カノープス

カノープス[1][2](Canopus)は、りゅうこつ座αりゅうこつ座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。太陽を除くとシリウスに次いで全天で2番目に明るい恒星である。

カノープス[1][2]、カノプス[3]
Canopus[4][5]
国際宇宙ステーションから撮影されたカノープス(2003年2月)
仮符号・別名 りゅうこつ座α[6]
星座 りゅうこつ座
視等級 (V) -0.74[6]
位置
元期:J2000.0[6]
赤経 (RA, α)  06h 23m 57.10988s[6]
赤緯 (Dec, δ) −52° 41 44.3810[6]
赤方偏移 0.000068[6]
視線速度 (Rv) 20.30km/s[6]
固有運動 (μ) 赤経: 19.93 ミリ秒/年[6]
赤緯: 23.24 ミリ秒/年[6]
年周視差 (π) 10.55 ± 0.56ミリ秒[6]
(誤差5.3%)
距離 310 ± 20 光年[注 1]
(95 ± 5 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -5.6[注 2]
カノープスの位置
物理的性質
半径 71 ±4 R[7]
質量 8.0 ±0.3 M[7]
自転速度 8.0 km/s
スペクトル分類 A9II[6], F0II[8][7], F0Ib[8]
光度 10,700 ±1,000 L[7][注 3]
有効温度 (Teff) 7,557 ±35 K[9]
色指数 (B-V) +0.15[10]
色指数 (U-B) +0.10[10]
色指数 (R-I) +0.18[10]
金属量 太陽の90%
別名
別名
南極老人星
布良星、Agastya
FK5 245[6]
HD 45348[6], HIP 30438[6]
HR 2326[6], SAO 234480[6]
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観測と利用

東京から見たカノープス(2009年12月)

赤緯マイナス52度42分に位置するため、南半球では容易に観測できるが、北半球では原理的には北緯37度18分(=90度-52度42分)度以北では南中時でも地平線の下に隠れて見ることができない。ただし、大気を通るときの屈折があるため、北限はわずかに北上する[11]。日本では東北地方南部より南の地域でしか見ることはできない。角度では可能とされる地域であっても、北緯36度の東京の地表では南の地平線近く2度程度、北緯35度の京都でも3度程度の高さにしか上らず、地上からの光害や、大気を通る距離も長いため全天でシリウスに次いで明るいとは思えないほどに減光して赤くなり、見つけることはより困難となる。本州より南に位置する九州地方では本州よりは高い位置に観測でき、九州南部の鹿児島県鹿児島では6度程度、南西諸島沖縄県那覇では10度程度の高さまでのぼる。さらに南緯37度18分以南、たとえばオーストラリアメルボルンなどでは、一年中地平線下に沈むことのない周極星になる。

宇宙探査機は通信用アンテナを地球に向け続けるために2つの恒星を使った姿勢の把握が必要となるが、地球に近く非常に明るい恒星として太陽とカノープスが使われている。

天体としての性質

カノープスは太陽のおよそ8倍の質量を持つ恒星で[7]輝巨星または超巨星に分類され[8]、光度は太陽の1万倍かそれ以上に達する[8][7]干渉法では半径は太陽のおよそ70倍と測定されている[8][7]地球からの距離は約310光年である。かつては200光年から1200光年まで距離の推定値に大きな幅があったが、ヒッパルコス衛星による高精度の年周視差測定から上記の値が得られた。スペクトル型はA9II[6]、F0II[8][7]、F0Ib[8]などが与えられている。

カノープスは恒星が寿命末期に辿る進化段階のうちブルーループと呼ばれる段階にある[8]。ブルーループは赤色巨星分枝段階を終えた恒星が漸近巨星分枝に入って再び(広義の)赤色巨星に変化するまでの間に一時的に有効温度が高くなる段階で、太陽質量の数倍以上の質量を持つ恒星でしか見られない現象である。

名称

学名はα Carinae(略称はα Car読み方はアルファ・カリーナエ)。固有名のカノープス[1][2]カノプス[3] (Canopus[4][5]) は、古代ギリシャ語の単語の一つで、紀元前2世紀頃にギリシャに伝わった後に翻訳されずに使われた Κανωβος という言葉に由来する[4]。言葉自体にエジプトの影響が見られるとされる[4]。2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Canopus をりゅうこつ座α星の固有名として正式に承認した[5]

カノープスは、トロイア戦争時のスパルタメネラーオスの船の水先案内人操舵手の名に由来するという説がある[3][12]ストラボンコノンの伝えるところによれば、トロイア戦争の後にヘレネーを連れて帰還する途中でメネラーオスの艦隊は難破してしまい、カノープスは辿り着いた先のエジプトで蛇に噛まれて死んだ、とされる[12]

日本では、房総半島の沿岸部での別名として「布良星(めらぼし)」という呼び名がある。布良は房総半島の南端にある漁港であり、この方向に見える星という意味合いがある[3]。その他にも、南の空にちょっと上ってすぐ沈むので「○○○の横着星(○○○には、そこよりも少し南の地名が入る)」などの呼び名がある。

ヒンドゥー教では、リシ (聖仙) の一人から名を取って「アガスティヤ (Agastya) 」と呼ぶ[13]

南極老人星

高度の低さから赤みがかって見えることから、中国の伝説では寿老人の星、南極老人星(なんきょくろうじんせい)とされる[3]。単に老人星、寿星とも言う[3]。また、戦争や騒乱時にはこの星は見えず、天下が泰平になると見えるとの俗信があり、この星が現れると人々は競って幸福と長寿を祈ったという[14]

脚注

注釈

  1. パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. 出典中の値は常用対数表示で4.03±0.04。

出典

  1. おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  2. 『天文年鑑2016年版』誠文堂新光社、2015年11月26日、295頁。ISBN 978-4-416-11545-9。
  3. 原恵 『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷版) 恒星社厚生閣、2007年2月28日、82-83頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
  4. Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 25. ISBN 978-1-931559-44-7
  5. IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年12月13日閲覧。
  6. Results for NAME CANOPUS”. SIMBAD Astronomical Database. 2021年3月2日閲覧。
  7. Cruzalebes, P. et al. (2013). “Fundamental parameters of 16 late-type stars derived from their angular diameter measured with VLTI/AMBER”. MNRAS 434: 437. Bibcode: 2013MNRAS.434..437C.
  8. Dominiciano de Souza, A. et al. (2008). “Diameter and photospheric structures of Canopus from AMBER/VLTI interferometry”. A&A 489: L5. Bibcode: 2008A&A...489L...5D.
  9. Kovtyukh, V. V. (2007-05-26). “High-precision effective temperatures of 161 FGK supergiants from line-depth ratios”. MNRAS 378: 617. doi:10.1111/j.1365-2966.2007.11804.x.
  10. Hoffleit, D.; Warren, W. H., Jr. (1995-11). “Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.”. VizieR On-line Data Catalog: V/50. Bibcode: 1995yCat.5050....0H. http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5a76628e9487&-out.add=.&-source=V/50/catalog&recno=2326.
  11. カノープスを見よう(2017年)”. アストロアーツ. 2017年12月15日閲覧。
  12. Ian Ridpath. Star Tales - Carina”. 2014年12月16日閲覧。
  13. Richard Hinckley Allen. Star Names - Their Lore and Meaning”. Bill Thayer. 2014年12月16日閲覧。
  14. 『道教の本』学研、1992年、68頁。

関連項目

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