無借金経営

無借金経営(むしゃっきんけいえい)とは、一般的に銀行など金融機関からの借入れや、各種社債CP(コマーシャル・ペーパー)などによる資金調達に一切頼らず、自己資金(資本金)と内部留保(剰余金)で経営を行う手法をいう。

概説

「無借金」とはいえ、買掛金等による短期負債や、退職給与引当金等による長期負債項目は貸借対照表へ計上しているのが一般的であるため、同表の負債項目がすべて「0円」となる厳密なかたちでの「無借金経営」はほとんど存在していない。また、間接・直接調達を問わず「長期借入金」(返済期限まで1年以上あるもの)がない状態で「短期借入金」(返済期限が1年未満のもの)のみある場合も含めてこう表現される場合がある。さらに長期借入金がある場合でもそれを大きく上回る「内部留保」(剰余金)を現金(定期預金・換金性の高い証券類や、長期所持目的で保有する金塊等の貴金属類を含む)で所持している場合も事実上の「無借金経営」として表現される場合もみられる。

名古屋式経営

無借金経営の一形態として名古屋式経営(なごやしきけいえい)がある。中京圏でみられる会社経営の方法論で、一般的に「石橋を叩いて渡る」(更には「石橋を叩いても渡らない」)とも揶揄されるほど、ことさらに冒険を嫌う慎重な経営を指す[1]また、他地域への進出にも慎重で、地元で事業を完結させる形態が過去には多くみられた。同時に他地域からの資本参加など、ことのほか「他所者」を嫌う風潮も以前にはみられ、東京圏京阪神などでは広範囲に事業を展開する企業でも中京圏では進出が遅れるなど、地元企業同士の仲間意識が強いのも特徴としてみられる

特に、借金を嫌って出来る限り自己資金で事業をおこない、利益を内部留保として蓄えて次の事業資金とするなど、万一事業経営に失敗しても会社倒産や、借金の連帯保証などの経営責任が生じない経営形態が特徴として挙げられ、オーナー経営者による同族経営が多いとの特色もみられる。このため、事業の急激な拡大や、「濡れ手で粟」のような地に足のつかない収益事業には特に慎重で、身の丈(利益剰余金など自己資金)に合せた事業展開をおこない、会社の存続(事業の継続)と確実な利益(収益性)を第一に考えた経営方法がこの地方では特に尊ばれている。

「名古屋式経営」のよい面である堅実性を実践している企業としては世界的に有名な「トヨタ自動車」が挙げられる(但し連結会計で見ると日本一の負債を抱える企業であった時もあった)[1]

なお、昭和末期から平成初期にかけて、日本中が好況で沸いた「バブル景気」の際、この地方の企業は「浮利」を追うような経営があまりおこなわれなかった。その後の「平成不況」で大きなダメージを負った企業が少なかったことから、「名古屋式経営」の健在ぶりを世間にアピールしている[1]。一方で、この地方が特別に無借金企業が多いというわけではなく、東京商工リサーチによる2019年の調査によると、中部地方の無借金企業の比率は地区別で最低であり、県別にみても愛知県(31位)、岐阜県(35位)、三重県(42位)ともに全国平均を下回っている[2]

一方で、主に他地域の経済学者から、MM定理(自己資金で事業をおこなうよりも、借入をしたほうが金利分が経費処理できるので、税制面で有利であること)を出すまでもなく、借金をして事業拡大することを、週刊誌等で度々提案されるが、経営状態の良い会社は、銀行の「貸したい側の理屈」として、初めから相手にしていないのが実情である。

脚注

  1. 野口真人 (2016年5月25日). 「もらったお金」は借金より高くつく?WACC(加重平均資本コスト)について学ぶ”. ダイヤモンド社. p. 2. 2020年6月11日閲覧。
  2. 全国の「無借金企業」8万4,000社調査”. 株式会社東京商工リサーチ (2019年9月11日). 2020年6月11日閲覧。

関連事項

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