命数法

命数法(めいすうほう、英語: numeral)とは、を名付ける法、即ち与えられた数を表わすための、一連の方式・規則・対応である。

この項目には、JIS X 0213:2004 で規定されている文字が含まれています(詳細)。

概要

命数法とは、数値を表すときの数詞の体系[1]であり、言語により異なる。例えば、1桁の数値では「四の次」を表す数詞を、日本語では「五」、英語では"five"、ドイツ語では"fünf"、ラテン語では"quinque"という。同じく、十進数における「十の四乗」を表す数を、日本語では「一万」、英語では"ten thousand"(十千)と呼ぶ。これらの組み合わせにより任意の数値を表すことができる。言語により同じ数値命数法のうち、数字を用いて数を表す方法を記数法という。

命数には、一般に「一」や「三」など自然数を表す数詞、「」などを表す数詞、「百」や「千」など何かの冪乗を表す数詞とがある。

位取りは十進法が圧倒的に多いが、十進法に囚われる必要は無く、十二進法二十進法も散見される。十を超える数で、十進法から独立している数詞として、十二を意味する"dozen"や"打"(→zh:打)、百四十四を意味する"gross"、千七百二十八を意味する"great gross"、二十を意味する"score"や"vingt"(フランス語)や"廿"や"kal"(マヤ数詞、以下同じ)、四百を意味する"bak"、八千を意味する"pic"などがある。

漢数字

大数

中国に由来する漢数字では、以下の数詞で大数を示す。

、…

中国の算術書である後漢の徐岳『数術記遺』や北周の甄鸞『五経算術』に、大数の単位が記されているが、当時は載までであり、また𥝱は本来は秭であり、それが日本の『塵劫記』で字形が変化したものである。これらの文献によると、万より大きい数詞の示す値には3種類あり、統一されていなかった。下数、中数、上数である[2]

当初は万(104)を区切りとして十万(105)、百万(106)、千万(107)まで表していた。これとは別に、万から1桁ごとに億(105)、兆(106)、と名付けていた。これを下数(かすう)と呼ぶ。

代あたりから、上数(じょうすう)が文献に記載され始めた。数詞が表す位の2乗が次の数詞となる。万万が億(108)であるのは今日と同じであるが、次は億億が兆(1016)、兆兆が京(1032)となる。実際に使われたことはないようであり、数学書では用いられていない。

その後、千万の次を億とし、十億(109)、百億(1010)と続けていく方法が考案された。これを中数(ちゅうすう)という。ただし、初期の数学書に示されている中数は万万(108)倍ごとに新たな名称をつける方式であった。すなわち、千億(1011)、万億(1012)、十万億(1013)と続き、億の万万倍を兆(1016)、兆の万万倍を京(1024)とする。これを万万進という。後に、万倍ごと、すなわち万万を億、万億を兆(1012)とする万進に移行した。

元の朱世傑による算学啓蒙で初めて、極以上の単位(そのうち恒河沙以上は仏教に由来する名称)が加わったが、当時不可思議の上は無量大数ではなく無量数であり、明の程大位による算法統宗でも同様であった。極以上の単位は基本的に中数(万進・万万進)のみで使われ、下数や上数で使われることはなかったが、ただ日本の『塵劫記』初版で極以下を下数としており、それによれば極は1015ということになる。

日本では、1627年寛永4年)の『塵劫記』の初版において初めて大きな数が登場するが、極以下が下数、恒河沙以上を万万進の中数(恒河沙=1023、阿僧祇=1031、那由他=1039、不可思議=1047)としていた。1631年(寛永8年)の版では極以下が万進(恒河沙以上は万万進のまま)に改められ、それとともに算学啓蒙・算法統宗にあった不可思議の上の無量数も無量大数という名称として組み込まれた。そして1634年(寛永11年)の版ではすべて万進に統一された。今日でも万進だけが使用されている。

中国では、近代まで万万進と万進が混用されたままであった。それに加えて、メートル法接頭辞メガ(106)に「兆」(下数における 106)の字をあてたため、さらに混乱が生じた。今日では、「億」は中数の 108、「兆」は下数の 106 の意味となっており、兆より億の方が大きくなっている。日本でいう兆(1012)は「万億」といい、京以上については、例えば 1016 は「万万億」または「億億」のように呼んでいる。台湾や韓国には日本の命数法(万進)が導入されていたので、兆は 1012 であるが、京以上の命数はほとんど用いられていない。

ベトナムでは西洋式に3桁ずつ新しい名称が使われるが、106を「triệu」(兆)、109を「tỷ」(秭)と呼ぶ。これは下数にあたる。

下数・中数(万進・万万進)・上数のうち、下数・中数(万進・万万進)は指数関数に当たり、上数は二重指数関数に当たる。

『塵劫記』での命数は以下のようになっている[3]

位の大きなものの名称については版によって相違がある。併記した記数は万進による。

塵劫記(寛永11年版)での命数(日本の現行方式)
数詞読み10000m一(いち)十(じゅう)百(ひゃく)千(せん)補足

100

101

102

103
まん104100001一万
104
十万
105
百万
106
千万
107
おく108100002一億
108
十億
109
百億
1010
千億
1011
ちょう1012100003一兆
1012
十兆
1013
百兆
1014
千兆
1015
けい1016100004一京
1016
十京
1017
百京
1018
千京
1019
(きょう)
がい1020100005一垓
1020
十垓
1021
百垓
1022
千垓
1023
𥝱じょ1024100006𥝱
1024
𥝱
1025
𥝱
1026
𥝱
1027
(し)
じょう1028100007一穣
1028
十穣
1029
百穣
1030
千穣
1031
こう1032100008一溝
1032
十溝
1033
百溝
1034
千溝
1035
かん1036100009一澗
1036
十澗
1037
百澗
1038
千澗
1039
せい10401000010一正
1040
十正
1041
百正
1042
千正
1043
さい10441000011一載
1044
十載
1045
百載
1046
千載
1047
ごく10481000012一極
1048
十極
1049
百極
1050
千極
1051
恒河沙ごうがしゃ10521000013一恒河沙
1052
十恒河沙
1053
百恒河沙
1054
千恒河沙
1055
阿僧祇あそうぎ10561000014一阿僧祇
1056
十阿僧祇
1057
百阿僧祇
1058
千阿僧祇
1059
那由他なゆた10601000015一那由他
1060
十那由他
1061
百那由他
1062
千那由他
1063
不可思議ふかしぎ10641000016一不可思議
1064
十不可思議
1065
百不可思議
1066
千不可思議
1067
無量大数むりょうたいすう10681000017一無量大数
1068
十無量大数
1069
百無量大数
1070
千無量大数
1071

以下の表に各方式での大数の命数法を示す。

各方式での大数の命数法
名称下数中数(万進・日本の現行方式)塵劫記寛永8年版中数(万万進)上数
101101101101101
102102102102102
103103103103103
104104104104104
105108108108108
1061012101210161016
1071016101610241032
1081020102010321064
秭(𥝱)10910241024104010128
101010281028104810256
101110321032105610512
1012103610361064101024
1013104010401072102048
1014104410441080104096
(1015104810481088-
恒河沙-105210561096-
阿僧祇-1056106410104-
那由他-1060107210112-
不可思議-1064108010120-
無量数(無量大数)-1068108810128-

なお、無量大数を「無量」と「大数」に分けて説明しているものもあるが、これは『塵劫記』で無量と大数の間に傷ができて間隔があき、別の数のように見える版があったためである。無量大数で一つの数とするのが普通である。

小数

小数については、一桁(0.1倍)ごとに新たな名前を付ける下数が行われているが、これも、位の小さなものの名称については時代や地域、また書物によって相違がある。例えば朱世傑算学啓蒙』では沙以下は万万進としているほか、「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」の4つの別の名とするなどの違いがある。以下は一例である。

小数の命数法
呼称備考
(いち)100
(ぶ)10−1
(釐)(りん)10−2
(毫)(もう)10−3
(絲)(し)10−4
(こつ)10−5
(び)10−6
(せん)10−7
(しゃ)10−8
(じん)10−9
(あい)10−10
(びょう)10−11
(ばく)10−12
模糊(もこ)10−13
逡巡(しゅんじゅん)10−14
須臾(しゅゆ)10−15
瞬息(しゅんそく)10−16
弾指(だんし)10−17
刹那(せつな)10−18
六徳(りっとく)10−19
虚空(こくう)10−20「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合、「虚」10−20「空」10−21
清浄(しょうじょう)10−21「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合、「清」10−22「浄」10−23
阿頼耶(あらや)10−22出典がないので数については参考程度(関連:仏教用語の阿頼耶識)。「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合は10−24
阿摩羅(あまら)10−23出典がないので数については参考程度(関連:仏教用語の阿摩羅識)。「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合は10−25
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)10−24出典がないので数については参考程度(関連:仏教用語の涅槃寂静)。「虚空」「清浄」を「虚」「空」「清」「浄」と分けた場合は10−26

このうち、『塵劫記』では埃以上のみが紹介されている[4]

実用で用いられるのは毛あるいは糸くらいまでであり、それ以下については名前がついているだけで実際にはほとんど用いられない。なお、「六徳」は「徳」の6倍という意味ではなく、「六徳」で一つの単位である。

実際に桁を連ねるときは、「二三分四厘」のように1の位の後に「基準単位(ここでは「寸」)」をつける。現代的な表現が「2.34」のように最後に「基準単位」を付けるのとは異なる。

割と共に用いる場合の誤解

基準単位として「」を使う場合は「二割三分四厘」のようになることから、「分が 1/100、厘が 1/1000 だ」と勘違いをされることがある。しかし、これは「2.34割」の意味であって、「分は割の 1/10、厘は割の 1/100」であり、上記の「二寸三分四厘 = 2.34寸」と同様の表現である。

上記の勘違いを生ずる原因は、割を用いる場合に割そのものが 1/10 を意味するために、「分が全体の 1/100、厘が全体の 1/1000 である」と誤解するからである。分、厘、毛などの数詞は、「基準単位」(例えば、寸、割、匁など)の小数を意味することを理解しておく必要がある。

仏典の数詞

八十華厳における命数
名称n
倶胝0107
阿庾多11014
那由他21028
頻波羅31056
矜羯羅410112
阿伽羅510224
最勝610448
摩婆羅710896
阿婆羅8101792
多婆羅9103584
界分10107168
普摩111014336
禰摩121028672
阿婆鈐131057344
弥伽婆1410114688
毘攞伽1510229376
毘伽婆1610458752
僧羯邏摩1710917504
毘薩羅18101835008
毘贍婆19103670016
毘盛伽20107340032
毘素陀211014680064
毘婆訶221029360128
毘薄底231058720256
毘佉擔2410117440512
称量2510234881024
一持2610469762048
異路2710939524096
顛倒28101879048192
三末耶29103758096384
毘覩羅30107516192768
奚婆羅311015032385536
伺察321030064771072
周広331060129542144
高出3410120259084288
最妙3510240518168576
泥羅婆3610481036337152
訶理婆3710962072674304
一動38101924145348608
訶理蒲39103848290697216
訶理三40107696581394432
奚魯伽411015393162788864
達攞歩陀421030786325577728
訶魯那431061572651155456
摩魯陀4410123145302310912
懺慕陀4510246290604621824
瑿攞陀4610492581209243648
摩魯摩4710985162418487296
調伏48101970324836974592
離憍慢49103940649673949184
不動50107881299347898368
極量511015762598695796736
阿麼怛羅521031525197391593472
勃麼怛羅531063050394783186944
伽麼怛羅5410126100789566373888
那麼怛羅5510252201579132747776
奚麼怛羅5610504403158265495552
鞞麼怛羅57101008806316530991104
鉢羅麼怛羅58102017612633061982208
尸婆麼怛羅59104035225266123964416
翳羅60108070450532247928832
薜羅611016140901064495857664
諦羅621032281802128991715328
偈羅631064563604257983430656
窣歩羅6410129127208515966861312
泥羅6510258254417031933722624
計羅6610516508834063867445248
細羅67101033017668127734890496
睥羅68102066035336255469780992
謎羅69104132070672510939561984
娑攞荼70108264141345021879123968
謎魯陀711016528282690043758247936
契魯陀721033056565380087516495872
摩覩羅731066113130760175032991744
娑母羅7410132226261520350065983488
阿野娑7510264452523040700131966976
伽麼羅7610528905046081400263933952
摩伽婆77101057810092162800527867904
阿怛羅78102115620184325601055735808
醯魯耶79104231240368651202111471616
薜魯婆80108462480737302404222943232
羯羅婆811016924961474604808445886464
訶婆婆821033849922949209616891772928
毘婆羅831067699845898419233783545856
那婆羅8410135399691796838467567091712
摩攞羅8510270799383593676935134183424
娑婆羅8610541598767187353870268366848
迷攞普87101083197534374707740536733696
者麼羅88102166395068749415481073467392
馱麼羅89104332790137498830962146934784
鉢攞麼陀90108665580274997661924293869568
毘伽摩911017331160549995323848587739136
烏波跋多921034662321099990647697175478272
演説931069324642199981295394350956544
無尽9410138649284399962590788701913088
出生9510277298568799925181577403826176
無我9610554597137599850363154807652352
阿畔多97101109194275199700726309615304704
青蓮華98102218388550399401452619230609408
鉢頭摩99104436777100798802905238461218816
僧祇100108873554201597605810476922437632
1011017747108403195211620953844875264
1021035494216806390423241907689750528
阿僧祇1031070988433612780846483815379501056
阿僧祇転10410141976867225561692967630759002112
無量10510283953734451123385935261518004224
無量転10610567907468902246771870523036008448
無辺107101135814937804493543741046072016896
無辺転108102271629875608987087482092144033792
無等109104543259751217974174964184288067584
無等転110109086519502435948349928368576135168
不可数1111018173039004871896699856737152270336
不可数転1121036346078009743793399713474304540672
不可称1131072692156019487586799426948609081344
不可称転11410145384312038975173598853897218162688
不可思11510290768624077950347197707794436325376
不可思転11610581537248155900694395415588872650752
不可量117101163074496311801388790831177745301504
不可量転118102326148992623602777581662355490603008
不可説119104652297985247205555163324710981206016
不可説転120109304595970494411110326649421962412032
不可説不可説1211018609191940988822220653298843924824064
不可説不可説転1221037218383881977644441306597687849648128

八十華厳

実叉難陀訳の『華厳経(八十華厳)』(新訳華厳経、唐経、大正蔵279)の第45巻「阿僧祇品第三十」には、右表に示した命数が記述されている[5][6]

105洛叉、100洛叉(107)を倶胝(くてい)とし、倶胝以上を上数として123の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説不可説転

という巨大な数となる。

六十華厳

東晋仏駄跋陀羅訳の『華厳経(六十華厳)』(旧訳華厳経、晋経、大正蔵278)の第29巻「心王菩薩問阿僧祇品第二十五」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[7][8]

1010 を拘梨とし、拘梨以上を上数として121の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説転転は という巨大な数となる。

四十華厳

の般若三蔵訳の『華厳経(四十華厳)』(貞元経、大正蔵293)の第10巻「入不思議解脱境界普賢行願品」には、上記の命数法とは異なる命数が記述されている[9][10]

105洛叉、100洛叉(107)を倶胝とし、倶胝以上を上数として144の命数が列挙されている。

最大の命数である不可説不可説転 という巨大な数となる。

これら3つの華厳経では、八十華厳・四十華厳の洛叉は別として、他はいずれも上数で2乗すると次の単位になるため、二重指数関数に当たる。もっとも、これらは実用のものではなく、計算もできないほど大きな数を示して悟り功徳の大きさを表したものである。

西洋

インド

注釈・出典

注釈

    出典

    1. 「命数-法」『新明解国語辞典 第六版』三省堂、2005年
    2. wikisource:zh:五經算術:按黃帝為法、數有十等。 及其用也、乃有三焉。十等者、謂億、兆、京、垓、秭、壤、溝、澗、正、載也。三等者、謂上、中、下也。其下數者、十十變之。若言十萬曰億、十億曰兆、十兆曰京也。中數者、萬萬變之。若言萬萬曰億、萬萬億曰兆、萬萬兆曰京也。上數者、數窮則變。若言萬萬曰億、億億曰兆、兆兆曰京也。若以下數言之、則十億曰兆;若以中數言之、則萬萬億曰兆;若以上數言之、則億億曰兆。
    3. 新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第一:大数の名の事
    4. 新編塵劫記第3巻”. p. 4. doi:10.11501/3508170. 2018年3月2日閲覧。第二:小数の名の事
    5. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0279)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
    6. T10n0279_045 大方廣佛華嚴經 第45卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
    7. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018(T0278)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
    8. T09n0278_029 大方廣佛華嚴經 第29卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。
    9. SAT大蔵経テキストデータベース2018(T0293)”. SAT大正新脩大藏經テキストデータベース. 2019年9月19日閲覧。
    10. T10n0293_010 大方廣佛華嚴經 第10卷”. CBETA 漢文大藏經. 2019年9月19日閲覧。

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