の指示等を行ったときは、1年以内の業務停止又は失格処分をすることができる。社会保険労務士が、相当の注意を怠り、これらの行為をしたときは、戒告または1年以内の業務停止の処分をすることができる(第25条の2)。

厚生労働大臣は、社会保険労務士が、申請書等の添付書面もしくは付記に虚偽の記載をしたとき、社会保険労務士法及びこれに基づく命令もしくは労働社会保険諸法令の規定に違反したとき、又は社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったときには、いずれかの懲戒処分をすることができる(第25条の3)。

社会保険労務士会又は連合会は、社会保険労務士会の会員について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該会員の氏名及び事業所の所在地並びにその行為又は事実を通知しなければならない。また、何人も、社会保険労務士について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し、適切な措置を取るべきことを求めることができる(第25条の3の2)。

厚生労働大臣は、いずれかの懲戒処分をしようとするときは、公開の審理による聴聞を行わなければならない(第25条の4)。懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、その理由を付記した書面により当該社会保険労務士に通知するとともに、官報をもって公告しなければならない(第25条の5)。

歴史・沿革

戦後、いわゆる労働三法が制定され、労働者の権利が法的権利となる。さらに経済成長と相まって、急速に労使間の対立やストライキが頻発する。また、特に1960年代における日本経済の急激な成長により、税収や企業からの社会保険料が増加し、厚生年金健康保険労災保険雇用保険も発展する。しかし、補償額の高度化・制度の複雑化を伴い、煩雑な社会保険の仕組みと申請・給付に係る事務手続きにより中小企業等では対応が困難となる。これらに対応する専門家の必要性から、人事労務総務部門の業務を行う職業が発生した。

当初、これらの請負業務を合法的に行いうる有資格者は行政書士であったが、狭義総務を除く人事労務分野のより専門的な知識を持った人材が必要とされた。そこで1968年社会保険労務士法議員立法により制定された。制度発足時の経過措置として、引き続き6ヵ月以上行政書士会に入会している行政書士は試験なく特認として社会保険労務士資格を取得し、およそ9,000名が社会保険労務士となる。2007年4月の司法制度改革で、裁判外紛争解決手続制度の代理権が認められる。2009年リクルートの調査では取りたい資格の10位、ニーズが高まりそうな仕事の9位である。

  • 1968年 - 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)制定
  • 1980年 - 行政書士法改正により、行政書士と社会保険労務士との業務を完全に分離
  • 1986年 - 書類作成基礎事項表示権・他人作成書類審査権付与
  • 1998年 - 審査請求代理権付与
  • 2000年 - 社会保険労務士試験事務を連合会へ委嘱
  • 2003年 - 社会保険労務士法人発足、ADRあっせん代理権付与、(開業社会保険労務士の)労働争議不介入条項(旧社会保険労務士法第23条)の削除
  • 2007年 - 裁判外紛争解決手続制度の代理権付与、特定社会保険労務士制度発足
  • 2016年 - 裁判所における補佐人としての陳述権付与

脚注

  1. 厚生労働省「社会保険労務士制度」
  2. 東京都社会保険労務士会「社会保険労務士の仕事」
  3. 茨城県社会保険労務士会「社労士と社労士制度 よくある質問」
  4. 「業とする」とは、労働社会保険諸法令に基づいて行政機関等に提出する申請書等の作成及びその提出代行、申請書等以外の帳簿書類の作成並びに労働及び社会保険に関する事項の相談指導を反覆継続して行うこと又は反覆継続して行う意思をもって行うことをいい、他人の求めに応じているか否か、あるいは報酬を得ているか否かは問わないこと(昭和57年1月29日庁保発第2号)。
  5. 「厚生労働省令で定めるもの」について、当面定める予定はない(昭和61年10月1日庁保発第40号)。
  6. 紛争の目的の価額については、民事訴訟の例にならって算定することとし、解雇等紛争の目的の価額を算定することが極めて困難なものについては、民事訴訟費用等に関する法律第4条2項により、160万円として取り扱うこととなり、弁護士との共同受任が必要であるので留意すること(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。
  7. 平成18年の改正法施行前は、開業社会保険労務士については業として行うか否かにかかわらず、労働争議に介入することを禁止していた(改正前の第23条)ところ、改正法により第23条が削除された。
  8. 他の法律に定めのある場合、あるいは公認会計士税理士が政令で定める一定の業務に付随して行う場合はこの限りでない。
  9. 現行の会社法では社員一名の、いわゆる一人合名会社が認められているが、旧商法では認められず、必ず二名以上の社員を必要としていた。2015年12月31日までは旧商法にならって社会保険労務士法人は必ず二名以上の社員を必要としていて、一人になった場合、6か月以内に二人以上とならないときは、法人を解散するという規定になっていた。
  10. 一人法人で当該社員が死亡した場合、清算人は当該社員の相続人の同意を得て、新たに社員を加入させて社会保険労務士法人を継続することができる。
  11. 履修した内容(分野)は問わない。
  12. 全国社会保険労務士会連合会試験センター 試験科目の免除

関連項目

外部リンク

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