アメリカオオアカイカ

アメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas)はアカイカ科に属する大型のイカである。英名 Humboldt squid は、生息域にペルー海流(フンボルト海流)が流れていることに由来する。レッドデビル・スクイッドなどとも。

アメリカオオアカイカ
Humboldt squid photographed
by ROV Tiburon.
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
: 開眼目 Oegopsida
: アカイカ科 Ommastrephidae
: アメリカオオアカイカ属 Dosidicus
Steenstrup, 1857
: アメリカオオアカイカ D. gigas
学名
Dosidicus gigas
(Orbigny, 1835)
シノニム


  • Ommastrephes gigas
    Orbigny, 1835
  • Ommastrephes giganteus
    Gray, 1849
  • Dosidicus eschrichti
    Steenstrup, 1857
  • Dosidicus steenstrupi
    Pfeffer, 1884
英名
Humboldt squid

分布

東部太平洋ティエラ・デル・フエゴからカリフォルニアの深度200-700mに生息する。

近年生息域が北方に移動しており、上位捕食者の減少・水温の上昇によるものだと考えられている[1]。1997-98年の大規模なエルニーニョでは初めてモントレー湾で観察され[2]、2002年の小規模なエルニーニョ中にも観察された。同じような傾向がワシントン州オレゴン州アラスカ州などでも見られる[2][3][2]。2004年には1,000-1,500個体がワシントン州ロングビーチ半島に漂着し[4]ピュージェット湾でも観察された[5]

米国科学アカデミー紀要によると、今世紀末の海洋酸性化によって本種の代謝は31%、活動性は45%低下し、より酸素濃度の高い浅い水域に移動してくることが予測された[6]

形態

サンタバーバラに打ち上げられた個体

外套長1.75m[7]、体重50kgにまで成長する[8]。腕には100-200の小吸盤が並ぶ。触腕には4列に大吸盤が並び、その角質環上には8-25個の歯がある。発光器もあるが小さくて少数である[9]色素胞は外套膜で300個/cm2、鰭上面で800個/cm2の密度に達する[10]

平均して、重量の40%は外套、14%が腕、12%が鰭、5%が頭部、3%が外皮、残り(26%)が内臓である。

生態

肉食性で、主に小魚・甲殻類頭足類カイアシ類を食べる。頭足類には珍しく獲物を群れで襲うことも知られるが、多くの研究者は個体間で協力して襲っているわけではないと考えている[11][12]

約1,200個体で群れを作り、漏斗と鰭を用いて最高24km/hで泳ぐことができる。

活発に動き回ると言われたこともあるが、現在では活発なのは摂食時だけだと考えられている。傷ついたり弱ったりした個体に対する共食いもよく見られ、これにより急速な成長が可能になっていると予想されている[13][14]。被食・捕食時以外は好奇心の強い生物であり、知的な振る舞いも見せると報告されている[12]

電子タグにより、日周鉛直移動を行うことが示された。これは鋭敏な視覚を活かして暗い場所で狩りを行うためで、昼間は深度200-700mにいるが夜間は100m以浅にまで浮上する。月に影響を受け、満月時には深い場所に留まることが多い。また、昼間の深度200-700mには酸素極小層が存在するため、低い酸素濃度に耐えられる機構を持っていると考えられる[15]。大型個体は2年生きるかもしれないが、基本的に寿命は1年と考えられている[8]

色素胞を用いて体色を濃赤紫から白まで急速に変えることができ、体全体の色を変えるのに0.15秒しかかからない。個体間のコミュニケーションに用いていると考えられる[16]。体全体の色を変えるほか、鰭や腕の一部だけ色を変えたり、腕に複雑なパターンを描いたりすることもできる[10]

人との関連

Image of D. gigas from the Bulletin of the United States Fish Commission

閃光などで刺激すると人を襲うこともあるが、基本的には無害である[17][18]

夜間に集魚灯を用いて商業的に漁獲される。1990年代からメキシコペルーチリが主要な漁場となっている。ヨーロッパ・アジアに輸出されるが、北米・南米での消費量も増えている。

釣り針にかかった魚やイカ(同種個体も含む)に襲いかかることが知られる[19]。釣り上げられると激しく色を変えて暴れるため、メキシコの漁業者からdiablos rojos(赤い悪魔)と呼ばれている[20]ダイオウイカ等他の大型種とは異なり、浮力を得るためにアンモニアを蓄積しないのも食用とされる理由と考えられる。

出典

  1. Posted July 31, 2007 (2007年7月31日). The new squids in town | Kate Wing's Blog | Switchboard”. National Resources Defense Council. 2011年10月25日閲覧。
  2. Zeidberg, L. & B.H. Robinson 2007. Invasive range expansion by the Humboldt squid, Dosidicus gigas, in the eastern North Pacific. PNAS 104(31): 12948–12950.
  3. Humboldt squid Found in Pebble Beach (2003)”. Sanctuary Integrated Monitoring Network. 2011年10月25日閲覧。
  4. Blumenthal, Les (2008年4月27日). Aggressive eating machines spotted on our coast (2008)”. The News Tribune. 2011年10月25日閲覧。
  5. “Giant squid caught in West Seattle”, KING-TV, (August 15, 2009), http://www.king5.com/news/local/59747597.html
  6. Rosa, Rui, and Brad A. Seibel. (2008) Synergistic effects of climate-related variables suggest future physiological impairment in a top oceanic predator. PNAS 105: 20776-0780
  7. Glaubrecht, M. & M.A. Salcedo-Vargas 2004. The Humboldt squid Dosidicus gigas (Orbigny, 1835): History of the Berlin specimen, with a reappraisal of other (bathy-)pelagic gigantic cephalopods (Mollusca, Ommastrephidae, Architeuthidae). Zoosystematics and Evolution 80(1): 53–69.
  8. Nigmatullin, C.M., K.N. Nesis & A.I. Arkhipkin 2001. A review of the biology of the jumbo squid Dosidicus gigas (Cephalopoda: Ommastrephidae). Fisheries Research 54(1): 9–19. doi:10.1016/S0165-7836(01)00371-X
  9. http://www.zen-ika.com/zukan/41-50/p42.html
  10. Behavior ecology of the Humboldt squid, Dosidicus gigas: insights from an animal-borne video and data logging system, (2011), http://aquaticcommons.org/id/eprint/5457
  11. Roger T Hanlon, John B Messinger, Cephalopod Behavior, p. 56, Cambridge University Press, 1996
  12. Zimmerman, Tim (2010年12月2日). It's Hard Out Here for a Shrimp”. Outside Online. 2011年10月25日閲覧。
  13. The Curious Case of the Cannibal squid, Michael Tennesen, National Wildlife Magazine, Dec/Jan 2005, vol. 43 no. 1.
  14. Squid Sensitivity Discover Magazine April, 2003
  15. Gilly, W.F., U. Markaida, C.H. Baxter, B.A. Block, A. Boustany, L. Zeidberg, K. Reisenbichler, B. Robison, G. Bazzino & C. Salinas 2006. Vertical and horizontal migrations by the jumbo squid Dosidicus gigas revealed by electronic tagging. (PDF) Marine Ecology Progress Series 324: 1–17.
  16. Humboldt Squid”. Squid-world.com. 2011年10月25日閲覧。
  17. Thomas, Pete (2007年3月26日). Warning lights of the sea”. Los Angeles Times. 2011年10月25日閲覧。
  18. Jumbo squid invade San Diego shores, spook divers, Associated Press, July 17, 2009
  19. Tennesen, Michael (2004年12月1日). The Curious Case of the Cannibal Squid”. National Wildlife Federation. 2011年10月25日閲覧。
  20. Floyd, Mark (2008年6月13日). Scientists See Squid Attack Squid”. LiveScience. 2011年10月25日閲覧。

外部リンク

  • "CephBase: アメリカオオアカイカ". 2005年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。
  • Sea Wolves' presentation on Humboldt squid's physiology and behavior
  • National Geographic: Humboldt squid
  • LA Times: Jumbo squid
  • KQED Humboldt squid broadcast
  • Aggressive Eating Machines, The NewsTribune.com, Tacoma, WA
  • Google Techtalk by Scott Cassell on Humboldt squid - YouTube
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