情報本部

情報本部(じょうほうほんぶ、英語: Defense Intelligence Headquarters、略称:DIH)は、防衛省特別の機関の一つである。

日本行政機関
情報本部
じょうほうほんぶ
Defense Intelligence Headquarters
組織
上部機関 防衛省
概要
所在地 162-8801
東京都新宿区市谷本村町5番1号(防衛省内)
定員 2,502人
2018年度予算定員
年間予算 528億円
(2010年度)
設置 1997年平成9年)1月20日
前身 統合幕僚会議事務局第2幕僚室
陸上幕僚監部調査部調査第2課別室
ウェブサイト
情報本部

概要

戦後設立された防衛庁においては、外国の軍事情報を防衛局調査第1・2課、陸上・海上・航空の各幕僚監部[1]調査部及び各自衛隊の専門部隊等で収集・分析を行っていたため、庁全体としての情報の収集・分析が非効率的であるという構造的欠陥を抱えていた。

この問題を解決すべく、統合幕僚会議第17代議長の石井政雄を長としたプロジェクトが発足し、アメリカ国防情報局(DIA)を参考に1995年(平成7年)に策定された防衛計画大綱に基づいて、1997年(平成9年)1月20日に設置された(創設時は約1,700名)。なお、防衛庁内のすべての情報組織が統合されたわけではなく、既存の組織はそれぞれ一部改編・縮小されたものの、引き続き存続した。

平成24年度(2012年度)現在約2,400名の要員を抱え、海外の軍事情報を始めとする各種情報を扱う日本最大の情報機関である。

下表は平成17年度(2005年度)から平成26年度(2014年度)までの情報本部職員数の推移である(出典:防衛省HP概算要求の概要)が、陸海空自衛隊自衛官の定数が削減される一方で情報本部要員はほぼ毎年増員されていることから、情報分野の強化に努めていることが窺える。平成23年度予算は約528億円。

情報本部職員数の推移
年度自衛官事務官等合計年度自衛官事務官等合計年度自衛官事務官等合計
平成17年(2005年)度1,8464202,266平成22年(2010年)度1,9075232,430平成27年(2015年)度
平成18年(2006年)度1,8864362,322平成23年(2011年)度1,9075352,442平成28年(2016年)度
平成19年(2007年)度1,9034642,367平成24年(2012年)度1,9075442,451平成29年(2017年)度
平成20年(2008年)度1,9064862,392平成25年(2013年)度1,907平成30年(2018年)度1,9105922,502
平成21年(2009年)度1,9095052,414平成26年(2014年)度1,919平成31年(2019年)度

任務

  1. 独自に収集する情報(電波情報及び画像情報等)
  2. 防衛省の情報本部以外の部署(陸上自衛隊中央情報隊等、自衛隊の情報部隊)からもたらされた情報
  3. 外務省警察庁公安調査庁を始めとする他の省庁からもたらされる情報
  4. 友好国からもたらされる情報
  5. 一般の公刊物等からの情報

沿革

以下の沿革以前にも防衛省には情報組織があり、例えば情報本部の前身組織の一つである陸上幕僚監部調査部第2課別室(調別)シギントを行う非公然組織であり、実質的に内閣情報調査室(内調)の下部機関で、歴代トップは警察官僚が占めていたとされている[2]

  • 1997年(平成9年)1月20日:統合幕僚会議の「事務局第2幕僚室」が廃止され、代わって情報本部が設置される。
  • 2001年(平成13年)3月27日技術官が廃止され、新たに緊急・動態部が設置される。
  • 2004年(平成16年)3月29日画像部画像・地理部に改称される。
  • 2006年(平成18年)3月27日:統合幕僚会議に代わり「統合幕僚監部」が新設されたの伴い、統合幕僚会議下の組織から長官直轄組織へ改編。
  1. 緊急・動態部を廃止し、統合情報部を新設。
  2. 同日、各幕僚監部の調査部は廃止され新たに陸上幕僚監部航空幕僚監部には運用支援・情報部情報課が、海上幕僚監部には指揮通信情報部情報課が新設された。

組織

通信所

情報本部長(指定職4号、本省局長級)には陸将、海将又は空将の自衛官が任命される。また、本部長は2009年(平成21年)6月3日に公布された「防衛省設置法の一部を改正する法律」に基づき新設された防衛会議の構成員となる。本部長は自衛官を退官後、内閣衛星情報センター所長(指定職6号、本省審議官級[3])に就任するケースが多い。副本部長には防衛省大臣官房審議官(旧:防衛庁長官官房(防衛)審議官、官名は防衛書記官)を本務とする者がその職を兼補する形で任命される。

さらに、その下に情報専門スタッフとして4名の情報官が置かれる。内訳は、事務官が1名と自衛官が3名であり、事務官は各国の安全保障国防政策に関する情報を統括し、自衛官は各々の担当地域の軍事情勢の統括を行う。また、情報官とは別に情報評価官と情報保全官がそれぞれ1名ずつ配置されている。情報評価官は情報本部が実施する情報の収集整理について、その効果的な実施を図る観点から行う評価に関する事務を司る。情報保全官は防衛省における情報保全の確保を図る見地から情報本部の所掌事務に関する重要事項に係るものを総括整理する役割を担う。

内部組織の詳細については公表されていないため、下記の組織図は現在までに公文書等で確認できるもののみを記述している。

  • 情報本部長(陸将、海将又は空将)
    • 副本部長(事務官)
    • 情報官×4(事務官×1、自衛官×3(将補(二)1名と1佐(一)2名))
    • 情報保全官(事務官)
    • 情報評価官(事務官)
  • 総務部(部長:1佐(一))
情報本部職員の人事及び給与、教育訓練、福利厚生などの業務や経費及び収入の会計、物品の取得、行政財産及び物品の管理業務を行う。
  • 計画部(部長:1佐(一))
情報の収集整理に関する計画、情報についての関係部局との連絡調整、組織及び定員、経費及び収入の予算及び決算、行政財産の取得、業務計画、情報の管理に関する企画や秘密の保全並びに渉外に関する業務を行う。
  • 分析部(部長:事務官)
情報の総合的な分析、情報の収集整理及び調査や研究改善、統合防衛計画及び統合警備計画の作成に必要な情報に関する業務、統合運用に必要な情報に関する業務及び自衛隊法により編成された特別の部隊の運用に係る情報に関する業務を行う。
  • 統合情報部(部長:1佐(一))
緊急に処理を要する情報及び外国軍隊の動向に関する情報の収集・整理並びに統合幕僚長、各自衛隊に対する直接的情報支援を行う。情報本部の組織でありながら、統合幕僚監部の情報部(J-2)として運用されている。緊急・動態部を主たる前身とするほか、分析部及び各幕僚監部調査部のうち自衛隊の運用に関する情報を担当する部署を統合して設置された。
  • 画像・地理部(部長:1佐(一))
画像情報及び地理情報の収集・分析(イミント)を行う。情報源は地球観測衛星内閣衛星情報センターが運用する情報収集衛星の撮影画像である。前身は1985年(昭和60年)から商用地球観測衛星の画像資料を用いて画像情報の収集・分析を行っていた陸自と空自の情報専門部隊の衛星画像担当部署であり、陸自では中央地理隊(現地理情報隊)がそれにあたり、フランスSPOTアメリカ合衆国ランドサットなどの撮影画像を購入して分析していた[4][5][6]。また、1986年(昭和61年)に開設された東海大学宇宙情報センターとも分析手法の共同研究を行っていたとされる[5]分解能1m級の高分解衛星画像も処理できる画像情報支援システム(IMSS)も2001年(平成13年)3月から運用している[7]
  • 電波部(部長:事務官)
電波情報の収集・分析(シギント)を行う。前身は、旧陸軍中央特種情報部(特情部)出身の自衛官を中心に設置された陸上幕僚監部第2部別室(通称:二別)と、その後継機関として1978年(昭和53年)に二別を改編して発足した陸上幕僚監部調査部調査第2課別室(通称:調別)である。二別から情報本部創設まで警察庁と警察庁の事実上の出先機関である内閣情報調査室に直結しており、別室長は防衛庁(当時)より先に警察庁に情報を上げて、警察庁が警察の独自情報として官邸に傍受情報を報告していた。このため情報本部が創設されてからも電波部長には代々警察官僚が出向して就任しており[8]、現在では府県警察本部長経験者が就任している[9]

東千歳、美保、喜界島では高性能無線電波傍受用の(東千歳、美保では、現在ではやや旧式化した「象のオリ」と通称される大型円形アンテナ)施設を、また、東千歳、大井、太刀洗ではいくつかのレーダードーム施設を運用している。情報本部の要員のうち、7割にあたる人数が電波部及び各通信所の要員である。前身は陸上幕僚監部調査部調査第2課別室(調別)の各通信所である。小舟渡通信所長は2佐、その他の通信所長は1佐が充てられる。

主要幹部

官職名階級氏名補職発令日前職
情報本部長陸将納富中2019年12月20日防衛大学校幹事
副本部長事務官田部井貞明2020年12月01日防衛医科大学校事務局総務部長
情報官事務官森浩久00000000
空将補船倉慶太2020年03月18日第1輸送航空隊司令
小牧基地司令
1等陸佐伊部俊宏2019年03月23日北部方面総監部情報部長
1等海佐南 厚2019年04月01日海上幕僚監部指揮通信情報部情報課長
情報保全官事務官多田拓一郎00000000
情報評価官事務官木原淳00000000
総務部長1等海佐村上健悟2020年08月01日第2潜水隊群司令
計画部長1等陸佐河口弘幸2020年08月25日陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部
情報課長
分析部長事務官鈴木朗尋00000000
統合情報部長1等海佐星野正彦2020年04月10日情報本部画像・地理部長
画像・地理部長1等空佐井上剛2020年04月10日作戦情報隊司令
電波部長事務官則包卓嗣2019年09月09日警察庁警備局外事情報部外事課
外事情報調整室長
兼 国際テロリズム対策課付
兼 外事課不正輸出対策官

歴代本部長

歴代の情報本部長
(将・指定職4号)
階級氏名在職期間出身校・期前職後職
01陸将國見昌宏1997年01月20日 - 1999年12月09日防大9期第10師団退職
内閣衛星情報センター所長
02陸将野中光男1999年12月10日 - 2001年12月02日防大12期第4師団東北方面総監
03海将太田文雄2001年12月03日 - 2005年01月11日防大14期統合幕僚学校退職
防衛大学校教授
04陸将椋木功2005年01月12日 - 2008年03月23日防大16期第3師団退職
→内閣衛星情報センター所長
05空将外薗健一朗2008年03月24日 - 2008年11月06日防大18期統合幕僚学校長航空幕僚長
06空将下平幸二2008年11月07日 - 2012年01月30日防大19期統合幕僚副長退職
→内閣衛星情報センター所長
07陸将木野村謙一2012年01月31日 - 2014年08月04日防大23期第4師団長退職
→内閣衛星情報センター所長
08空将宮川正2014年08月05日 - 2017年12月19日日本大学
82幹候[10]
西部航空方面隊司令官退職
→内閣衛星情報センター所長
09海将大塚海夫2017年12月20日 - 2019年12月19日防大27期海上自衛隊幹部学校退職
特命全権大使ジブチ共和国駐箚
10陸将納富中2019年12月20日 -防大29期防衛大学校幹事
歴代の統合幕僚会議事務局第2幕僚室長(前身を含む)
階級氏名在任期間出身校・期前職後職備考
統合幕僚会議事務局第2班長
11等空佐奥宮正武1954.8.10
1956.7.9
海兵58期防衛研修所所員航空幕僚監部
2空将補島田航一1956.7.10
1957.7.14
海兵55期・
海大38期
航空幕僚監部教育部長臨時北部航空司令部
訓練隊長
航空幕僚監部付
3陸将補野尻徳雄1957.7.15
1957.10.31
陸士41期・
砲工38期
第4班長第2幕僚室長陸上幕僚監部所属
統合幕僚会議事務局第2幕僚室長
3陸将補野尻徳雄1957.11.1
1958.5.1
陸士41期・
砲工38期
第2班長防衛研修所副所長陸上幕僚監部所属
41等陸佐
陸将補
吉江誠一1958.5.2
1960.7.31
陸士43期・
陸大50期
陸上幕僚監部幕僚幹事北部方面総監部幕僚長陸上幕僚監部所属
1958.8.1
陸将補
05陸将補田中兼五郎1960.8.1
1961.6.11
陸士44期・
陸大54期
西部方面総監部幕僚副長第5幕僚室長1961.2.28まで
第1幕僚室長兼務
1961.6.12
1961.6.30
(本務から兼務へ)兼務解除本務第5幕僚室長
6海将補山本啓志郎1961.7.1
1962.1.15
海兵60期鹿屋教育航空隊司令第3幕僚室長
7海将補久原一利1962.1.16
1963.12.15
海兵60期第2練習隊司令
→1961.12.16 海上幕僚監部
練習艦隊司令官
81等陸佐
陸将補
堀栄三1963.12.16
1966.3.14
陸士46期・
陸大56期
外務事務官 兼1等陸佐
→1963.10.28
陸上幕僚監部第2部勤務
陸上幕僚監部付
→1966.3.16 退職
1964.1.1
陸将補
-陸将吉江誠一1966.3.15陸士43期・
陸大50期
統合幕僚会議事務局長として第2幕僚室長事務取扱
9陸将補中村龍平1966.3.16
1969.3.16
陸士49期・
陸大56期
東部方面総監部幕僚副長第11師団長
10海将補谷川清澄1969.3.17
1969.11.30
海兵66期第1幕僚室長練習艦隊司令官
-1等海佐石榑信敏1969.12.1
1969.12.31
海兵68期海上幕僚監部調査部
調査第2課長
第2幕僚室長第2幕僚室長心得
11海将補1970.1.1
1971.12.15
第2幕僚室長心得練習艦隊司令官
12海将補
海将
門脇尚一1971.12.16
1974.6.30
海兵69期第4護衛隊群司令海上自衛隊第1術科学校1973.12.1
海将
13海将補清水文郎1974.7.1
1976.3.31
海兵71期呉地方総監部幕僚長海上幕僚監部付
→1976.5.13 退職
14陸将補梅野文則1976.4.1
1977.6.30
陸士58期東北方面総監部幕僚副長
→1976.3.16 陸上幕僚監部付
西部方面総監部幕僚長
15海将補辻邦雄1977.7.1
1979.7.31
海兵74期海上自衛隊幹部候補生学校副校長海上幕僚監部付
→1979.9.1
海上自衛隊少年術科学校長
16陸将補矢部廣武1979.8.1
1981.3.15
陸航士60期陸上幕僚監部調査部長陸上自衛隊北海道地区補給処長
17陸将補
陸将
五十嵐晃1981.3.16
1982.6.30
名幼47期・
新潟高校
自衛隊福岡地方連絡部長第8師団長1982.3.16
陸将
18陸将補鈴木英樹1982.7.1
1983.3.15
中央大学北部方面総監部幕僚副長第1幕僚室長
19空将補
空将
藪中隆三1983.3.16
1984.11.14
広幼48期・
東京大学
第4幕僚室長航空自衛隊幹部候補生学校1983.7.31まで
第4幕僚室長兼補
1984.7.2
空将
-海将井ノ山隆也1984.11.15
1984.12.2
海兵75期統合幕僚会議事務局長として第2幕僚室長事務取扱
20海将補松本克彦1984.12.3
1985.6.30
防大1期航空集団司令部幕僚長第5幕僚室長
21空将補鈴木至1985.7.1
1987.7.6
明治大学北部航空警戒管制団司令術科教育本部幹事
22海将補齊藤又三郎1987.7.7
1989.8.30
防大2期第4航空群司令教育航空集団司令官
23海将補佐藤雅1989.8.31
1991.6.30
海保大
12期幹候[11]
潜水艦隊司令部幕僚長潜水艦隊司令官
24陸将補米原光郎1991.7.1
1993.3.23
防大6期第7師団副師団長陸上自衛隊調査学校長
25陸将補樋山周造1993.3.24
1994.6.30
防大8期陸上自衛隊富士学校特科部長第5師団長
26空将補大串康夫1994.7.1
1995.6.29
防大10期航空総隊司令部防衛部長航空幕僚監部人事教育部長
27陸将補安村勇徳1995.6.30
1997.1.19
防大10期自衛隊東京地方連絡部長中部方面総監部幕僚長
  • 歴代統幕事務局2室長の前職・後職欄のうち、同事務局内からの異動については「統合幕僚会議事務局」を省略。
  • 学校など正式名称に「○○自衛隊」が冠されるものの前職・後職欄における表記については、当該記載を省略(階級参照)。

脚注

  1. 「統合幕僚監部」が設置されたのは21世紀に入ってから
  2. 朝日新聞 2004年 9月21日
  3. いわゆる次官級審議官(省名審議官)のこと。
  4. 防衛省における宇宙開発利用の取り組みについて (PDF)”. 防衛省 (2014年10月17日). 2016年6月7日閲覧。
  5. 【対北情報戦の内幕-14-2】米国の「シャッター・コントロール」に翻弄される衛星情報 Daily NK 2016年1月24日
  6. 【対北情報戦の内幕-14-3】米国の「シャッター・コントロール」に翻弄される衛星情報 Daily NK 2016年1月24日
  7. 防衛白書 2003(平成15)年度”. 防衛省. 2016年6月7日閲覧。
  8. 警察官僚出身の後藤田正晴が情報本部創設の条件として電波部長を警察官僚の指定席としておくことを防衛庁に飲ませた。
  9. 【対北情報戦の内幕-13-】 自衛隊が「工作船接近」を知りながら拉致事件を見逃した理由 Daily NK 2016年1月23日
  10. 1982年(昭和57年)卒(防大26期相当)
  11. 防大5期相当

参考文献

  • 江畑謙介『情報と国家-収集・分析・評価の落とし穴』講談社講談社現代新書)、2004年。ISBN 4061497391
  • 太田文雄『「情報」と国家戦略』芙蓉書房出版、2005年。ISBN 4829503580
  • 情報本部総務部『情報本部史』(平成15年度、同18年度)。行政文書
  • 阿尾博政『自衛隊秘密諜報機関―青桐の戦士と呼ばれて』講談社 ISBN 9784062154635
  • 塚本勝一『自衛隊の情報戦―陸幕第二部長の回想』草思社 ISBN 9784757215849
  • 松本重雄『自衛隊「影の部隊」情報戦秘録』アスペクト ISBN 9784757215849
  • 防衛ハンドブック2012年版(朝雲新聞社)ISBN 978-4750920337

関連項目

外部リンク

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