ゼルニケ多項式

ゼルニケ多項式 (ゼルニケたこうしき、英 : Zernike polynomials)とは、単位円上で定義された直交多項式である。その名は位相差顕微鏡の発明によって1953年にノーベル物理学賞を受賞した光物理学者フリッツ・ゼルニケに由来しており、ビーム光学において重要な役割を果たす[1][2]

ゼルニケ多項式のうち、初めの21個を示す。

定義

ゼルニケ多項式 は、

により定義される。ここで、 n は非負整数、 mn ≧ |m| なる整数であり、 ρ は 動径 (0 ≦ ρ ≦ 1)、 φ は偏角である。ゼルニケ多項式は の範囲の値を取る。ここで、動径多項式 は、 nm が偶数の場合、

また奇数の場合0として定義される。

他の定義

動径多項式は、二項係数を用いて、

.

と書き表すことができ、これより多項式の係数はすべて整数であることが示される。

ガウスの超幾何関数を用いて表現することもできる。この表現は、漸化式や微分方程式の導出の他、本多項式がヤコビの多項式の一部であることを示すのに有用である。

動径多項式 に含まれる項 は、バーンスタイン基底関数を用いて展開できる。 n が偶数の場合は 、奇数の場合は の積で展開される。ここで、 s の範囲をとる。これより、動径多項式は有限次のバーンスタイン関数として表される。

Nollによる記法

2つの指数 n,m を並べて、1つの指数 j に統合する方法として、Noll[3]により提案されたのは、

とするものである。初めの20項を下表に示す。

n,m 0,01,11,−12,02,−22,23,−13,13,−33,34,04,24,−24,44,−45,15,−15,35,−35,5
j 1234567891011121314151617181920

OSA/ANSIによる記法

OSA[4] / ANSI標準ゼルニケ多項式は、以下のように定義される。

初めの20項を下表に示す。

n,m 0,01,-11,12,-22,02,23,-33,-13,13,34,-44,-24,04,24,45,-55,-35,-15,15,3
j 012345678910111213141516171819

Fringeによる記法

フリンジゼルニケ多項式は、以下のように定義される。

この定義は光学設計ソフトウェアや光学検査で多く用いられる[5][6]。初めの20項を下表に示す。

n,m 0,01,11,−12,02,22,-23,13,-14,03,33,-34,24,−25,15,−16,04,44,-45,35,-3
j 1234567891011121314151617181920

性質

直交性

動径部分は以下の直交関係を満たす[7]

偏角部分については、初等的な計算により、

ここで のとき2、 のとき1と定義される。これらより、単位円状でのゼルニケ多項式の直交性

が導かれる。ここで であり はいずれも偶数と仮定している。

対称性

x軸に関する軸対称性より、

原点に関する点対称性より、

ここで、 は偶数であると仮定しているので、 と書き換えることができる。動径多項式は、n,mに応じて偶関数または奇関数である。

三角関数の周期性より、原点を中心とした m 回回転対称性が生じる。

漸化式

動径多項式は、以下の漸化式を満たす[8]

動径多項式の定義より、 である。これと、以下の三項間漸化式[9] により、すべての を計算することができる。

この式より、動径多項式の導関数を、2つの動径多項式から計算することができる。

動径多項式

動径多項式は以下のような式となる。

ゼルニケ多項式

ゼルニケ多項式は以下のような式となる。なお、各式は

を満たすよう規格化されている。

 OSA/ANSI
指数
()
Noll
指数
()
Fringe
指数
()
動径
次数
()
偏角
次数
()
名称
0001 1000Piston
0103 31−1Tilt (Y-Tilt, Vertical tilt)
0202 21+1Tip (X-Tilt, Horizontal tilt)
0305 62−2Oblique astigmatism
0404 4200Defocus
0506 52+2Vertical astigmatism
0609113−3Vertical trefoil
070783−1Vertical coma
080873+1Horizontal coma
0910103+3Oblique trefoil
1015 184−4Oblique quadrafoil
1113134−2Oblique secondary astigmatism
12119400Primary spherical
1312124+2Vertical secondary astigmatism
1414 174+4Vertical quadrafoil

出典

  1. Zernike, F. (1934). “Beugungstheorie des Schneidenverfahrens und Seiner Verbesserten Form, der Phasenkontrastmethode”. Physica 1 (8): 689–704. Bibcode: 1934Phy.....1..689Z. doi:10.1016/S0031-8914(34)80259-5.
  2. Born, Max, and Wolf, Emil (1999). Principles of Optics: Electromagnetic Theory of Propagation, Interference and Diffraction of Light (7th ed.). Cambridge, UK: Cambridge University Press. pp. 986. ISBN 9780521642224. https://books.google.com/books/about/Principles_of_Optics.html?id=aoX0gYLuENoC
  3. Noll, R. J. (1976). “Zernike polynomials and atmospheric turbulence”. J. Opt. Soc. Am. 66 (3): 207. Bibcode: 1976JOSA...66..207N. doi:10.1364/JOSA.66.000207. ftp://ftp.bioeng.auckland.ac.nz/pub/pub/jtur044/references/fitting/NOLL1976.pdf.
  4. Thibos, L. N.; Applegate, R. A.; Schwiegerling, J. T.; Webb, R. (2002). “Standards for reporting the optical aberrations of eyes”. Journal of Refractive Surgery 18 (5): S652–60. http://voi.opt.uh.edu/2000-JRS-standardsforrepotingtheopticalaberrationsofeyes.pdf.
  5. Loomis, J., "A Computer Program for Analysis of Interferometric Data," Optical Interferograms, Reduction and Interpretation, ASTM STP 666, A. H. Guenther and D. H. Liebenberg, Eds., American Society for Testing and Materials, 1978, pp. 71-86.
  6. Genberg, V. L.; Michels, G. J.; Doyle, K. B. (2002). “Orthogonality of Zernike polynomials”. 4771. Proc SPIE. pp. 276-286. doi:10.1117/12.482169
  7. Lakshminarayanan, V.; Fleck, Andre (2011年). “Zernike polynomials: a guide”. J. Mod. Opt. 58 (7): pp. 545–561. doi:10.1080/09500340.2011.554896
  8. Honarvar Shakibaei Asli, Barmak; Raveendran, Paramesran (July 2013). "Recursive formula to compute Zernike radial polynomials" Opt. Lett. (OSA) 38 (14): 2487–2489. doi:10.1364/OL.38.002487
  9. Kintner, E. C. (1976). “On the mathematical properties of the Zernike Polynomials”. Opt. Acta 23 (8): 679–680. Bibcode: 1976AcOpt..23..679K. doi:10.1080/713819334.
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