ムカデエビ綱

ムカデエビ綱(ムカデエビこう、学名Remipedia)は、海底洞窟に生息する洞穴生物の1つ、ムカデエビ(ムカデエビ類、remipede)と総称される甲殻類の分類群である[4]和名に表れるようにムカデのような細長い姿をしているが、エビではない。

ムカデエビ綱
生息年代: Lower Pennsylvanian–現世[1]
ムカデエビの1種 Speleonectes tanumekes
地質時代
石炭紀後期(ペンシルベニア紀バシキーリアン)- 現世
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
階級なし : 汎甲殻類 Pancrustacea
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: ムカデエビ綱(百足エビ綱[2]Remipedia
学名
Remipedia
Yager, 1981[3]
和名
ムカデエビ(ムカデエビ類)
英名
Remipede

生態面に謎が多く、毒腺を持ち[5]、体に胸腹の区分がないという甲殻類として特異な形態を持つ[3]。その系統分類学上の位置付けに多くの議論が繰り広げられ、特に汎甲殻類説においては昆虫などとの類縁関係が注目される分類群である[6]

約30が知られ、既知の化石種記録はおよそ3億2000万年前の石炭紀後期まで遡る[1]が、4億8000万年前のオルドビス紀に及ぶほど早期な起源にあるとされる[7]。現生種は全てムカデエビ目泳脚目、学名:Nectiopoda)に分類される[8]

ラテン語で「櫂(オール)のような脚」を意味する学名「Remipedia」は、のような形をもつ胴肢に因んで名づけられた[3]

外部形態

ムカデエビの1種 Speleonectes tanumekes。ニ叉型の第1触角と同規的な胴部が写る。アスタリスク記号は生殖孔を持つ体節を示す。

体長は15mmから45mm[9]。無色透明で、体は頭胸部(単に「頭部」とも呼ぶ)と、ムカデのように細長い胴部に分かれる[10]付属肢関節肢)として頭部には触角と発達した口器、胴部には櫂のような遊泳用の胴肢が並んでいる。

頭胸部(頭部)

化石ムカデエビ類 Tesnusocaris goldichi の化石。頭部前方の対になる丸い構造は眼と考えられる[11]
Speleonectes tanumekes の第1触角
一般化されるムカデエビの頭部と胴部前端数節の背面(1枚目)と腹面(2枚目)の構造。

頭胸部(cephalothorax)は先節と第1-5体節でできている元の頭部が直後の元の第1胴節(第6体節)と癒合したものであり、その背面は1枚の頭楯(head shield)に覆われるが、多くの甲殻類に見られる幅広い背甲(carapace)をなしていない[11]。なお、この部分はしばしばこうして「頭胸部」と呼ばれるものの、ムカデエビの体制には元から「胸部」というの区分はなく(後述参照)、英語の文献記載でもこの頭胸部全体を「cephalon」(頭部)と呼ぶのが一般的である[3][11][12][9][13]

現生種に眼はない[11][14]が、頭胸部の前端に複眼を持つと考えられる化石種はある[11]

頭胸部は前端の下に1対の額糸(frontal filaments)という短い付属肢のような構造体があり[3][9]、主幹部である「main filaments」とそれに付属した枝のような「accessory branches」という2パーツからなる。額糸の直後は2対の二叉型触角が備わる。第1触角(antennule)は感覚毛(aesthetasc)を持つ基部から2本の細い枝に分かれ、そのうち上側の枝(dorsal ramus)は長く、下側の枝(ventral ramus)はやや短く、いずれも途中は複数の節に分かれている。第2触角(antenna)はかなり短く、分節のない葉状の外肢(exopod)と湾曲した3肢節をもつ内肢(endopod)からなる[12]

触角に続けて口器があり、1枚の上唇(labrum)に覆われる1対の大顎(mandible)、および第1小顎(maxillula ないし first maxilla)・第2小顎(maxilla ないし second maxilla)・顎脚(maxilliped)という3対の把握型の付属肢からなる[3]。口器の付属肢はいずれも単枝型で、大顎に大顎髭(mandibular palp)はなく、第1小顎は先端が牙状で、毒腺の開口部がある[15][5]。第1と第2小顎は7肢節からなり、基部は嚙み合わせた数本の内葉(endite)がある。顎脚は9肢節からなり、元の第1胴節に由来とされるが、頭部由来の第2小顎に似通う形態を持ち、いずれも先端の爪には複雑な配置になる棘・剛毛・小孔などの構造が集約している[12](併せて「terminal claw complex」と呼ばれる[16])。

第1・第2小顎と顎脚は付け根から先端まで、基部をなす「proximal segments」・上腕のような「lacertus」・前腕のような「brachium」という3部として大別され、lacertus と brachium の接続部に当たるのような部分は「elbow」と呼ばれる。その構成は次の通り[12]

付属肢/肢節に当たる部位 Proximal segments Lacertus Brachium
第1小顎 3節:第1-3肢節
基本としてそれぞれの肢節に1本の内葉を持つ
1節:第4肢節 3節:第5-7肢節
第7肢節は牙をなし、毒腺の開口部がある
第2小顎 2節:第1-2肢節
基本として第1肢節に3本の内葉を持つ
1節:第3肢節 4節:第4-7肢節
第7肢節の先端は terminal claw complex を持つ
顎脚 3節:第1-3肢節 1節:第4肢節 5節:第5-9肢節
第9肢節の先端は terminal claw complex を持つ

胴部

一般化されるムカデエビの胴部後端数節と肛門節(1枚目)、および生殖孔をもつ胴肢(2枚目)の構造。

胴部(trunk)は細長く、尾端の肛門節を除いて最少16胴節、最多42胴節の体節からなる[9]。体節に胸部と腹部への分化は見られず、ほぼ同じものの繰り返し(同規的)である[14][17]。体節に応じて、背面は左右がやや張り出した背板(tergites、単に張り出した部分を指す場合は「pleurotergites」[12])と、腹面は腹板(sternites)とその後方に「sternal bars」という左右が胴肢に繋がった細い外骨格が並んでいる[12]

胴節にはそれぞれ1対の、櫂のような形をした胴肢(trunk limb)が両側に備わる[3][18]。胴肢は基部の肢節(原節、protopod)から、それぞれ3肢節と4肢節からなる外肢と内肢に枝分かれした二叉型付属肢[12]。その外縁には剛毛が密生し、遊泳に適している[14]。外葉と内葉は存在しない[3]。胴肢の中で生殖孔をもつものは、生殖肢(gonopod)扱いともされる[19]

胴部後端の部分は肛門節(anal somite、尾節 telsonとも)と呼ばれ、終端は肛門と両腹側に1対の尾叉caudal rami)がある。

甲殻類としての異質さ

2対の触角ニ叉型付属肢尾叉ノープリウス幼生期などを有することから、ムカデエビは明らかに甲殻類である[17]。ただし甲殻類では、胴部が胸部腹部など複数の合体節(tagma)に分かれて、部位ごとに異なった形態・機能を持つのが普通である。ところがムカデエビの胴部は胸部と腹部という機能的分化が見当たらず、甲殻類として非常に特異である[18]。このような同規的体節制は、むしろ多足類に似通っている[17]。胴肢が体節の両側に備わるのも、付属肢は多くが体節の下側に備わる甲殻類において例外的である[3]。また、どの現生節足動物も体節制的に中大脳性の付属肢(第1触角と鋏角)より前に備わる付属肢は存在しないため、ムカデエビが第1触角の前に額糸という付属肢らしい構造体を持つのが甲殻類どころか、節足動物全般にしても異質である[3]

他方、頭楯・背板・尾叉の発達具合(カシラエビ類に類似)、ニ叉型の第1触角(軟甲類に類似)、短い第2触角とニ叉型で櫂状の胴肢(カイアシ類に類似)、多数の体節(一部の鰓脚類に類似)など、複数の甲殻類の分類群に似通う特徴を併せ持つ所も見られる[3]

内部構造と生理学

ムカデエビの中枢神経系。pc/赤:前大脳、dc/黄:中大脳、on:嗅神経、tc/緑:後大脳、vnc/灰:腹神経索

頭胸部に備わるは他の節足動物と同様に3つの脳神経節(前大脳・中大脳・後大脳)からなるが、軟甲類六脚類に劣らないほどの特殊化が見られる[20]。前部にあるはずの前大脳は上向きに180度ほど曲がり返し、中大脳の後上方に備わるようになる[20]を欠くことで視覚情報の入力はないためか、前大脳の中心体(central body)は相対的に小さい[20]。第1触角に対応の中大脳は嗅神経(olfactory neuropils)が大きく発達して前へ突き出し、脳の大部分を占める[20][21]。胴部の神経節は1体節に1対ずつ並んでいるという、節足動物として典型的なはしご形神経系を持つが、その神経細胞の配置は六脚類に似通う派生的な形質が見られる[22]消化管は分岐(消化腺、gut diverticulae)を持ち、1体節に左右1対ずつ並んでいる[23]呼吸色素として六脚類に似通うヘモシアニンを持つ[24][25]

ムカデエビの第1小顎(maxillula/1st maxilla)と毒腺(紫)

甲殻類として珍しく、ムカデエビは毒腺をもち、それをもつことが最初に証明された甲殻類でもある[5]。1対の毒腺は開口部の直前、すなわち第1小顎の先端3節(brachium)にあたる段で毒液を貯蔵できるような嚢に変化し、その直後は細長い管で、胴部の前端数節まで伸ばした毒腺に繋ぐ[15][5]。毒液からプロテアーゼキチナーゼなどの分解酵素と多種類のペプチドが確認され[26]神経毒をも含むと考えられる[5][26]

雌雄

ムカデエビは雌雄同体であり、性生殖孔と性生殖孔は、それぞれ第7胴節と第14胴節の胴肢の原節に一対ずつ備える[14]

分布と生息環境

ムカデエビの分布。カリブ海(A)・カナリア諸島(B)・西オーストラリア(C)に生息する。

アンキアライン洞窟anchialine cave)と呼ばれる種類の海底洞窟に生息する。アンキアライン洞窟は沿岸部にあって陸水と海水の両方が流入する洞窟のことで、その内部には下に重い海水、上に軽い淡水が溜まった塩分躍層halocline)が形成される。ムカデエビ類はこの躍層より下の海水中に見つかる[18]。この環境は貧栄養で、また酸素も乏しいことが多い[18]バハマ諸島の海水のみに満たされた洞窟に生息するが例外的に1種だけ知られている[18]

ムカデエビ類はカリブ海カナリア諸島西オーストラリアの3か所で分布が確認されている[18]。このように遠く離れた複数の海域から見つかる傾向(隔離分布)は、アンキアライン洞窟に生息する他の分類群でも確認されており、その成立要因について生物地理学の議論が行われている[27]

ムカデエビが生息する3つの海域はいずれも、中生代にはテチス海と呼ばれる1つの大洋に含まれていた。そこで、ムカデエビ類はかつてテチス海に広く分布していたが、大陸移動によってその分布が分断されたとするのが1つの仮説である[18]。ただし、ムカデエビの分布域がすべてかつてのテチス海に含まれるものの、逆にテチス海に含まれていたにも関わらず、ムカデエビのいない場所(地中海沿岸とインド洋東部)もあり、この仮説ではこれらの地域ではかつて生息していたものの絶滅したと考える必要がある。このほかにもいくつかの仮説が提唱されている。

生態

ムカデエビの生息地である海底洞窟は人では到達しにくい場所であるため、その生態への調査は難しく、未だに不明点が多い[17]。胴肢は常に前後方向で波打つような動きを続けており、遊泳していないときもその動きが止まることはない[28]。その姿はオヨギゴカイスカイフィッシュを彷彿とさせ、普段は裏返しと垂直の姿勢でゆったりと遊泳するが、捕食と回避の際には瞬発的に胴部を湾曲して泳ぎ出せる[28]

食性

食性の全貌は解明されていないが、少なくとも捕食を行えることは明らかである。捕食の際に把握型の小顎と顎脚で獲物を掴み、第1小顎からを分泌し、獲物を麻痺体外消化できると推測されている[26]。洞窟内の生態系における頂点捕食者であると考えられており、飼育下での迅速な捕食行動[28]、洞窟内で Typhlatya 属のエビの一種を食べている様子も観察されている[18]。しかし、前述の捕食行動は偶発的で頻度は低いこと、海底洞窟では餌となる動物の個体数は少いこと、消化管は常に内容物に満たされることから、むしろ安定な食物源である水中のバクテリアや微粒子を取り込む濾過摂食に多くを依存していると推定される[28]。常に第2触角を拍動し、特に垂直で遊泳する際に小顎と顎肢が不規則に動いており、これらは濾過摂食に関わる行動ではないかと考えられる[28]。また、洞窟内で遺骸を食べているという洞窟潜水から得た情報もある[20]

繁殖と発育

は発見できず、繁殖行動も観察されていないため、詳細は不明[28]。バハマで採集されたノープリウス幼生の研究から、少なくとも8つのノープリウス期があること、発生過程のかなり遅くまで摂食せずに卵黄の栄養に依存すること、体節数は発生過程で徐々に増えていくことが判明しているが、その生活史の全容は解明されていない[29][30]

系統位置

節足動物
鋏角類

ウミグモカブトガニクモガタ類など

大顎類
多足類

ムカデヤスデなど

汎甲殻類

貝虫類、ヒゲエビ類、鰓尾類など

軟甲類フジツボ類カイアシ類など

カシラエビ類

鰓脚類

Labiocarida

ムカデエビ類

六脚類

2019年現在で有力視されるムカデエビ類の系統的位置[6]。青い枠以内の分類群(六脚類以外の汎甲殻類)は側系統群である甲殻類に属する。

ムカデエビ類は胴部に同規的体節制を持つのが、甲殻類として非常に特異である[3]。これは典型的なはしご形神経系を持つことを含め、多足類の様に、節足動物の体節制として祖先的な特徴と考えられる[22]。他方で特殊化した小顎顎脚を持つこと、派生的な甲類類である軟甲類に似通うをもつこと[20][31][22]など、むしろ派生的な特徴も併せ持つ所も見られる。

そのような形質を持つことから、ムカデエビ類の系統的位置付けは諸説に分かれていた。基盤的な甲殻類から分岐した原始的なグループ[11]、甲殻類における派生的なグループ[20]六脚類多足類の共通祖先から分岐したグループ[32][33]、など形態学に基づいた見解が挙げられる。

2000年代をはじめとして、六脚類(広義の昆虫類)は多足類とは遠縁で、むしろ甲殻類と単系統群汎甲殻類Pancrustacea)をなし、側系統群の甲殻類から派生していることが分子系統解析で徐々に明らかになった[6]。そこで多くの甲殻類の分類群と同様に、ムカデエビ類の系統位置も大きく書き替えられた。中でも従来の推測を覆し、ムカデエビ類は六脚類に最も近縁な甲殻類という意外な系統関係が多くの解析結果に示唆される[34][35][7][36][37][6]。他方、ムカデエビ類とカシラエビ類は姉妹群で奇エビ類[38]Xenocarida)をなし[39][40]、もしくはそれ以外の甲殻類が六脚類の姉妹群になる[41]というやや異なった解析結果もあるが、いずれも後に否定的とされる向きがある[36][37]

2019年現在に至って、ムカデエビ類と六脚類に関わる様々な系統仮説の中で両者が姉妹群になる説が最も有力視される[37][6]。この2群からなる単系統群は Labiocarida と名付けられた[37]。この系統仮説を支持する可能性があるとされる両者の共有形質は、下唇(labium)のように機能する第2小顎[36]、腹神経索における神経細胞の構造[22]ヘモシアニンの構成[24]などが挙げられる。

下位分類

現生種はすべてがムカデエビ目泳脚目 Nectiopoda)に含まれる。もう1つの目である Enantiopoda には、2種の化石種が分類されている。小顎の内葉や爪など細部の構造が主な同定形質として重要視される。

経緯

Tesnusocaris goldichiの化石(ホロタイプ)。

最初に発見されたムカデエビ類は1955年で記載される石炭紀の化石種 Tesnusocaris goldichi である。しかし当初は原記述に頭部の付属肢で甲殻類として判別できたが、それ以降の分類は不確実で、鰓脚類もしくはカシラエビ類に近いと考えられた[42]。後に現生ムカデエビの1種 Speleonectes lucayensis が1979年でバハマ諸島から発見され、この現生種は他の甲殻類に分類できないほど独自の特徴にあることから、1981年でこの現生種を含んだ甲殻類の新しいRemipedia」(ムカデエビ綱)が創設された[3]。その後は他の現生種も徐々に記載され、そして1986年での再検証により、前述の化石種はムカデエビ類の構造にあることが分かり、ムカデエビ綱に分類されるようになった[11]

Enantiopoda

化石記録は乏しく、2019年現在では Tesnusocarididae科に分類される石炭紀の2種のみが記載されている[18]。最初期に記載されたムカデエビ類を含むが、本目がムカデエビ綱に分類されるようになったのは1986年以降である[11]複眼があるとされる[11]

ムカデエビ目(泳脚目)Nectiopoda

ムカデエビ目

Micropacteridae

ゴジラ科

クモンガ科

クリプトコリネテス科

Xibalbanidae科 △

Morlockiidae科 △

スペレオネクティス科

オヨギモスラ科

Hoenemann et al. (2013) に基づいたムカデエビ目の内部系統関係[16]
△ = スペレオネクティス科に含まれる経緯があった分類群
◎ = ゴジラ科に含まれる経緯があった分類群

すべての現生種を含む。一時期ではゴジラ科[43] Godzilliidaeスペレオネクティス科 SpeleonectidaeMicropacteridae の3科に分類されていたが、この分類は系統関係を適切に反映していない可能性が指摘され[44][18]、その後も2013年の分子系統解析でこの分類の非単系統性が証明された[16]。そこで従来のゴジラ科とSpeleonectidae科から別系統の種を新設した科へ再編成し、破棄されたMorlockiidae科も再び採用され、2017年では以下の8科からなる分類体系に至った[13]。2020年現在では1329が記載される[8]

クリプトコリネテス科 Cryptocorynetidae

部位 共有形質[16]
額糸 Accessory branches は基部近くに備わり、親指状で main filaments より短い。
第1触角 上側の枝は非常に長く、胴部の長さの半分以上ほど伸び、少なくとも14節がある。
第2小顎と顎脚 細くなり、顎脚は明らかに第2小顎より長い。先端の爪は蹄鉄状。
胴部 Sternal bars の後方両側は突起を持ち、第1-13番目は凹んで14番目は凸状になる。

カリブ海バハマ諸島に生息する[13]。本科に属する アンギラス属[43] Angirasu は、怪獣映画ゴジラシリーズ」のアンギラスAnguirus)に因んで名付けられた[16]。本科の種はかつてスペレオネクティス科に分類された[16]。2020年現在では3属6種が記載される[45]

  • クリプトコリネテス科[43] Cryptocorynetidae Hoenemann, Neiber, Schram & Koenemann in Hoenemann, Neiber, Humphreys, Iliffe, Li, Schram & Koenemann, 2013
    • Cryptocorynetes Yager, 1987
      • Cryptocorynetes elmorei Hazerli, Koenemann & Iliffe, 2009[46]
      • Cryptocorynetes haptodiscus Yager, 1987
      • Cryptocorynetes longulus Wollermann, Koenemann & Iliffe, 2007[47]
    • アンギラス属[43] Angirasu Hoenemann, Neiber, Schram & Koenemann in Hoenemann, Neiber, Humphreys, Iliffe, Li, Schram & Koenemann, 2013
      • Angirasu benjamini (Yager, 1987)(旧 Speleonectes benjamini
      • Angirasu parabenjamini (Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2003)(旧 Speleonectes parabenjamini[48]
    • Kaloketos Koenemann, Iliffe & Yager, 2004
      • Kaloketos pilosus Koenemann, Iliffe & Yager, 2004[49]

ゴジラ科 Godzilliidae

部位 共有形質[16]
頭楯 長方形でなく、両縁は隆起を生じ(コビトゴジラ属)、もしくは凹む(ゴジラ属)。
第1触角 上側の枝は10-11節、下側の枝は2節で小さい。
第1小顎 第3内葉は退化的、牙は長くて小刀状。
第2小顎と顎脚 亜鋏状。Lacertus はブレード状で密生した剛毛を持つ。Brachium は細長く、密生した状の剛毛を持ち、全ての節が癒合し、数本の会合線が見られるが不可動である。先端の爪は鉤縄状。
胴部 尾叉の尾端に毛束を持つ。

2020年現在ではカリブ海に分布する2属4種が記載される[50][18]模式産地がタークス・カイコス諸島である Godzillus robustus 以外はすべてバハマ諸島のみで確認されている。タイプ属である Godzillus がムカデエビ類としては巨大であることなどから[11]、怪獣映画「ゴジラシリーズ」のゴジラGodzilla)に因んで名付けられた[10]Godzilliognomus はタイプ属名に伝説上の小人であるノームの名を組み合せたものである。2020年現在では2属4種が記載される[51]

  • ゴジラ科[43] Godzilliidae Schram, Yager & Emerson, 1986[52]
    • コビトゴジラ属[43] Godzilliognomus Yager, 1989
    • ゴジラ属[43] Godzilius Schram, Yager & Emerson, 1986
      • Godzillius fuchsi Gonzalez, Singpiel & Schlagner, 2013
      • Godzilius robustus Schram, Yager & Emerson, 1986

クモンガ科 Kumongidae

部位 共有形質[16]
第1触角 上側の枝は13節、下側の枝は10-12節。
第1小顎 第2節の内葉は頂点辺りに密集した長い毛束を持ち、第3節の内葉は5本の中位の長さの剛毛と基部の広い1本の剛毛を持ち、第4節の内縁は密集した長い毛束を持つ。
第2小顎と顎脚 Brachium は lacertus より長く、羽毛様に密生した剛毛を持つ。先端の爪は短い棘に覆われる1本の発達な棘を持つ。第2小顎の第3節は球根状で幅広く、内葉は強大。
胴部 尾叉は肛門節より長い。

2020年現在では、西オーストラリアに生息するクモンガ属の Kumonga exleyi という1種のみが記載される[53][13]。属名はゴジラ属と同じく怪獣映画「ゴジラシリーズ」のクモンガKumonga)に因んで名付けられた[16]。かつてスペレオネクティス科に分類された[16]

  • クモンガ科[43] Kumongidae Hoenemann, Neiber, Schram & Koenemann in Hoenemann, Neiber, Humphreys, Iliffe, Li, Schram & Koenemann, 2013
    • クモンガ属[43] Kumonga Hoenemann, Neiber, Schram & Koenemann in Hoenemann, Neiber, Humphreys, Iliffe, Li, Schram & Koenemann, 2013
      • Kumonga exleyi (Yager & Humphreys, 1996)(旧 Lasionectes exleyi[54]

Micropacteridae

部位 共有形質[16]
頭楯 亜長方形。
第1触角 下側の枝は非常に短い。
第1小顎 第3節の内葉は退化的。
第2小顎と顎脚 長さはほぼ同様、brachium は同じ長さの2節へ癒合。ただし両者は先端の爪の構造が異なる。第2小顎は大きな爪1本と小さな爪4本を持ち、小孔は途中にある。顎脚は蹄鉄状に並んだ9-10本の癒合した爪を持ち、小孔は先端にある。
胴部 16節からなり、背板両側の突起は不発達、sternal bars は異規的だがほぼ完全に退化消失。肛門節は胴部の後端2節(第15-16節)と癒合し、楕円形の後端をなす。

2020現在では、カリブ海タークス・カイコス諸島に生息する Micropacter 属の Micropacter yagerae という1種のみが記載される[55][18]

  • Micropacteridae Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2007[12]
    • Micropacter Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2007
      • Micropacter yagerae Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2007

Morlockiidae

部位 共有形質[16]
額糸 幅広く、accessory branches は先端に備わって main filaments より長い。
第1小顎 第3内葉における2本の頑丈な剛毛は数少ない単純な剛毛に隣接し、先端の牙は90度ほど長く湾曲する。
第2小顎と顎脚 節はやや細い。先端の爪は蹄鉄状、弧状の棘を持つ。
胴部 19-25節からなる。肛門節と尾叉の長さはほぼ一致、尾叉の剛毛は少ない。

2020年現在では、カリブ海バハマ諸島ドミニカ共和国キューバ、およびカナリア諸島ランサローテ島に生息する[13] Morlockia 属の4種のみが記載される[56]。属名はハーバート・ジョージ・ウェルズSF小説タイム・マシン」の暗黒に適応した種族モーロック(Morlock)に因んで名付けられた[57]。本科の種は一時期ではスペレオネクティス科に分類された[16]

  • Morlockiidae García-Valdecasas, 1984[57]
    • Morlockia García-Valdecasas, 1984
      • Morlockia atlantida (Koenemann, Bloechl, Martínez, Iliffe, Hoenemann & Oromí, 2009)
      • Morlockia ondinae Garcia-Valdecasas, 1984
      • Morlockia emersoni Lorentzen, Koenemann & Iliffe, 2007
      • Morlockia williamsi (Hartke, Koenemann & Yager, 2011)(旧 Speleonectes williamsi

オヨギモスラ科 Pleomothridae

部位 共有形質[16]
頭楯 台形で、後縁両側に突起を持つ。
第1触角 下側の枝は短い。
第1小顎 先端は鋏型、第3節に内葉はない。
第2小顎と顎脚 外見はほぼ一致。Brachium の節は癒合し、終端に1本の浅い会合線が見られる。Lacertus と brachium の長さはほぼ同様、いずれも鱗状の剛毛を持つ。
胴部 尾叉の長さは肛門節と同じもしくは超える。

2020年現在では、カリブ海バハマ諸島に生息するオヨギモスラ属 Pleomothra の2種のみが記載される[58][13]。属名はゴジラ属と同じく怪獣映画のモスラMothra)に、泳ぐことを意味するギリシャ語の「pleo」を付けたものである[59][60]。本科の種はかつてゴジラ科に分類された[16]

  • オヨギモスラ科[43] Pleomothridae Hoenemann, Neiber, Schram & Koenemann in Hoenemann, Neiber, Humphreys, Iliffe, Li, Schram & Koenemann, 2013
    • オヨギモスラ属[43] Pleomothra Yager, 1989[59]
      • Pleomothra apletocheles Yager, 1989[59]
      • Pleomothra fragilis Koenemann, Ziegler & Iliffe, 2008[61]

スペレオネクティス科 Speleonectidae

部位 共有形質[16]
頭楯 亜長方形から台形。
第1触角 上側の枝は12節、下側の枝は8-10節。
第1小顎 第3内葉は発達で、第1-2内葉より短い2本の棘状の剛毛を持つ。
第2小顎と顎脚 第2小顎は顎脚より小さい。Lacertus と brachium に一連の長い剛毛を持つ。Lacertus は膨大し、brachium は lacertus より長い。先端の爪は蹄鉄状に並んだ突起が密生している。小孔は爪の後側にある。
胴部 肛門節と尾叉の長さはほぼ一致、尾叉の尾端に毛束を持つ。

カリブ海バハマ諸島タークス・カイコス諸島、およびキューバに生息する[16]。学名はギリシア語の「洞窟」(spelaion)と「泳者」(nectes)の合成である[3]。いくつかの現生ムカデエビ類はかつてこの科のタイプ属 Speleonectes に分類された[16]。2020年現在では2属7種が記載される[62]

  • スペレオネクティス科 Speleonectidae Yager, 1981
    • Lasionectes Yager & Schram, 1986
      • Lasionectes entrichoma Yager & Schram, 1986
    • Speleonectes Yager, 1981
      • Speleonectes epilimnius Yager & Carpenter, 1999
      • Speleonectes gironensis Yager, 1994
      • Speleonectes kakuki Daenekas, Iliffe, Yager & Koenemann, 2009
      • Speleonectes lucayensis Yager, 1981 - 最初に記載された現生ムカデエビ類[3]
      • Speleonectes minnsi Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2003[48]
      • Speleonectes tanumekes Koenemann, Iliffe & van der Ham, 2003[48]

Xibalbanidae

部位 共有形質[16]
頭楯 亜長方形。
額糸 幅広く、accessory branches は基部近くに備わって main filaments より短い。
第1小顎 第3内葉と lacertus はいずれも嚙み合わせた2列のノコギリ状の剛毛と数少ない単純な剛毛を持つ。
第2小顎と顎脚 Lacertus はやや膨大し、数少ない単純な剛毛を持つ。Brachium は節ごと後端に数少ない単純な剛毛を持ち、最初の節の後端は幅広い。先端の爪は蹄鉄状に並んだ突起が密生し、片側にやや離れた1本の頑丈な突起がある。顎脚は明らかに第2小顎より長い。
胴部 体節は最多42節、成体では通常は30節を超える。sternal bars は同規的。尾叉は非常に長く、肛門節の長さの2.5倍を超え、剛毛は少ない。

2020年現在では、カリブ海ユカタン半島に生息する Xibalbanus 属の4種のみが記載される[63][13]。本科の種はかつてスペレオネクティス科に分類された[16]

  • Xibalbanidae Olesen, Meland, Glenner, van Hengstum & Iliffe, 2017[13]
    • Xibalbanus Olesen, Meland, Glenner, van Hengstum & Iliffe, 2017
      • Xibalbanus cokei (Yager, 2013)(旧 Speleonectes cokei
      • Xibalbanus cozumelensis Olesen, Meland, Glenner, van Hengstum & Iliffe, 2017[13]
      • Xibalbanus fuchscockburni (Neiber, Hansen, Iliffe, Gonzalez & Koenemann, 2012)(旧 Speleonectes fuchscockburni
      • Xibalbanus tulumensis (Yager, 1987)(旧 Speleonectes tulumensis

保全

オーストラリア、バハマ諸島、ユカタン半島では、ムカデエビ類の保全活動が行われている。ダイバーの呼気が洞窟水に溶け込み、溶存酸素量を増やして生態系に影響するおそれがあるため、洞窟潜水の際には閉鎖式リブリーザーを使うことが求められる[18]

出典および脚注

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関連項目

外部リンク

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