クエン酸

クエン酸(クエンさん、枸櫞酸: citric acid)は、柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸のひとつである。爽やかな酸味を持つことから食品添加物として多用される。

クエン酸
識別情報
CAS登録番号 77-92-9 
PubChem 311
ChemSpider 305 
UNII XF417D3PSL 
E番号 E330 (酸化防止剤およびpH調整剤)
KEGG D00037 
ChEMBL CHEMBL1261 
特性
化学式 C6H8O7
モル質量 192.124 g/mol (無水物)
210.14 g/mol (一水和物)
示性式 C(OH)(CH2COOH)2COOH
外観 白色結晶
密度 1.665 g/cm3
融点

153 °C, 426 K, 307 °F

沸点

175 °C, 448 K, 347 °F (分解)

への溶解度 73 g/100 ml (20 °C)
THF, エタノール, メタノールへの溶解度 無水物:
THF 1.80 M
エタノール 1.6 M
メタノール 3.08 M[1]
一水和物:
THF 1.52 M
エタノール 1.78 M
メタノール 2.27 M[2]
酸解離定数 pKa pKa1 = 3.09
pKa2 = 4.75
pKa3 = 6.41 [3]
危険性
主な危険性 皮膚と目を刺激
関連する物質
関連物質 クエン酸ナトリウム
クエン酸カルシウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

枸櫞とは漢名マルブシュカンシトロン)を指す。レモンをはじめ柑橘類に多く含まれていることからこの名がついた。柑橘類の酸味の原因はクエン酸の味に因るものが多い。また、梅干しにも多量に含まれている。

性質

分子量は192.125。CAS登録番号は[77-92-9](無水物)、[5949-29-1](一水和物)。カルボキシ基を3個有する弱酸。

水溶液は弱酸性pKa = 2.87)を呈する。常温で無色あるいは白色の固体であり、無水物と一水和物の結晶がある。両者とも揮発性は無く無臭である。一水和物は加熱すると100 ℃で融解し、130 ℃に保つと融点153 ℃の無水物となる。175 ℃以上では分子内脱水によりアコニット酸となる。金属イオンとキレート錯体を作ることが知られている。

生体内物質

クエン酸は、生体内ではクエン酸回路の構成成分であり、オキサロ酢酸アセチルCoAとの反応によって生成する。また、クエン酸は、クエン酸回路でアコニット酸ヒドラターゼ(EC 4.2.1.3)によってcis-アコニット酸を経て異性化されイソクエン酸となる。またクエン酸は解糖系ホスホフルクトキナーゼ活性を阻害し、解糖系からクエン酸回路への流入を調節する因子の1つでもある[4]

製法

潮解性があるので保存には注意が必要。工業的にはデンプンあるいはコウジカビの一種 Aspergillus niger発酵させて作られている。

存在

レモンジュース、トマトピューレ、ルビー種のグレープフルーツジュースやオレンジジュース、食酢などに多い。

利用

ヒトの摂取

各種サプリメントの成分としても多用される。クエン酸を摂取すると運動時に嫌気呼吸が起こらないために乳酸が生成されず疲れにくいとされている。また、エタノールの分解を助けるとされる。一般に、クエン酸や乳酸など体液成分のアニオン性電解質が増大すると利尿作用があらわれることが知られている。

また日本薬局方収載品であり、薬局などでも市販されている。クエン酸のカルシウムイオンとキレート結合するので、かつては検査用血液サンプルの抗血液凝固剤などとしても利用された。クエン酸ナトリウムクエン酸カリウム合剤(商品名ウラリット)は尿をアルカリ化させ尿酸排泄を促進することから痛風に代表される高尿酸血症治療薬として処方され、代謝性アシドーシスの治療にも使用される。

また食品添加物でもあり、清涼飲料水を始め各種の加工食品に添加される。

洗浄

炭酸カルシウムを容易に溶かすことから、便器尿石・浴室・電気ポット加湿器内部に溜まった水垢の洗浄に用いられる。

肥料

肥料の成分がクエン酸の2%水溶液に溶解する性質を「く溶性」という言葉で表すが、これは植物の根が分泌する根酸には溶けにくいがもう少し強い酸には溶けることを意味し、徐々に溶け出してゆっくり吸収されることを示す。

クエン酸塩

アルカリ金属塩の正塩はいずれも水に可溶、アルコールに難溶で水溶液は弱アルカリ性を示す。重金属塩は水に不溶なものが多いが、クエン酸イオンが過剰にあると複数配位することで水溶性となるものもある。

クエン酸ナトリウム
二水和物が安定で、化学式 · の塩。水溶液は弱アルカリ性を示す。抗血液凝固剤や写真材料として利用される。家庭等でクエン酸と炭酸水素ナトリウムを用いて炭酸水を作った際には、その副産物として発生する[5]
クエン酸カリウム
一水和物が安定で、化学式 · の塩。水溶液は弱アルカリ性を示す。利尿剤として利用された。
クエン酸銅(II)
化学式 の塩。トラコーマまたは濾胞性結膜炎軟膏に使用されたことがある。
クエン酸鉄(III)アンモニウム
水酸化鉄(III) をクエン酸に溶かしアンモニアを加えて調製する。調製法により錯塩の構成が異なり、赤褐色の塩と緑色の塩が得られる。鉄欠乏性貧血の鉄剤として利用されたり、青写真や写真材料として利用されている。

安全性

クエン酸は弱酸ではあるが、純粋なクエン酸に曝されると悪影響を受ける可能性がある。吸入されると、咳、息切れ、喉の痛みを引き起こす可能性がある。過剰摂取は、腹痛や喉の痛みを引き起こす可能性がある。皮膚や目が濃縮液に曝されると、赤みや痛みを引き起こす可能性がある。長期間または繰り返し摂取すると、歯のエナメル質が侵食される可能性がある。

出典

  1. Solubility of citric acid anhydrous in non-aqueous solvents
  2. Solubility of citric acid monohydrate in non-aqueous solvents
  3. Dawson, R. M. C., et al., Data for Biochemical Research, Oxford, Clarendon Press, 1959.
  4. Stryer, Lubert; Berg, Jeremy; Tymoczko, John (2003). “Section 16.2: The Glycolytic Pathway Is Tightly Controlled”. Biochemistry (5. ed., international ed., 3. printing ed.). New York: Freeman. ISBN 978-0716746843. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK22395/
  5. 化学式は、

関連項目

外部リンク

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