周防灘台風

周防灘台風(すおうなだたいふう、昭和17年台風第16号)は、1942年8月九州に上陸し、九州〜近畿地方にかけて被害を出した台風である[1][2][3]。特に山口県での被害が大きく、周防灘沿岸部での高潮の被害が顕著であったことからこの名称で呼ばれる[4][5][1]

周防灘台風
昭和17年台風第16号
発生期間 1942年8月21日6時頃 - 8月29日12時頃
寿命 約8日6時間
最低気圧 935 hPa 前後(推定) 
最大風速
(気象庁解析)
35.0 m/s(長崎)
被害総額
死傷者数 死者・行方不明者1,162人
被害地域 西日本

概要

1942年8月21日6時頃に、サイパン島の東方約500 kmの海上で発生した台風16号は、発達しながら北西に進み、26日正午には 南大東島の北東およそ100kmの洋上を通り、同日18時頃から更に進路を北に変えて、九州西岸に向けて北上。27日には長崎県に上陸した[2][3]。その際の勢力は、中心気圧950 mb(当時の単位。現在のhPaに等しい。)であった[6]。その後は山口県宇部市に再上陸し、同県に大きな被害をもたらした後、29日の正午頃に日本海北部で消滅した[6][3]

台風が九州へ接近すると、九州・四国地方は26日夜半頃から暴風雨に見舞われた[3]鹿児島県阿久根 (中心から約25 km) で、27日14時52分に最低気圧946 mbを記録したことなどから、南大東島を通過した26日頃から、北に進路を変えて九州に上陸した27日頃までが最盛期で、935 mb内外の示度であったと推定されている[2]

記録

最低気圧[7][2] 最大風速[7][4][8] 最大瞬間風速[7][8] 最高潮位[4] 総雨量[4][5]
観測値 観測地点 観測値 観測地点 観測値 観測地点 観測値 観測地点 観測値 観測地点
966.5 mb 下関地方気象台 34.2 m/s 下関地方気象台 37.8 m/s 下関地方気象台 367 cm 宇部 77.5 mm 下関
946 mb 阿久根 26.2 m/s 厳原 34.9 m/s 厳原 207 cm 下関
23.3 m/s 福岡 37.0 m/s 福岡 500 cm 防府富海
27.7 m/s 佐賀 36.2 m/s 佐賀 400 cm 小月
35.0 m/s 長崎 42.0 m/s 長崎
33.8 m/s 福江 38.7 m/s 福江

被害

台風の影響で、周防灘・有明海八代海鹿児島湾などで高潮が発生したが、中でも周防灘で発生した高潮は、台風の通過が大潮の満潮時と重なったことからひときわ規模が大きくなり、沿岸部での被害も特に甚大となった[5][6][9]。反対に、有明海側などでは大潮の干潮時と高潮の発生が重なったため、それほど大被害にはならなかった[2]。また、周防灘の沿岸には干拓地が多く、工業都市が海岸低地に発達していたことや、過去の災害経験が少なく防災設備力が不備であったこと、太平洋戦争中の気象報道管制下であったため台風情報がほとんど住民に伝わらなかったことなどが、高潮被害を拡大させた原因になったと言われている[2][1]。さらに山口県では、県西部を流れる厚東川での堤防の決壊により、被害がより拡大した[5]

周防灘台風による死者・行方不明者の数は合計で1,162人にのぼり、うち被害が最も大きかった山口県内での死者・行方不明者数が794人(559人負傷)と大半を占めた[2][5]。加えて、全壊家屋33,000戸、流出家屋3,000戸、船舶の流失・沈没4,000隻となった[2]。しかし、これほどの大被害がもたらされたにも関わらず、この台風について当時大きく報道されることはなかったほか、中央気象台が精力的に行った調査報告である「秘密 気象報告第6巻」は、一般の人々の目に触れることもなかった[2]。この調査報告は、台風研究 (特に高潮について) において有力な資料であるにも関わらず、「秘密 気象報告」があることすら知られていなかったため戦後になってもあまり利用されなかった[2]

関連項目

  • 平成11年台風第18号 - 周防灘台風との類似性が指摘される台風[2]。この台風でも、周防灘沿岸部で高潮による被害が発生した[10][7]

脚注

  1. 気象報道管制の誤解 太平洋戦争中でも台風情報はラジオ放送されていた(饒村曜) - Yahoo!ニュース (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2020年4月8日閲覧。
  2. 伊勢湾台風以来の高潮被害となった17年前の八代海等の高潮とその後の対策(饒村曜) - Yahoo!ニュース (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2020年4月8日閲覧。
  3. 周防灘台風 - 公文書にみるその被害と復興 -”. 2020年4月8日閲覧。
  4. 過去の主な風水害”. 宇部市. 2020年4月8日閲覧。
  5. 周防灘台風”. 山口県. 2020年4月8日閲覧。
  6. わが国の自然災害”. 国立大学法人山口大学農学部 山本晴彦. 2020年4月8日閲覧。
  7. 光永臣秀, 平石哲也, 宇都宮好博 ほか「台風9918号による周防灘での高潮高波被害の特性」『土木学会論文集』第2003巻第726号、土木学会、2003年、 131-143頁、 NAID 1300039842652020年4月27日閲覧。
  8. 台風8712号で観測された強風の特徴“”. 2020年4月9日閲覧。
  9. 周防灘台風 (日本語). 内閣府. 2020年4月8日閲覧。
  10. 山本晴彦, 岩谷潔, 鈴木賢士 ほか「1999年台風18号による九州・山口地方の農業災害の概要と水稲塩害の実態」『日本作物学会紀事』第69巻第3号、日本作物学会、2000年、 424-430頁、 doi:10.1626/jcs.69.4242020年4月27日閲覧。

外部リンク

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