ファンシーラット

ファンシーラット: fancy rat)とは家畜化されたドブネズミであり、クマネズミ属のペットの中では最も一般的な種類である[1]。「ファンシーラット」という名称は動物愛好(英: animal fancy)または英語の動詞fancyに由来する[2]

ファンシーラット
白地に野鼠色のファンシーラット
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ科 Muridae
: クマネズミ属 Rattus
: ドブネズミ Rattus norvegicus
学名
Rattus norvegicus
(John Berkenhout, 1769)

ファンシーラットの起源は18-19世紀のヨーロッパで行われていたブラッド・スポーツの標的である。この時期からファンシーラットはペット用として交配を重ねており、多様な毛色と毛質が存在する。また、世界中のいくつかの愛好家集団によって交配、飼育されており、一般的なペットとして店やブリーダーで売られている。

家畜化されたラットは生理学的に野生種とは異なり、信頼できるブリーダーや店から入手した場合の飼い主に対する健康上のリスクは他の一般的なペットと変わらない[3]。例えば、野生のドブネズミの個体群では接触することでサルモネラなどの病原体を家庭に持ち込んでしまう可能性がある[4]が、家畜化したドブネズミでは病気の恐れはないと見做されている[5]。ファンシーラットは野生種とは経験する健康リスクが異なるため、多くの病気で野生種よりも罹患率が低い。

ファンシーラットは自分自身で面倒をみることができ、他の小型のペットに比べて非常に手頃な価格で購入できるのが大きな利点の一つだ。加えてイヌネコに比べて、周囲の影響を受けにくく素直でしつけが簡単である。この比較により、ファンシーラットは他の家畜化された齧歯類よりも賢いと考えられている。

歴史

鼠いじめ(rat-baiting)
ジャック・ブラックはラットを捕らえるだけでなく鼠いじめ用に売ることで生計を立てていた。

現代のファンシーラットの起源は18、19世紀のヨーロッパでラットの捕獲をしていたネズミ捕り屋と共に始まった[1]。彼らは捕まえたマウスを殺すこともあったが、ブラッド・スポーツ用に売る方が多かった[6]鼠いじめは20世紀初期まで人気のスポーツだった。このスポーツでは、ピット(囲い)の中をラットでいっぱいにしテリアが全てのラットを殺すのにどれだけ時間がかかるか賭けた。鼠いじめが流行っていた時期にネズミ捕り屋と参加者の両方が変わった色のラットを飼育し始め、最終的に交配してペットとして売るようになったと考えられている[1][7]。ファンシーラットの基礎を形成したのはネズミ捕りのジャック・ブラックロンドン最大の公営競技施設の1つを経営していたジミー・ショウの2人だったと考えられている。今日存在している多様な毛色の多くは、この2人が起源となっている[1][8]特にブラックは、珍しい色をした可愛いラットを飼い馴らし、リボンで飾り、ペットとして売ったことで知られていた。

ラット愛好が公的な体系化された趣味となったのは、1901年10月24日のことだった。イングランドにある町アイルズベリーで開催された品評会で、メアリー・ダグラスという名の女性が自身のペットであるラットを参加させたいとナショナル・マウス・クラブに許可を求めたのだ。彼女の黒と白のラットは最優秀賞を獲得し、その地域ではラットに関心が向けられるようになった。1921年にダグラスが亡くなった後、ラット愛好の流行は廃れ始めた。初期のラット愛好はナショナル・マウス・アンド・ラット・クラブの一部として公的には1912年から1929年または1931年まで続いたが、終了した時点で組織名から「ラット」が抜けて元の「ナショナル・マウス・クラブ」に戻った。1976年にイギリスのナショナルファンシーラット協会 (NFRS) が設立され、この趣味は復活した[1][8]。今ではペットとしてのラットは店やブリーダーから購入することができ、世界にはいくつかのラット愛好家の団体が存在する。

野生のラットとの差異

家畜化されたラットはCanis lupus familiarisイヌ)とは異なり、野生種との分離が不十分であり別個の亜種として認定されてはいないが、野生種と区別できる重要な差異が存在する。最も明白なのは毛色の違いだ。野生では無作為な色の突然変異が起きることがあるが、稀にしか発生しない。ほとんどの野生のR. norvegicusは暗褐色だが、一方ファンシーラットは#品種で後述するようにホワイト、シナモン、ブルーなどの毛色が存在する。

ペットのラットは野生種と比べると行動がおとなしい[9]。また、人間のそばにいることを好み自由に歩き回っているときに飼い主を探すことが知られている。そして、光と音に対する反応が小さく、新しい食べ物に対して野生種ほど慎重でなく、過密状態への耐性が強くなっている。また、より早期に、より容易に交配し、交配可能な年齢層が広いことが示されている[10]。さらに、同種の個体同士で争うときにも野生種とは異なる行動を示す。野生種のラットは戦いに負けるとほとんどの場合逃げ出すが、ケージで飼育されているラットは腹を見せるかボクシングの姿勢をとるかして長時間を過ごす[11]。これらの習性は遺伝ではなく環境に起因するものだと考えられている。だが、野生種のいくつかの個体が他よりも家畜化しやすいこと、これらの違いが子孫に受け継がれることには生物学的理由があることも確かであると理論づけられている(ロシアで家畜化されたアカギツネ参照)[10][12]

体の構造も野生のラットとは異なっている。ファンシーラットは野生種に比べて体が小さく、耳は大きく、尾は長い。また一般的に顔立ちがより鋭く小さい。

家畜化されたラットは野生種よりも寿命も長い。ペットのラットは捕食者から保護されており、食糧、水、隠れ家、医療措置を得やすいので、平均寿命は野生種が1年に満たないのに対しペットでは約2年から3年になる[13]。だが、野生種の方が実験室で使われるラットよりも脳、心臓、肝臓、腎臓、副腎が大きい[10]。また健康上の問題も異なる。飼育されているラットはヒトと接触することで肺炎レンサ球菌に感染するリスクがあるが、野生種はゴキブリやノミのような媒介者と接触した後にサナダムシに寄生される可能性がある。

社会的行動

約3週齢のファンシーラット

ラットは非常に社会性のある動物であり、環境エンリッチメントを考慮して多頭飼いが推奨されている。高齢のオス個体の一部でみられるような攻撃性などの深刻な問題行動がある場合を除き、一般的にラットを1匹で飼育することは推奨されない[14]先に飼っていたラットは互いに対面済みだが、より良い方法は、しばしばラットのブリーダーが新しい飼い主に進める方法だが、同腹同性のラットを複数匹で飼い始めることだ。特にオスの場合、最初に何度か喧嘩をすることがあるが、一旦アルファラット[注釈 1]が決まると共同生活がうまくいくようになるはずだ[15]ラットは大抵の場合、2週間から1ヶ月の間に適応して互いに仲良くなる。ラットは一般的に他のケージの仲間とも、特にメスと非常に仲良くなる。また、病気の個体の手助けをしたり世話をすることもある。一般的に同腹同性のラットを2匹以上で飼育すると混乱がみられないが、時折敵意のない喧嘩をすることはある。兄弟でないラットを一緒に飼うこともできる。ラットの安全を確保するためには複数の対策をとる必要がある。新しいラットを導入する手法の1つに、元からいたラットも慣れていない中立的な場所で飼うことで、縄張り行動を起こさせない方法がある[17]。ラットがどちらも若いとき、一般的には6ヶ月未満のときには簡単に導入できる。一番難しいのはオスの大人のラット同士の場合である[18]成人したオス、特に既にアルファが確立されている場合は新しい仲間を受け入れにくい。

品種

標準的な毛色の1つであるアメリカンブルー。

他のペットとして飼育されている種と同様に、野生ではみられない多様な毛色、毛皮(コート)や他の特徴がある。個々のラットは色、コート、模様、非標準的な体型によって分類することができる。そのため、「ルビーアイ・シナモン・レックス・ダンボ」のような非常に詳細な分類も可能である[2]

一部のファンシーラットは、野生のドブネズミの色であるアグーチ色(同じ毛が3色に分かれている、野鼠色)のままだが、黒色の毛皮のラットに由来する形質として、毛の色が分かれておらず一色のラットもいる。アグーチに由来する色には、「アグーチ」「シナモン」「fawn(直訳:淡黄褐色)」がある。黒色に由来する色には「ブラック(黒)」、「ベージュ」、「チョコレート」がある[19]

眼の色はラットの色の下位分類だと考えられており、毛皮の色の定義にはしばしば標準的な眼の色が含まれている。これは、眼の色を制御する多くの遺伝子は毛皮の色にも影響し、逆もまた同様であるからだ。アメリカ・ファンシーラット・マウス協会 (AFRMA) は確認されたラットの種類に基づき、眼の色の一覧表に「ブラック」「ピンク」「ルビー」「オッドアイ(左右の眼の色が異なる)を記載している[20] 。「ルビー」は一見すると黒く見えるが、近くで見ると深い暗い赤に見える眼を表す。

色名は「ライラック」や「fawn」のように、より定義の曖昧な品種に変わることもある[19]。基準の解釈は国やクラブによって違い、国内やクラブ内でも統一されていないこともある[20][21][22]

模様

ヒマラヤンラットは独特な色をしており、模様に個体差がある。

ファンシーラットの品種はさらに多様な模様の違いによっても分類される。ペットのラットには様々な色や模様の組み合わせがある。模様は一般的に模様の形と、有色の毛と白色の毛の比率で分けられる。2つの正反対な特徴として、「セルフ」(白い毛がない)と「ヒマラヤン」(ネコの品種であるヒマラヤンのように、鼻と足にポイントと呼ばれる有色の部分があり、それ以外は完全に白い)がある[23]

品評会にファンシーラットを出すために、模様は詳細な専門用語によって厳密に基準が決められている。しかし、多くの飼育されているラットは色の標準に従って厳密に交配されている訳ではない。ペットショップのラットの多くは公的な交配の展望からみれば「ミスマーキング」であり、ラット愛好団体が定めた規格に合わない模様の品種として定義される。

一般的に認められているのは以下のとおりである。

  • バークシャー:背部が有色で腹部が白色。
  • フーディッド:鞍型の模様。有色部が分かれておらず、頭部全体から背骨まで、一部の個体では尾まで色がついている[22]
  • キャップ:頭全体だけが有色。
  • ブレイズ:有色部が頭部(キャップ)か胴体(アイリッシュ、バークシャー、セルフ)であり、顔全体にわたり白い三角の楔状の模様がある。
  • Variegated(直訳:まだら、多様な):毛皮の模様が変わっているミスマッチなもの。フーディッドの模様が分かれたりスポットが入ったもの、ブレイズの形が崩れたものなど。
  • アイリッシュ(イングリッシュ・アイリッシュ):イングランドでは、胸部に白い正三角形の模様があり前足全体と後ろ足の半分が白いものとNFRSが定義している[24]。アメリカ合衆国や他の地域では、AFRMAなどのクラブによって前述の模様は「イングリッシュ・アイリッシュ」として区別されており、「アイリッシュ」は腹側が一様に、もしくは左右対称な形で白くなっているラットとして規定されている[20][25]

他にも、「スポット」、「ダルメシアン」(犬のダルメシアンから命名)、「エセックス」、「マスクド」、「サイアミーズ」(一般的にはシャム猫(英:Siamese cat)のように尾と鼻が暗い色で体の色にグラデーションがかかっているもの)、ダウンアンダー(オーストラリアの品種で腹と背に同じ形の縞か模様があるもの)がある[26]

体形

オスのダンボラット。耳の位置が低い品種。

選択的交配によって生じたラットの身体的変化として最も一般的で主要なものに、「マンクス」と「ダンボ」がある。「ダンボ」はアメリカ発祥で、頭部の横の低い位置に丸く大きな耳がついているのが特徴であり、フィクション作品に登場する象のダンボに似ていることから名付けられた。「マンクス」は遺伝子変異のため尾をもたないラットであり、ネコの品種で同じく尾をもたないマンクスの名前をとって命名された[20]が、 同じ変異をもっているとは限らない。

毛皮(コート)

色や模様に比べるとコートは比較的多様性に乏しく、国際的な標準化がなされていないものもある。最も一般的な種類は「ノーマル」または「スタンダード」であり、これは性差による毛並のきめの粗さの違いを許容している。オスの毛皮はきめが粗く厚いが、メスの毛皮はオスに比べて柔らかくきめ細かい[20][22]。他に標準的なコートの種類として、巻き毛で洞毛までカールしている「レッキス」、レッキスの毛が柔らかい変種の「ベルベティーン」、非常に柔らかくきめ細かい光沢のある毛皮の「サテン」または「シルキー」、細く長い直毛が特徴の「ハーレイ」がある[20][22][27]。残りのコートの種類は毛によって定義されるのではなく、「ヘアレス」のように無毛であることにより定義されている。

ヘアレス・ラット

ヘアレス(無毛)のラット。色素沈着が見られることから「フーディッド」であることが分かる。

ヘアレス・ラットは無毛が特徴のコートの種類であり、無毛の程度は様々だ。ヘアレス・ラットは巻き毛のレッキスから交配され、非常に短い毛の生えた部分があるものから完全に無毛のものまでいる。ヘアレス・ラットは一般的に、レッキスの毛皮の原因となる異なる遺伝子を組み合わせて交配することで生まれる。レッキスは優性形質なので、レッキスの特徴である巻き毛の毛皮の子孫を作るには、片方の親がレッキスであればよい。だが、2匹のレッキスを交配してこの形質の遺伝子が2個存在する個体になると、毛皮に異なる影響が生じて無毛(ヘアレス)になり、口語で「ダブル・レックス」と呼ばれるようになる。また、無毛に近いラットの一種にパッチワーク・ラットがいる。これは常に毛を失い、生涯で数回異なる部分の毛が再生する[20][22]

選択的交配と倫理

ラット愛好家の中で、選択的交配について論争が起きている[28][29]。特定の基準を満たすよう、もしくは新たな基準を作れるようにラットを交配することはラット愛好の基礎の大部分を占めている。他方で、このような交配は基準を満たさない多くのラットを生み、それらは逃がされ、食用として売られ、殺処分された。

また、無毛や無尾のラットを交配するのは倫理的に問題ないのかという懸念もある。尾はラットの平衡感覚と体温調整に必要だ。尾のないラットは熱中症、腸と膀胱の制御不良、高所からの落下、後肢の麻痺や巨大結腸症のような命に関わる骨盤付近の奇形のリスクが高い[30]。同様に、ヘアレス・ラットは毛皮がなく傷と寒さへの対策が少ない。NFRSなどの団体はイベントでこれらの品種の展示と提携サービスを通じた広告を禁止している[31]

規制

R. norvegicus(ドブネズミ)およびその関連種は害獣とみなされており、これらを意図的に外国へ持ち込むことはしばしば規制の対象となる。例えば、オーストラリアでは外国の齧歯類の持ち込みは禁止されており(オーストラリアの侵略的外来種参照)[32]、国外の系統とは分かれて国内のみで様々なコートや色の品種が交配されているが、一部の品種は国内では入手できなくなっている。例えば、「ヘアレス」と「ダンボ」はオーストラリア国内には存在しない。また、ラットがいないと考えられているカナダのアルバータ州[33]のように、学校、研究所、動物園以外でファンシーラットを飼育するのは違法という地域もある[33]

健康

大きな腫瘍のあるラット。ファンシーラットでは一般的に、オスメスどちらでも老化すると乳腺腫瘍ができる。この腫瘍は普通は良性だが、多発性腫瘍は手術で除去しても残ってしまう[34]

ヒトが飼育するマウスは一部の健康リスクや病気については野生種よりもなりやすいが、野生で流行している一部の病気には非常にかかりにくい。感受性の主な要因には曝露、生活条件、食事が含まれる。

屋内で飼育されているラットは普通サルモネラ緑膿菌などの病原性バクテリアとの接触を回避することができる。後者は処理された水には存在しない。また、ネズミチフスやラットに寄生するサナダムシ (Hymenolepiasis) などの感染拡大に必須であるゴキブリ、カブトムシ、ノミなどの媒介者との接触を避けるのはより容易い[35][36]。加えて、ペットや実験用のラットは安定してバランスのよい食事をとることができ、医療処置を受けやすいという利点がある。

屋内での生活は一部の病気と接触するリスクを減少させる一方で、他のラットとの距離が近く、常に温度や湿度などの環境因子から適切な保護を得られる訳ではなく、不健康な餌を与えられ、不自然な生活習慣と本質的に関連するストレスがあり、これらは全てラットの健康に悪影響を与えて特定の状態に陥りやすくする可能性がある[35][37][38]。特に、ティザー病Giardia murisのような原生動物の感染症、仮性結核は普通ストレスのかかった、もしくは若いラットにみられる[36][39]。加えて、ペットのラットは人獣共通感染症である肺炎レンサ球菌に曝される。ヒトに関連する真菌であり飼育動物のほとんどで発見されているPneumocystis cariniiはラットの免疫系が病気で弱くなっていない限りは無症状である。発症した場合は肺炎になりえる[39]

ラットコロナウイルス感染症 (RCI) 、センダイウイルスマイコプラズマによる呼吸器疾患など、いくつかの病気は単純にその高い感染力とラットの実験室、ペットショップ、ブリーダーでの飼育方法により広がっている[36][39]。だが、マイコプラズマによる呼吸器疾患は研究室飼育のラットではペットのラットに比べてはるかに少ないことも特筆すべきことだ[39]

ペットのラットに高カロリーの餌を与えると、下垂体腺腫を発症することがある[34]。また、低湿または高温下ではリングテールを発症することがある[40]ブドウ球菌属は一般的に皮膚の表面に生息している真正細菌のグループであり、そのほとんどは良性であるが、社会性や序列に関わる闘いで負った切り傷やひっかき傷が感染経路となり潰瘍性皮膚炎を発症する可能性がある[35]

いくつかの証拠によれば、卵巣摘出されたメスのラットはそうでないラットに比べ胸腺と下垂体の腫瘍を発症しにくい[41]。ラットの一般的な病気や健康問題を防ぐための研究が進められている。餌の改善はファンシーラットの健康と寿命を改善するための主な提案の1つであり、このような提案の中にはラットに適したスーパーフードを与えるというものもある[42]。癌、心臓病、脳卒中のリスクを減らすために適度にスーパーフードを与えるという案だ。

飼い主のリスク

ラットをペットとして飼育していると、飼い主はラットから危険な病気を移されるだろうと汚名を着せられることがある。懸念の一つには、全てのラットはペスト菌の宿主だというものがあるが、実際にはR. norvegicusは脅威があると考えられている種のリストには記載されていない[5]。2004年、アメリカ合衆国で発生したサルモネラの大流行はラットの飼い主らと関連していた[43]。しかし、他の多くの人獣共通感染症と同様、ペットのラットの感染源となったのは一般的に飼い主の自宅に侵入した野生の齧歯類か、汚染された餌、水、敷き藁であることが確かめられた[4]

他のリスクとしては鼠咬症がある。これは飼育されているラットでは珍しい病気であり、ほとんどは大手チェーンのペットショップで大量飼育されているラット(普通はペットとしてではなくヘビの餌用)か、ラットの世話を上手くできなかったブリーダーのラットで発見される。この病気はラットではほとんど気づかれないが、保菌者であるラットに噛まれたり引っかかれたりすることで感染する。特徴的な症状として、感染した部位の噛み傷やひっかき傷が腫れ、発熱、嘔吐、体の痛みが見られる[44]

フィクション

フィクションにおいて、ラットはしばしば飼育された動物としてではなく、オオカミと仲良くなるキャラクターと同様、人に慣れた動物として描かれる。飼い馴らされたペットとして、ラットは悪役や不明瞭な役割、愛される役などとして描かれてきた[45]

サマンサ・マーティン (Samantha Martin) は映画、コマーシャル、音楽ビデオ用の動物を扱うプロのトレーナーであり、彼の主張によるとラットは適応性、知能、集中力があるため最も訓練しやすい動物の1つだという[46]

スティーブン・ギルバートの短編小説『ラットマンズ・ノートブック』は1971年の映画『ウイラード』、1972年の映画『ベン』、2003年のリメイク版ウイラードの原作である。この作品では、主人公は自宅で見つかったラットと友情を結んで親しくなるが、悲劇的な結末を迎える。これらの映画は概してラットの一般的に認識されている悪質な部分(人や猫を殺し、食料雑貨店に大打撃を与えること)を強調している[47]が、他方で他の作品に登場するペットになった野生のラットは中立的ないし肯定的に描かれている。テレビドラマの『Dr.HOUSE』では、主人公ハウスが飼育しているラットのスティーブ・マックイーン (Steve McQueen, en:List of House characters#Minor characters参照) について短い特集を組んでいる[48]

ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』シリーズの多くの版では、主人公であるタートルズの師匠にして養父であるラットのスプリンターが登場する。スプリンターはかつて忍者ハマト・ヨシのペットであり、飼い主を真似ることで武術を学んでいた。

1996年のポイント・アンド・クリックアドベンチャー、『Phantasmagoria: A Puzzle of Flesh』では、主人公のカーティス・クレイグ (Curtis Craig) がブロブ (Blob) という名前のラットを飼育している。ブロブはゲーム中に何回も登場し、プレイヤーが必ず解かなければならない多くのパズルのうちの1つにも関与している。

脚注

注釈

  1. アルファは群れのリーダーを意味する動物行動学用語。
  2. アルファは群れのリーダーを意味する動物行動学用語。

出典

  1. Langton, Jerry (2007). “Entertainer, Test Subject, and Family Friend”. Rat: How the World's Most Notorious Rodent Clawed Its Way to the Top. Macmillan. ISBN 0-312-36384-2. https://books.google.com/books?id=n488n52-wYUC&pg=PA87&source=gbs_toc_r&cad=0_0 2009年1月8日閲覧。
  2. "Rats". Writer: Kaylan Eggert Narrator: Max Raphael. Modern Marvels. History Channel.
  3. “Table on Global Zoonoses”. Merck Veterinary Manual – Zoonoses:Introduction. Merck and Co., Inc. (2008). http://www.merckvetmanual.com/mvm/htm/bc/tzns01.htm 2009年1月11日閲覧。
  4. Merck Veterinary Manual – Generalised Diseases”. 2009年1月9日閲覧。
  5. Orloski, Kathleen A.; Sarah L. Lathrop (February 15, 2003). “Plague: a veterinary perspective”. Journal of the American Veterinary Medical Association 222 (4): 444–448. doi:10.2460/javma.2003.222.444. PMID 12597416. http://avmajournals.avma.org/doi/pdf/10.2460/javma.2003.222.444.
  6. Krinke, George J. (15 June 2000). “History, Strains and Models”. The Laboratory Rat (Handbook of Experimental Animals). Gillian R. Bullock (series ed.), Tracie Bunton (series ed.). Academic Press. pp. 3–16. ISBN 0-12-426400-X
  7. Hilscher-Conklin, Caryl. The Domestication of the Rat”. Rat & Mouse Club of America. 2008年11月10日閲覧。
  8. The History of Fancy Rats”. American Fancy Rat and Mouse Association. 2008年11月10日閲覧。
  9. Knight, John (2005). Animals in Person: Cultural Perspectives on Human-animal Intimacy. Berg Publishers. pp. 131. ISBN 1-85973-733-1. https://books.google.com/books?id=UTycF9esNdIC&pg=PA131 2009年1月10日閲覧。
  10. Barnett, S. Anthony (April 1, 2002). “Naming and Taming”. The Story of Rats: Their Impact on Us, and Our Impact on Them. Australia: Allen & Unwin. pp. 21–23. ISBN 978-1-86508-519-7. https://books.google.com/books?id=WSHVlTr-PpsC&printsec=frontcover&source=gbs_summary_r&cad=0#PPA21,M1
  11. Blanchard, R; Carolineblanchard, D (1977). “Aggressive behavior in the rat”. Behavioral Biology 21 (2): 197–224. doi:10.1016/S0091-6773(77)90308-X. PMID 562152.
  12. Price, Edward O. (2003). Animal Domestication and Behavior. CABI Publishing. ISBN 0-85199-597-7
  13. Langton, Jerry (26 June 2007). “Second Only to Us”. Rat: How the World's Most Notorious Rodent Clawed Its Way to the Top. St. Martin's Press. p. 168. ISBN 0-312-36384-2. http://www.amazon.com/gp/reader/0312363842 2008年11月13日閲覧。
  14. National Fancy Rat Society”. ナショナルファンシーラット協会. 2017年5月15日閲覧。
  15. Frequently Asked Questions Concerning Domestic Fancy Rats”. Can 2 male rats co-exist in one cage?. 9/2/2011閲覧。
  16. Frequently Asked Questions Concerning Domestic Fancy Rats”. Can 2 male rats co-exist in one cage?. 9/2/2011閲覧。
  17. Introducing new Rats”. The Rat Fan Club. 2017年5月15日閲覧。
  18. the Rat Report”. The Rat Fan Club. 2016年2月25日閲覧。
  19. Royer, Nichole. Rat Genetics, part 3”. AFRMA. 2009年1月9日閲覧。
  20. American Fancy Rat and Mouse Association standards”. AFRMA. 2006年11月21日閲覧。
  21. Daly, Carol H. (2002). Rats (2 ed.). Barron's Educational Series. p. 15. ISBN 0-7641-2012-3. https://books.google.com/books?id=7aNn84hsNs8C&pg=PA15&dq=international+rat+standard#PPA15,M1
  22. National Fancy Rat Society standards”. NFRS. 2006年11月21日閲覧。
  23. Standards”. Rat Society of America. 2009年2月3日閲覧。
  24. Varieties of Fancy Rats - Marked Varieties”. National Fancy Rat Society. 2017年5月18日閲覧。
  25. Fox, Susan (August 1997). The Guide to Owning a Rat. TFH Publications. p. 12. ISBN 0-7938-2157-6
  26. Hemberg, Yvette; Cindy Sautchuk (2000). “A New Rat Variety Down Under” (PDF). Rat and Mouse Fancy Report (Rat and Mouse Fanciers for Excellence (RMFE)) 1 (1). http://rodentfancy.com/pets/wp-content/uploads/2008/01/downundr.pdf.
  27. Rats PacNW standards”. RatsPacNW Rat Fanciers Club. 2009年1月12日閲覧。
  28. General Information – Advice for the Novice Breeder”. National Fancy Rat Society (2008年5月3日). 2008年11月14日閲覧。
  29. Isaksen, Mary Ann (1999年1月). Breeding: Can YOU Live With It?”. Rat & Mouse Gazette. Rat & Mouse Club of America. 2008年11月14日閲覧。
  30. Royer, Nichole (1998年). Tailless Rats”. AFRMA Rat & Mouse Tales. American Fancy Rat and Mouse Association. 2008年11月14日閲覧。
  31. Banned varieties”. The National Fancy Rat Society. 2008年11月11日閲覧。
  32. Other Pets – DAFF”. Australian Quarantine and Inspection Service. 2009年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月3日閲覧。
  33. Bourne, John (2002年10月1日). The History of Rat Control in Alberta”. Agriculture and Food. Alberta Department of Agriculture. 2007年12月1日閲覧。
  34. Merck Veterinary Manual – Neoplasia”. 2009年1月7日閲覧。
  35. Merck Veterinary Manual – Skin Diseases”. 2009年1月9日閲覧。
  36. Merck Veterinary Manual – Gastrointestinal Diseases”. 2009年1月9日閲覧。
  37. Merck Veterinary Manual – Management”. 2009年1月7日閲覧。 “Ambient temperatures >85°F (29.4°C), high humidity levels (>80%), poor ventilation, and overcrowding predispose rodents to heat exhaustion.”
  38. Merck Veterinary Manual – Reproductive Diseases”. 2009年1月9日閲覧。
  39. Merck Veterinary Manual – Respiratory Diseases”. 2009年1月9日閲覧。
  40. Health Guide- Ringtail”. 2009年4月24日閲覧。
  41. the Rat Report”. www.ratfanclub.org. 2016年3月30日閲覧。
  42. 11 Superfoods To Add To Your Rats Diet – RatCentral (英語). RatCentral. 2016年3月30日閲覧。
  43. Outbreak of Multidrug-Resistant Salmonella Typhimurium Associated with Rodents Purchased at Retail Pet Stores (英語). アメリカ疾病予防管理センター (2005年5月6日). 2008年11月14日閲覧。
  44. Signs and Symptoms | Rat-bite Fever (RBF)”. www.cdc.gov. 2016年2月25日閲覧。
  45. Ebert, Roger (2008). Roger Ebert's Four-Star Reviews 1967–2007. Andrews McMeel Publishing. pp. 637. ISBN 0-7407-7179-5. https://books.google.com/books?id=v43dJNPMJIkC&pg=PA637. "Remy, the earnest little rat who is its hero, is such a lovable, determined, gifted rodent that I want to know what happens to him next, now that he has conquered the summit of French cuisine."
  46. Wilson, Stacy Lynne (April 20, 2007). “Samantha Martin: Exclusive Interview”. Animal Movies Guide. Running Free Press. pp. 365–366. ISBN 0-9675185-3-9. https://books.google.com/books?id=dGYzZLrBrS4C&printsec=frontcover&source=gbs_summary_r&cad=0#PPA365,M1
  47. Clute, John; John Grant (March 15, 1999). The Encyclopedia of Fantasy. St. Martin's Griffin. pp. 642. ISBN 0-312-19869-8. "Rats also come into their own in supernatural fiction or dark fantasy, where they tend to represent invasive evil...."
  48. HOUSE: Guide to the TV Show”. Second Season Episodes: #221 "Euphoria Part 2". 2009年2月25日閲覧。

関連項目

  • en:American Fancy Rat and Mouse Association:アメリカ合衆国のファンシーラット、ファンシーマウスの協会。
  • ナショナルファンシーラット協会:イギリスのファンシーラットの協会。
  • ラット・アジリティ:ラットの障害物競走。
  • ファンシーマウス
  • フィクションの中のネズミ目の一覧
  • 使役ラット使役動物としてのラット。
  • ラット・ゲノム・データベース
  • 実験的進化

外部リンク

  • Rat Behavior and Biology – 家畜化されたドブネズミの科学的研究に関する役に立つ記事のあるウェブサイト。
  • Rat Guide – ファンシーラットの健康と病気の治療についての情報のあるウェブサイト。
  • RatCentral.com – ファンシーラットの飼い主にとって役に立つ手引、ヒント、出典のある健康に関する記事のあるウェブサイト。

組織

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.