生物

生物(せいぶつ)または生き物(いきもの)とは、動物菌類植物藻類などの原生生物古細菌細菌などを総称した呼び方である。多くの場合ウイルスを含めないが、立場によっては含めることもある。

地球上の全ての生物の共通の祖先があり(原始生命体共通祖先)、その子孫達が増殖し複製するにつれ遺伝子に様々な変異が生じることで進化がおきたとされている。結果、バクテリアからヒトにいたる生物多様性が生まれ、お互いの存在(他者)や地球環境に依存しながら、相互に複雑な関係で結ばれる生物圏を形成するにいたっている。そのことをガイアとも呼ぶものもある。

これまで記録された数だけでも百数十万種に上ると言われており、そのうち動物は100万種以上、植物(菌類や藻類も含む)は50万種ほどである[1]

定義

ウイルスが生物なのか非生物なのか、生命を持つのか持たないか、については議論がある。(左)正二十面体様 (中)らせん構造 (右)無人探査機のような形状のファージ

何をもって生物と見なすかについては、さまざまな定義が存在し、その統一は困難であるとされる[2]。生物が持ち、無生物が持たない能力や特徴としては一応、自己増殖能力エネルギー変換能力自己と外界との明確な隔離があるとされる。これに進化する能力を加えることも多い[3]。また、生物は外界とのやりとりを絶やすことのない開放系を取りながら、恒常性(ホメオスタシス)を維持する能力を持ち、常に変化する[4]。生物はすべて細胞を基礎としており、細胞によって構成されていないウイルスなども寄生する細胞がなくては増殖できない[5]

ウイルスは、「それ自身が十分な代謝系をもたないため、宿主細胞がなくては自立増殖することができない」[6]

生物と地球環境

生命の起源はおよそ40億年前であると考えられている[7]が、それがどのように発生したのかについてはさまざまな仮説が存在する。

現在の地球の大気組成は、窒素が78%、酸素が21%、二酸化炭素が0.036%というような構成になっているが、生物が現れる前は、二酸化炭素が多くを占める構成であった。その温室効果によって地表の温度も高かった。ここに生物が出現することによって、光合成による有機物の生成や、生物由来の石灰岩の生成がなされ、炭素固定がなされた結果、今のような酸素が多く含まれた窒素主体の大気組成となった(ただし、大気組成の変化は生物だけによるものではない。地球の大気#地球大気の「進化」も参照のこと)。

また、酸素の多い大気になったことによって、オゾン層が形成され、生物にとって有害な宇宙線や紫外線の遮断がなされ、生物の陸上進出が可能になった。また、海水中の酸素が増えることによって、海水に溶け込んだ鉄が酸化鉄となって沈降し鉄鋼床を堆積させた。

また、現在においては、人類が(大気組成の変化ほどではないにしても)地球の環境に様々な大きな変化をもたらせているとも言える。

生物の分類

生物の特徴の一つは、それぞれの個体がと呼ばれるグループを形成していることである。種の違いを認識し学名をつけるのが分類という作業である。現在分類されている種だけで200万といわれるが、未知の生物種は1千万とも1億ともいわれている。分類には何段階かの範疇があり、大きいほうから順に、、という枠組みが設けられている。歴史的に最も古くは生物は植物動物からなるとした二界説(植物界、動物界)があり、その後の生物観の進展とともに、三界説、五界説、八界説などが登場した。現在、一般には生物全体をモネラ界原核生物を含む)、原生生物界、植物界、菌界動物界に分類する五界説が広く流布しているが、これはいわゆる人為分類である。分類学は系統を反映した自然分類を目指して現在も研究がされ続けている。近年では、界の上の枠組みとして、ドメインが設けられていて、細胞特性に従い生物全体を真核生物細菌(バクテリア)、古細菌(アーキア)に分類する三ドメイン説が知られるようになってきている。

生物を成り立たせる生体物質

タンパク質脂質多糖核酸は生物の主要な構成成分である[8]

生きているという状態は、無数の化学反応の総和であるという見方もできる。これら化学反応がおこる場を提供しているのがである。生物は水の特殊な物性に多くの事を依存しており、極めて重要でかつ主要な構成成分である。どの生物でも、体の約70%は水であり、その他の物質が30%ほどを占める[9]

生物の複雑さを象徴する物質の一つがタンパク質である。タンパク質は20種類のアミノ酸が数十から数百個結合したものだが、その順列組み合わせによりその種類は何千万種類にものぼる。あるタンパク質は、化学反応を触媒する酵素として働き、あるものは生物の構造を支える骨格として働くというように、様々な働きをしている。

ロバート・フックがコルクを顕微鏡観察して見出した小さな区画に小部屋(cell=細胞)と名付けたように、細胞とはある区画化された空間を指す。この区画をしているのが細胞膜であり、脂質がその主要な成分である。脂質はエネルギーとして効率が良く[10]、また貯蔵するのによい物質でもある。

生物は区画された空間ではあるが、完全に外界から遮断されているわけではない。外部からエネルギーを取り入れ内部で消費し、化学反応で物質を作り出す[11]。生物間でのエネルギーの流通に炭水化物は重要であり、主に植物光合成によって生産している。

ドーキンスは「利己的な遺伝子」で、たまたま自己複製する分子が存在し、それを継続的に支える環境が生まれた結果、生物が誕生した、とした。核酸遺伝子の実体だが、核酸が相補鎖を形成するという性質が生物の大事な本質である

地球外生命

地球以外に生命が発見された事例は記録されていない。一方、地球と同様の生物や、あるいは異なった性質の生物が地球以外に存在する可能性も否定されていない。太陽系においても、火星には生命が存在する可能性が指摘されている。少なくとも過去においては生命に適した環境が存在していた可能性が高いと考えられている。現在でも液体の水と熱源がまだ残っていれば、一部の古細菌(メタン菌)の生存に十分な条件が整っているとされ、水や熱源の探査は火星の探査計画でしばしば行われている。太陽系外惑星の観測は、主に星震などの観測が行われているが、スペクトル観測も少しずつ行われるようになってきている。2007年に発見されたグリーゼ581cに生物が生存可能な環境の存在が期待されたことがある。2008年現在、木星型惑星だけでなく地球型惑星の観測成果も少しずつあがってきている。

有機物以外を構成要素とする生物も想定される。このような仮想理論は「代わりの生化学」と呼ばれている。比較的頻繁に言及されるのが、炭素に代わってケイ素を中心とする代謝系を持つ生物(ケイ素生物)である。SFの世界では、ガス電磁波から成る生物などが登場する。他に純粋知性精神あるいは物質によらない意識が登場するが、現在の科学では、物質的な実体に依拠しない意識は確認されていない。

ギャラリー

脚注

注釈

    出典

    1. 木村資生著 『生物進化を考える』 岩波書店 《岩波新書(新赤版)19 》 1988年 2ページ
    2. 「生命の起源はどこまでわかったか 深海と宇宙から迫る」p148-149 高井研編 岩波書店 2018年3月15日第1刷発行
    3. 「生命の起源 宇宙・地球における化学進化」p11-p12 小林憲正 講談社 2013年5月20日第1刷発行
    4. 「ひとりでマスターする生化学」p23 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
    5. 「ひとりでマスターする生化学」p4 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
    6. The Pharmaceutical Society of Japanより引用 https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9
    7. 「生命の起源はどこまでわかったか 深海と宇宙から迫る」p46-47 高井研編 岩波書店 2018年3月15日第1刷発行
    8. 「ひとりでマスターする生化学」p3 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
    9. 「ひとりでマスターする生化学」p3 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
    10. 「ひとりでマスターする生化学」p206 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行
    11. 「ひとりでマスターする生化学」p23 亀井碩哉 講談社 2015年9月24日第1刷発行

    関連項目

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