コルチゾール

コルチゾール(Cortisol)は、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種であり、医薬品としてヒドロコルチゾン (hydrocortisone) とも呼ばれる。炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、生体にとって必須のホルモンである。3種の糖質コルチコイドの中で最も生体内量が多く、糖質コルチコイド活性の約95%はこれによる。ストレスによっても分泌が亢進される。分泌される量によっては、血圧血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。

コルチゾール
識別情報
CAS登録番号 50-23-7
KEGG D00088
特性
化学式 C21H30O5
モル質量 362.465
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

医薬品としての利用

コルチゾールは、日本薬局方にはヒドロコルチゾンの名称で収載される、ステロイド系抗炎症薬(SAID)の1つとして臨床使用される。ステロイド系抗炎症薬は炎症反応を強力に抑制し、炎症の全ての過程に作用する。急性炎症慢性炎症自己免疫疾患アレルギー性疾患ショック痛風急性白血病移植片拒絶反応などの治療に使用される。副腎皮質機能不全クッシング症候群胃潰瘍などの副作用が現れる場合もある。

生合成

ステロイド生合成。画像クリックで拡大と解説

コルチゾールの前駆物質のコルチゾンは、コレステロールからプレグネノロンを経て生合成される。 プレグネノロン (pregnenolone) は、プロゲステロンコルチコイドアンドロゲン、およびエストロゲンステロイド生成にかかわるプロホルモンである。プレグネノロンは体内であらゆるホルモンに変換されるプロホルモンである。プレグネノロンは、コレステロールから合成される。この反応では、C20とC22との間にヒドロキシル化反応が起こる。この反応を起こす酵素シトクロムP450sccミトコンドリアにあり、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン卵胞刺激ホルモン黄体形成ホルモンによって制御されている。

コルチゾンとアドレナリンは人体がストレスに対して反応する際に放出される主なホルモンである。これらは血圧を上昇させ、体を闘争または逃避反応 (fight or flight response) に備えさせる。 活性体であるホルモンであるコルチゾールの前駆体であり、コルチゾン自体は不活性である。11-β-ステロイド脱水素酵素と呼ばれる酵素の働きによって、11位のケトン基がヒドロキシル化されることで活性化する。このため、コルチゾールはヒドロコルチゾンと呼ばれることもある。類似のステロイドであるコルチゾールよりも重要性は低い。糖質コルチコイドがもたらす作用のうち95%はコルチゾールによるものであり、コルチゾンの寄与は4%–5%に過ぎない。コルチコステロンはさらに重要性が低い。

ステロイド核のA-D環及びステロイドの炭素番号
コレステロール
コレステロールからプレグネノロン
プレグネノロンからコルチゾールの前駆物質のコルチゾン

健康とコルチゾール

コルチゾール値は、コルチゾール分泌をうながすホルモンである下垂体副腎皮質刺激ホルモンACTHによって増減する。さらにACTHは、視床下部副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンのCRHによって増減する。そのため、コルチゾールが異常値かもしれないと疑われた場合、ACTHとともに測定する。適正なコルチゾール値は人体の健康に不可欠であり、その値が過剰あるいは低下すると、多彩な状態がもたらされる。

コルチゾールはミネラロコルチコイド受容体を刺激し[1]、それによってナトリウムが再吸収されて高血圧に導くと同時にカリウムの排出も行う。ミネラロコルチコイド受容体の刺激は心臓および腎臓の線維化にも関与する[2]

また、このホルモンは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年PTSD患者の脳のMRIなどを例として観察されている[3]。海馬は記憶形態に深く関わり、これらの患者の生化学的な影響とされる。

コルチゾール低値

コルチゾール低値では、アジソン病、先天性副腎低形成症(IMAge症候群、ACTH不応症、Triple A症候群(Allgrove症候群))、先天性副腎皮質過形成症、副腎性ACTH単独欠損症、シーハン症候群、ACTH非産生性の下垂体腫瘍、下垂体性副腎皮質機能低下症、視床下部性副腎皮質機能低下症などが疑われる。

コルチゾール高値

コルチゾール高値では、クッシング病クッシング症候群、グルココルチコイド不応症、異所性ACTH産生腫瘍、異所性CRH産生腫瘍、糖質コルチコイド不応症などが疑われる。

コルチゾールに影響を与えるもの

増加
減少

出典

  1. 柴田洋孝, 「3. 偽性アルドステロン症」『日本内科学会雑誌』 95巻 4号 2006年 p.671-676, doi:10.2169/naika.95.671
  2. 腎とアルドステロン,ミネラロコルチコイド受容体 日本腎臓学会誌 2010年
  3. 山脇成人 (2005年). うつ病の脳科学的研究:最近の話題 (pdf)”. 129回日本医学会シンポジウム. 2019年1月12日閲覧。 8-9頁を参照。
  4. ストレスホルモンを測る 労働安全衛生総合研究所 2016年
  5. Impact of Sleep Debt on Metabolic and Endocrine Function ランセット 1999年
  6. Stress-like Adrenocorticotropin Responses to Caffeine in Young Healthy Men Pharmacology Biochemistry and Behavior 1996年
  7. Blunting by chronic phosphatidylserine administration of the stress-induced activation of the hypothalamo-pituitary-adrenal axis in healthy men. European Journal of Clinical Pharmacology 1992年
  8. Effects of Soy Lecithin Phosphatidic Acid and Phosphatidylserine Complex (PAS) on the Endocrine and Psychological Responses to Mental Stress Stress 2004年
  9. “Effect of Magnolia officinalis and Phellodendron amurense (Relora®) on cortisol and psychological mood state in moderately stressed subjects.”. Journal of the International Society of Sports Nutrition. (2013). doi:10.1186/1550-2783-10-37. PMID 23924268.

参考文献

  • 伊藤勝昭ほか編集『新獣医薬理学 第二版』近代出版、2004年、ISBN 4874021018

外部リンク

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