マーレラ

マーレラ (マルレラとも、学名Marrella) は、古生代カンブリア紀中期に生息したMarrellomorpha類の節足動物の1バージェス動物群に属する Marrella splendens という1のみによって知られる[1]

マーレラ
生息年代: 505 Ma[1]
マーレラの復元図
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
古生代カンブリア紀中期
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: †(和訳なし) Marrellomorpha
: †マーレラ目 Marrellida
: †マーレラ科 Marrellidae
: マーレラ属 Marrella
学名
Marrella
Walcott, 1912
タイプ種
Marrella splendens
Walcott, 1912

発見

マーレラの化石

マーレラの化石は、当時スミソニアン協会の長官だったチャールズ・ウォルコット (Charles Doolittle Walcott) によって、1909年にカナダブリティッシュコロンビア州で発見されたラーゲルシュテッテン(特に保存の良い化石産地を指す)バージェス頁岩から発見される[1]。同じ産地から発見される古生物の中でマーレラの化石は最も多く、1万を超えるほどの標本数が収集されている[2]。様々な姿勢で保存されている標本から、立体的な復元が可能になったバージェス動物群の動物である[2]脱皮する最中の化石も発見されており、これは節足動物の脱皮行動を直接的に証明する最古の化石記録の1つである[3]

形態

成長段階を表すと思われる様々な大きさの個体が発見され、その体長は2.4mmから24.5mmに及ぶ[2]。他のMarrellomorpha類と同様、体は発達した突起物と特化した付属肢関節肢)もつ頭部と、たくさんの体節と二叉型の脚をもつ胴部に分かれる[2]

頭部

頭部は前後に縦長く、後ろ向きに湾曲した2対の大きな突起はその左右と後上方から張り出している。左右(外側)の突起は滑らかで、後上方(内側)の突起は鋸歯状の縁をもつ[2]。頭部の腹面は前後で1本の鉤状の突起と1対の棘があり、は後者の間に開く[2]。特化した2対の付属肢は頭部の左右に配置され、最初の1対は約30節に分かれた細長い触角である[2]。次の1対は強大なオール状の第2付属肢で、触角の接続部の後上方から左右に張り出し、1節の長い柄部と両縁に剛毛が走る5つの平たい肢節で構成される[2]

胴部

胴部は長い円筒状で、大きさによって小型の17節から通常の大型の26節以上あり、後方ほど細く、終端の尾節は小さく目立たない[2]。各胴節に1対ずつ配置される脚は二叉型付属肢で、十数節の羽毛状の外肢と6節の歩脚状の内肢で構成される[2]。基部の構造や外肢と内肢の接続部は不明瞭だが、少なくとも胴節との接続部は柔軟で、頑丈な顎基はなかったことが分かる[2]。脚は後方ほど短く、特に後方の十数対は内肢の各肢節の内側に丸い突起物がある[2]

内部構造

消化系循環系が発見される。頭部にある消化管の前端は太いで、口の方向に合わせてUターンして折り返している[2]。胴部の消化管は細長く、特に分岐(消化腺)はない[2]。循環系は発達で消化管の背面に配置されており、頭部にある嚢状の心臓と、突起・付属肢・体節に入り込んだ動脈によって構成される[2]。正中線の動脈は胴部以降で左右2本に分かれる[2]

生態

バージェス動物群の生態復元模型。右下に数匹のマーレラがある。

マーレラは遊泳性の動物(ネクトン)として広く認められ、群れで活動していた説も挙げられる[2]。脚の外肢はの役割を果たし、オール状の第2付属肢の前後動作によって海中を推進できたと考えられる[2]。海中の小動物や懸濁物を餌とし、泳ぎながら輪のように囲んだ脚の内肢てそれを集めていたと推測される[2]脱皮の際は頭部の前端を通じて脱皮殻から抜き出している[3]

分類

Marrellomorpha
Acercostraca

ヴァコニシア

Xylokorys

マーレラ目
マーレラ科

マーレラ

ミメタスター科

フルカ

ミメタスター

Marrellomorpha類におけるマーレラの系統的位置[4]

マーレラは発見当初では甲殻類と考えられ、バージェシアBurgessia)と共に鰓脚類と思われる経緯もあった[2]。この考えは後に否定され、マーレラはMarrellomorpha類という独立群に分類されるようになった[2]。Marrellomorpha類と他の節足動物の類縁関係は未だにはっきりしておらず、基盤的な節足動物、三葉虫などに近縁、大顎類多足類・甲殻類・六脚類を含んだ系統群)に近縁など、様々な系統仮説が提唱される[5][2][6][7]

マーレラと同じくMarrellomorpha類に分類される節足動物は、オルドビス紀に当たる Letná Formation から発見されたフルカFurca[4]シルル紀に当たる Herefordshire Lagerstätte から発見された Xylokorys[8]、およびデボン紀に当たるフンスリュック粘板岩Hunsrück Slate)から発見されたミメタスターMimetaster[9]ヴァコニシアVachonisia[10]が挙げられる[4]。その中で、フルカとミメタスターを含んだミメタスター科Mimetasteridae)はマーレラを含んだマーレラ科Marrellidae)に近縁と考えられ、共にマーレラ目Marrellida)に分類される[4]

参考文献

  • D. E. G. Briggs, D. H. Erwin, F. J. Collier著『バージェス頁岩化石図譜(鈴木、瀬戸口、山口訳)』、朝倉書店、2003年

脚注

  1. Canada, Royal Ontario Museum and Parks (2011年6月10日). Marrella - Fossil Gallery - The Burgess Shale (英語). burgess-shale.rom.on.ca. 2020年12月17日閲覧。
  2. García-Bellido, Diego C; Collins, Desmond H (2006-06-01). “A new study of Marrella splendens (Arthropoda, Marrellomorpha) from the Middle Cambrian Burgess Shale, British Columbia, Canada” (英語). Canadian Journal of Earth Sciences 43 (6): 721–742. doi:10.1139/e06-012. ISSN 0008-4077. https://www.researchgate.net/publication/237169357_A_new_study_of_Marrella_splendens_Arthropoda_Marrellomorpha_from_the_Middle_Cambrian_Burgess_Shale_British_Columbia_Canada.
  3. García-Bellido, Diego C.; Collins, Desmond H. (2004-05). “Moulting arthropod caught in the act” (英語). Nature 429 (6987): 40–40. doi:10.1038/429040a. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/429040a.
  4. Rak, Štĕpán (2011). “A revision of the Late Ordovician marellomorph arthropod Furca bohemica from Czech Republic”. Acta Palaeontologica Polonica. doi:10.4202/app.2011.0038. https://www.researchgate.net/publication/265662528_A_Revision_of_the_Late_Ordovician_Marrellomorph_Arthropod_Furca_bohemica_from_Czech_Republic.
  5. Aria, Cédric; Caron, Jean-Bernard (2017-05). “Burgess Shale fossils illustrate the origin of the mandibulate body plan” (英語). Nature 545 (7652): 89–92. doi:10.1038/nature22080. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/nature22080.
  6. Legg, David A.; Sutton, Mark D.; Edgecombe, Gregory D.. “Arthropod fossil data increase congruence of morphological and molecular phylogenies” (英語). Nature Communications 4 (1). ISSN 2041-1723. https://www.academia.edu/4115742/Arthropod_fossil_data_increase_congruence_of_morphological_and_molecular_phylogenies.
  7. Zhai, Dayou; Williams, Mark; Siveter, David J.; Harvey, Thomas H. P.; Sansom, Robert S.; Gabbott, Sarah E.; Siveter, Derek J.; Ma, Xiaoya et al. (2019-09-03). “Variation in appendages in early Cambrian bradoriids reveals a wide range of body plans in stem-euarthropods” (英語). Communications Biology 2 (1): 1–6. doi:10.1038/s42003-019-0573-5. ISSN 2399-3642. https://www.nature.com/articles/s42003-019-0573-5.
  8. Siveter, Derek J; Fortey, Richard A; Sutton, Mark D; Briggs, Derek E.G; Siveter, David J (2007-09-22). “A Silurian ‘marrellomorph’ arthropod”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 274 (1623): 2223–2229. doi:10.1098/rspb.2007.0712. PMC: PMC2287322. PMID 17646139. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2007.0712.
  9. Kühl, Gabriele; Rust, Jes (2010-09-01). “Re-investigation of Mimetaster hexagonalis: a marrellomorph arthropod from the Lower Devonian Hunsrück Slate (Germany)” (英語). Paläontologische Zeitschrift 84 (3): 397–411. doi:10.1007/s12542-009-0049-x. ISSN 1867-6812. https://doi.org/10.1007/s12542-009-0049-x.
  10. Kühl, Gabriele; Bergström, Jan; Rust, Jes (2008-12-12). “Morphology, Palaeobiology and Phylogenetic Position of Vachonisia rogeri (Arthropoda) from the Lower Devonian Hunsrück Slate (Germany)” (英語). Palaeontographica Abteilung A: 123–157. doi:10.1127/pala/286/2008/123. https://www.schweizerbart.de/papers/pala/detail/286/86473/Morphology_Palaeobiology_and_Phylogenetic_Position?af=crossref.

関連項目

外部リンク

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