イオン結晶

イオン結晶イオン結合結晶, : ionic crystal)はイオン結合によって形成される結晶のこと。

解説

この結晶は、異符号のイオン同士が隣り合いクーロン力によって結び付けられ固定されることでできる。イオン結合は強い結合なのでイオン結晶は融点が高く、硬い性質を持つ場合が多いが、脆くて壊れやすい性質も持つ。この性質を劈開という。これは、外力が加わると同符号のイオン同士が接近して、互いに反発しあうためである。

通常、固体では電気伝導性はない(超イオン伝導体は例外)が、融点を超えて液体となった場合や溶質としてなどに溶かすと電気を導く。これは、液体や水溶液になることで電荷を持ったイオンが移動できるようになるためである。水溶液中では電離して水和イオンとして存在する。このように水中で電離する物質を電解質という。

陽イオンを構成する元素と陰イオンを構成する元素の電気陰性度の差が小さい場合、結合は共有性を帯びるようになり、共有結晶的な性質をもつようになる。例えばヨウ化銀および硫化亜鉛などは共有結合性が強くなり、水に対する溶解度も小さい[1]

イオン結晶を構成する物質は組成式で表される。

構造

塩化ナトリウム型構造

1:1電解質の場合、陽イオンと陰イオンとのイオン半径の比率により周囲を取り囲む相手イオンの配位数が変化する。例えば立方晶系の場合、4配位の場合閃亜鉛鉱型構造、6配位では塩化ナトリウム型構造、8配位では塩化セシウム型構造となる[2]。さらに結晶の種類によっては六方晶系その他の構造を取るものもある。 1:2あるいは2:1電解質電解質では蛍石型構造、ヨウ化カドミウム型構造など様々な構造を取る。

イオン結晶の結合エネルギーの指標の一つとして、格子エネルギーがあり、これはイオンの電荷、イオン半径および結晶構造により決まり、結晶の融点、溶解度などに影響を与える。

陽イオンと陰イオンとの組み合わせにより数多くのイオン結晶が存在する。

1価の陽イオンと1価の陰イオンからなるイオン結晶

FClBrINO3
Li+ LiF(フッ化リチウムLiCl(塩化リチウムLiBr(臭化リチウムLiI(ヨウ化リチウムLiNO3硝酸リチウム
Na+ NaF(フッ化ナトリウムNaCl(塩化ナトリウムNaBr(臭化ナトリウムNaI(ヨウ化ナトリウムNaNO3硝酸ナトリウム
K+ KF(フッ化カリウムKCl(塩化カリウムKBr(臭化カリウムKI(ヨウ化カリウムKNO3硝酸カリウム
Rb+ RbF(フッ化ルビジウムRbCl(塩化ルビジウムRbBr(臭化ルビジウムRbI(ヨウ化ルビジウムRbNO3硝酸ルビジウム
Cs+ CsF(フッ化セシウムCsCl(塩化セシウムCsBr(臭化セシウムCsI(ヨウ化セシウムCsNO3硝酸セシウム
NH4+ NH4F(フッ化アンモニウムNH4Cl(塩化アンモニウムNH4Br(臭化アンモニウムNH4I(ヨウ化アンモニウムNH4NO3硝酸アンモニウム

1価の陽イオンと2価の陰イオンからなるイオン結晶

O2−SO42−CO32−
Li+ Li2O(酸化リチウムLi2SO4硫酸リチウムLi2CO3炭酸リチウム
Na+ Na2O(酸化ナトリウムNa2SO4硫酸ナトリウムNa2CO3炭酸ナトリウム
K+ K2O(酸化カリウムK2SO4硫酸カリウムK2CO3炭酸カリウム
Rb+ Rb2O(酸化ルビジウムRb2SO4硫酸ルビジウムRb2CO3炭酸ルビジウム
Cs+ Cs2O(酸化セシウムCs2SO4硫酸セシウムCs2CO3炭酸セシウム
NH4+ (NH4)2SO4硫酸アンモニウム(NH4)2CO3炭酸アンモニウム

2価の陽イオンと2価の陰イオンからなるイオン結晶

O2−S2−SO42−CO32−
Mg2+ MgO(酸化マグネシウムMgS(硫化マグネシウムMgSO4硫酸マグネシウムMgCO3炭酸マグネシウム
Ca2+ CaO(酸化カルシウムCaS(硫化カルシウムCaSO4硫酸カルシウムCaCO3炭酸カルシウム
Sr2+ SrO(酸化ストロンチウムSrS(硫化ストロンチウムSrSO4硫酸ストロンチウムSrCO3炭酸ストロンチウム
Ba2+ BaO(酸化バリウムBaS(硫化バリウムBaSO4硫酸バリウムBaCO3炭酸バリウム

2価の陽イオンと1価の陰イオンからなるイオン結晶

FClNO3
Mg2+ MgF2フッ化マグネシウムMgCl2塩化マグネシウムMg(NO3)2硝酸マグネシウム
Ca2+ CaF2フッ化カルシウムCaCl2塩化カルシウムCa(NO3)2硝酸カルシウム
Sr2+ SrF2フッ化ストロンチウムSrCl2塩化ストロンチウムSr(NO3)2硝酸ストロンチウム
Ba2+ BaF2フッ化バリウムBaCl2塩化バリウムBa(NO3)2硝酸バリウム

参考文献

  1. 新村陽一 『無機化学』 朝倉書店、1984年
  2. FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年

関連項目

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